IMF 代表団、2012 年対日 4 条協議を終了
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プレスリリース No. 12/217 2012 年 6 月 12 日
IMF 代表団、2012 年対日 4 条協議を終了
国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局次長ジェラルド・シフ
(Jerald Schiff, Deputy Director, Asia and Pacific Department)率いる代表団は
年次対日 4 条協議のため 5 月 30 日から 6 月 12 日にかけて訪日した
代表団は、日本政府高官及び日本銀行幹部並びに民間部門の 代表と
最近の経済動向及び今後の政策課題について協議した
最終政策協議には
IMF 筆 頭副専務理事 デビッド・リプトン
(David Lipton, First Deputy Managing Director)も 参加。
協議終了にあたり、代表団は以下の声明を発表した。
日本経済は、東日本大震災の後めざましい回復力・適応力を示し
現在着実に回復してい る。今後、
景気回復は復興支出と力強い民間消費により持続するであろう。
弱い対外環境 は(特に欧州における)、外需を抑制するとともに
企業マインドを押し下げる可能性が高い。
更に、円の為替レートは安全資産への逃避による資金流入などを反映し
過去 1 年の間に切 り上がり、我々の分析は、
円の為替レートは中期的観点から幾分過大評価であることを示 唆している
以上を踏まえ、2012 年の実質 GDP 成長率は約 2%に達し
2013 年はわずか に減速して 13⁄4%
この間総合インフレ率は約ゼロにとどまると見込んでいる
欧州におけ る混乱は高まっており
また他の先進国及び主要新興市場国が減速の兆候を見せているこ とから
見通しに対するリスクは確実に悪化している。
長年の課題である高い公的債務、低成長及びデフレに対処するため
日本は政策のシナジ ー効果を得るべく、
多方面にわたり強力に対処する必要がある。
直近の優先課題は、根深 い財政問題に取り組むことである。
純公的債務(現在対 GDP 比で 125%)は、社会保障経 費の急速な増加を背景に
過去 20 年の間に対 GDP 比で 10 倍に上昇した。
したがって、税・ 社会保障一体改革の法案の成立が
財政再建へのコミットメントを示し
投資家の信頼を 維持するためにきわめて重要である。
しかしながら、公的債務を持続可能な水準に削減す るためには
更なる措置により、
今後 10 年で(構造的)財政収支を全体として対 GDP 比 で 10%改善することが
必要である。そのような措置を慎重に策定することが
成長への影響 を和らげることに資するであろう
同時に、潜在成長率を引き上げるのみならず
公的債務の対 GDP 比率の削減及びデフレか らの脱却にも
大胆かつ包括的な構造改革のパッケージが必要である
改革は、高齢化に 伴う労働力の減少、
低い女性の労働参加率、
国内部門にかかる規制、
リスク・マネーの供 給が限られていることなどの、
最も重要な成長制約要因に焦点をあてるべきである。
日本銀行による最近の金融緩和措置は、
景気回復を支えるとともにデフレ脱却に寄与して いる。
しかしながら、IMF スタッフの見通しによれば、
2014 年末までに 1%のインフレ目 標を達成する可能性を高めるために
資産買入プログラムの拡大を含め
更なる金融緩和 を実施しうると考えられる。
これにより、貸出金利を更に引き下げうるとともに
現在の 低金利環境における期待の重要性を踏まえると
インフレ期待を引き上げうる
市場との コミュニケーションの強化はこうした政策措置の効果を高める
ことに資するであろう。
現在作業が継続中の金融セクター評価プログラム
(FSAP: Financial Sector Assessment Program)のアップデートは、
世界金融市場における最近の緊迫した状況にもかかわらず、
2003 年の前回プログラム以降に実施された金融市場の安定強化のための
重要な措置などに より
、日本の金融システムは安定していると評価している。
欧州周縁国に対する日本の金 融機関の直接的なエクスポージャーは小さく
また、不良債権は依然として低い水準にあ る
しかしながら、金融の安定維持は、持続的な経済成長にとって重要である。
FSAP のス トレス・テストによれば、
当面銀行・保険会社ともに様々なマクロ経済上・金融上の負の ショックに
耐え得る力を有していることが示されている。
ただし、銀行のコア収益力は依 然として低い。
更に、銀行による多額の国債及び株式保有は、
金融の安定性についての懸 念を提起している。
金融システムの頑健性を強化するためには、
金融機関の健全性に係る 枠組みの一層の改善が望ましい。
それには、大口信用供与の残高上限の引下げ、
国内基準 行の所要自己資本の引上げ、
システム上重要な金融機関及び市場インフラに対する監視の 継続
銀行以外の金融機関の危機対応枠組みの改善が含まれる。
本年は、日本が IMF に加盟してから 60 年となる年であり、
これを記念して、
10 月に IMF・ 世銀年次総会が東京で 48 年ぶりに開催される。
日本人の不屈の精神、勤勉さ、暖かいもて なしをもって、
年次総会が大きな成功を収めることを祈念する。
International Monetary Fund Washington, D.C. 20431 USA