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狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

祈るように瞼閉じた時に世界はただ闇の底に消える。それでも鼓動はまた動きだす。限りある永遠を捜して。

2019年05月28日 23時43分29秒 | VSの日記




 本日5月28日は、リュディアに攻め込んだメディア王国が偶然起こった日蝕を不吉に感じて戦争をやめて戦場となったハリス川を国境に定めた日で、スペインの「無敵艦隊」がイングランド遠征のためリスボンを出発した日で、アンドリュー・ジャクソン米大統領がインディアン移住法に署名した日で、アムール川以北が清からロシアに割譲された日で、「血の1週間」の戦闘が終結してパリ・コミューンが瓦解してパリ統治が終了した日で、日本で電柱広告が許可された日で、中国の北伐軍に対抗して日本政府が居留民と権益の保護のために山東省へ出兵した日で、経営悪化の山一證券に対し政府が日本銀行法25条を発動して無制限・無期限の日銀特融を実施した日で、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世がイギリスを訪問してローマ・カトリック教会とイングランド国教会との正式な和解が450年ぶりに成立した日で、19歳の西ドイツ人マチアス・ルストが操縦するセスナ機がモスクワの赤の広場に強行着陸した日で、経済団体連合会と日本経営者団体連盟が統合されて日本経済団体連合会が発足した日で、農林水産大臣の松岡利勝が自殺した日で、ネパールで制憲議会が召集されて共和制への移行が宣言されシャー王朝の治世に終止符が打たれた日です。

 本日の倉敷は雨が降ったりやんだりしていましたよ。
 最高気温は二十度。最低気温は十八度でありました。
 明日も予報では倉敷は晴れとなっております。




 月も無き無窮の夜空。
 数多の星の煌めきて横たはる天の河が一際さんざめく。
 風凪ぎたれど海騒きぬ。
 見渡せば一つづゝざあと寄せ來くる小浪の、皆火のやふに煌めきぬ。
 黄泉の國の美しさも斯くあらむや。
 眞に夢の如し。
 小浪の浪間は漆黒なれど波の穗の金色を帶び漂ひぬ。
 その眩きに驚かされぬ。
 揺蕩げなる浪、尽く蝋燭の焔のやふに黄色の光を放つ。
 なかに深紅に、また青く、黄橙に、なかには翆玉色を放つあり。
 黄色に光れる浪のうねりの搖蕩ひは、大海原の波動の故にあらずして、何か数多の意思の働ゐてをる如く思はれり。
 意識を持ちて巨大にして漂ふてゐる。
 かの暗き冥界に棲む獸の、群れをなしひしめきて繰り返し身悶へせるに似たるかな。
 げに斯くも壯麗なる不知火の光華を作れるは生命なり。
 いと小さき生命なれど靈的な纎細さを持てり。
 限りなく群れなすといへど儚きなり。
 振りさけ見れば、かの水平綫の彼方まで流離ひゆく潮路の上で、この小さきものは弛み無く變化して今を生きむとかつ燃えかつ消えんとす。
 また、水平綫の上にては他の億萬の光が別の色を脈打ちて底知れぬ深淵に往き失うせぬ。


 奇しき樣を眺めつゝ彷徨う獣の狐は言葉なく瞑想す。
 夜と海の夥しき燦めきの中、窮極の靈の現はれしかと思へり。
 我が上にては、消滅せる過去の凄まじく融解しては輝くといふ秩序に於いて再び存在せむと欲する生命の靈氣とともに蘇がへりぬ。
 我が下にては、流星群が迸りまた星座や冷たき光の星雲となりて活氣づきぬ。
 やがて、狐は思ひ至りぬ。
 恆星と惑星の幾百萬年なる歳月も萬象の流轉にありて一匹の死にかけた夜光蟲の一瞬の閃光に優る意味を持たんや、と。
 この疑念疑ひの湧きてより狐が思ひの變はるなり。
 もはや炎の明滅せる古への海を望みておるにあらず。
 狐が觀しは、さながら海の廣さと深さそれに高さとが永遠の死の闇と一體となれるかの大災厄なり。
 言い換へるなら、寄るべき岸邊なく刻むべき時間もなき死と生の蒼海なり。
 なれば恆星の何百光年もの輝ける霞たる―― 天の河の架橋――も、無限の波動の中にありては燻ぶれる一個の波に過ぎず。

 されど、狐が胸底にかの囁きを又聞けり。
 我、もはや恆星の霞の如き波を見ずして生きてをる闇を觀るのみ。
 それ、無限に瞬きて流れ込み我が廻りを揺ら揺らと震へる如く行き去りぬ。
 燦めきといふ燦めきの沸々として心臟の如く鼓動せり。
 燐光のよふな色を打ち出してをり。
 やがて、これら輝けるもの皆、光の撚より絲の如く明滅し終はりなき神祕の中へ流れ出いでまし……。
 嗚呼。我も夜光蟲の一匹ひとつなり。
 無量の流れにありて儚く漂ふ燐光の一閃光なり。
 我が思惟の變はるにつれて、發する光の色合も變はるらし。
 時に深紅に、また青玉色に瞬けり。
 今は黄玉色さらには翆玉色に移らふ。
 この變化の何の故なるかを知らねども、人界の生命の思惟はおほかたは赤き色に光りたる。
 かたや、天界の存在は――靈的なる美かつ靈的至福のいづれも備へ――、その思惟は青色と紫色と趣き深く燃へたちて變化の妙を極めたり。

 なれど現世のいずくにも白き光の見えざることぞ不思議なりけり。
 すると、いずくともなく天の聲の聞こえきて語りき。

   白き光は高貴な存在の光なり。
   夫れ何十億もの光を融合して作られん。
   白き光の輝きに奉仕するが汝の役目。
   汝の燃へる色こそ汝の價値となるべし。
   汝の生きるは一瞬なれどその鼓動なる光は生き續けん。
   自らの思惟により輝きてゐるその刹那、汝、有り難くも宇宙を構成する者の一人とならむ。



 奇しき内なる聲を聞きつゝ狐は再び言葉なく瞑想す。
 月も無き無窮の夜空。
 数多の星の煌めきぬ。




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