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中学生の素直な感性が古代人物を蘇らせた ~ 歴人(歴史人物学習館)便り②(後編)

2024年01月31日 | 歴史
歴史教科書では単なる暗記用人名に過ぎない古代人物たちを、中学生たちは、悩み苦しみつつも自分たちに功績を残してくれた人々として思い描いた。

(「スーパーマンのような空海も、他人の指導が不得意だった」)
古代人物の一人として取り上げられた空海は、東書に次のように記述されています。

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9世紀の初め,遣唐使に従って唐にわたった最澄と空海は,仏教の新しい教えを日本に伝えました。天台宗を始めた最澄は、比叡山(滋賀県・京都府)に延暦寺を建て、真言宗を始めた空海は、高野山(和歌山県)に金剛峯寺を建てました。こうした新しい仏教は、山奥の寺で学問や厳しい修行を行うことを重んじ、貴族の間で広く信仰されるようになっていきました。
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教科書では、こう「客観的」に説明される空海も、中学生徒たちと向き合うと、たちまち生きた人間として、眼前に浮かび上がってきます。ある女生徒はスーパーマンのような空海は、実は弱点を持つ人間である事に、かえって親近感を覚えています。

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空海は、日本の仏教に深く貢献した以外にも、雨乞いや、庶民の学校を開いたりと、たくさんの文化活動に取り組んでいました。そんなスーパーマンのような空海も、他人の指導が不得意だったそうです。それを知り、どこか空想上の人物のように感じていた「空海」と言う人に親近感が湧き、完璧な人なんていないのだな、と思いました。

空海について調べて、空海の何にでもチャレンジするアグレッシブな生き方に魅力を感じました。空海を知る前、私は自分を否定しがちでチャレンジを諦めてしまうような一面がありました。しかし、これからは、私も空海のような他者比較だけに偏らずに、飛び込んで行ける精神を持ち、どんなことにもチャレンジしていきたいです。
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完璧なスーパーマンが偉業を成し遂げても、常人にはあまり参考にも励ましにもなりませんが、空海は「他人の指導が不得意だった」のに、その弱点を抱きながらも「何にでもチャレンジ」したのです。この生徒は自分の弱点にもめげずにチャレンジする姿勢自体に、共感を覚えたのです。

また、別の女生徒は、空海の人柄を、その言葉からこう思い浮かべています。

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「世界に無駄なものは何一つない」
これは、空海の言葉です。真面目で熱心でまっすぐな美しい気持ちが伝わってきます。・・・
すべてに命や心があることを忘れず、一人一人を尊重する空海の考え方は、たくさんの人の心を救い、現在の考え方にも通じていると思いました。私も空海の考え方を忘れずに人と接していきたいと思います。
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「世界に無駄なものは何一つない」という一言から、「一人一人を尊重する空海」の存在を思い浮かべる、というのも、深い想像力です。そう語るこの女生徒も「真面目で熱心でまっすぐな美しい気持ち」の持ち主なのでしょう。空海とこの女生徒の深い対話が窺(うかが)えます。

(先人の功績は「私たちの生活に欠かせないもの」)
先人を「悩みや苦しみ、弱点を持つ人間」として対話することで、生徒たちは人の生き方を学びますが、同時にその先人たちの残した業績に、千年以上も後の自分たちが多くを負っていることに気がつきます。空海については、ある女生徒はこう書いています。

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空海と言えば、遣唐使として唐に渡り、帰国後、真言宗を開いた僧侶のイメージが強いが、仏教の普及に努めただけではなかった。
日本で初めて庶民のための学びの場「綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)」を作り、これが現在の学校教育の元となっていると言う。

また、干ばつに見舞われて困っていた民衆のために池の改修工事を提案したと言う。この堤防は現在も使用されているのは驚きだ(香川県にある日本最大級のため池 満濃池の改修工事)。
このように空海の残した様々な功績は、現在の私たちの生活に欠かせないものの原点になっていることが分かった。
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また聖徳太子の事跡について、ある女生徒は以下のように書いています。
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あまり船を作る技術が高くない時代に、何度も隋に人を送った聖徳太子は、大陸の進んだ技術や文化を学ぶことをとても重視しており、そのどんなものでも良いところだけを学び取ろうという考え方は、今日今の日本人の感覚に大きな影響を与えた考え方なのではないかと思いました。
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「どんなものでも良いところだけを学び取ろう」という態度は、明治日本でも発揮されて、急速な近代化の原動力となりました。近代化に立ち後れた中国との差は、まさにこの「深い学び」を求める態度にありました。この態度のお手本を最初に示されたのが、聖徳太子でした。わが国の学び上手は、まさしく太子の遺産なのです。

この女生徒は、感想文を次のように結んでいます。

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私は歴史を学ぶことにどんな意味があるのかわかっていませんでしたが、聖徳太子を調べてみて、歴史上の人物が起こした行動や考え方は、全て今の日本につながっており、歴史はとても興味深く、面白いものだと実感することができました。また、日本は長い歴史を持っているので、この歴史を未来の日本にも残していきたいなと思いました。
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これこそが学習指導要領の目指す「主体的・対話的で深い学び」を達成した歴史学習の姿だと考えます。こういう学びをする生徒たちが、やがて明日の日本を支えてくれることでしょう。

現在、賛助会員は100名を越え、本年は3千名の生徒に「主体的・対話的で深い学び」をしてもらう計画です。あなたに歴史人物学習館の賛助会員になっていただくと、その賛助会費3千円で、もう30人の生徒に、こういう深い学びに誘うことができます。明日の日本をより良くするために、あなたのご支援をぜひお願い申し上げます。
賛助会員申込み => https://x.gd/rekijin
(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)

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2 コメント

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こんにちは! (小平次)
2024-01-31 11:00:20
>>聖徳太子を調べてみて、歴史上の人物が起こした行動や考え方は、全て今の日本につながっており。。

こんな風に感じ取れる中学生がいるのであれば、まだまだ日本にも希望がありますね!
こんにちは (このゆびとまれ!です)
2024-02-03 10:28:20
小平次さんへ

コメントの返信で文章が重なってしまい、申し訳ありませんでした。
ブログ開設者でも投稿したコメントの再編集はできないとのことですので、
コメントを訂正し、再投稿させていただきます。あしからず。
―――
小平次さんへ

コメントを度々いただき、有難うございます。
最近、私は「いきものがかり 『YELL』Music Video 」を聴いていましたが、そこに出てくる高校生がチョークボードに自分の信条を書いていました。そのいずれもが素晴らしい内容で強く心に響きました。彼らが居れば、日本の将来は確かに明るいと心から感じました。
(チョークボードに書かれている言葉)
・相手のことを考えて行動する優しい自分になりたい。
・誰かのためにガンバれる人になりたいです。
・自分を大切にする
・自分らしく一歩一歩歩んでいきたい
・友達に頼られる自分になる!
・辛くてもいつも笑顔で元気!
・過去をふりかえらない自分になりたい
・すべてのことに全力で挑む自分になりたい
・1秒1秒を大切にする
・何事もあきらめない
・もっとパワフルになりたい!!
・人に優しく自分に厳しく
・理想を捨てず、努力をしつづける自分でありたい!!
・常に壁を越えたい

(ご参考までに)
いきものがかり 『YELL』Music Video 
https://www.youtube.com/watch?v=lz8frtP6_kk
2020年3月26日

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