このゆびと~まれ!

「日々の暮らしの中から感動や発見を伝えたい」

役者が代われば状況も変わる

2019年07月15日 | 政治・経済
日下公人著書「新しい日本人が日本と世界を変える」より“そして「新しい日本」の時代が始まる(後編)”を転載します。

―――――
これまでさまざまな日本の課題について論じてきた。日本に問題があるとすれば、それは「力」のないことではなく、「力」のあることを自覚できていないことである。そして、その力の源泉が日本の長い歴史と庶民の「暗黙知(長年の経験や勘に基づく知識)」にあることを確認する必要がある。

現実の世の中は常に動いている。うろたえず、恐れず、いかに対応していくか、庶民の日常は、その連続である。

それは国際政治の舞台においても同じで、役者は入れ替わり、舞台はめぐる。いま日本のリーダーとして舞台に立っている安倍晋三首相もいずれは代わるし、すでに代わった国も少なくない。インドにおける安倍首相のカウンターパートはシン首相ではなく、モディ首相になった。フィリピンの大統領もアキノ氏からドゥテルテ氏に代わった。ミャンマーも長い軍政時代を経て、いまはアウンサンスーチー国家顧問兼外相が実質的に政権を掌握(しょうあく)している。

役者は代わる。そして役者が代われば状況も変わる。いま東南アジアの指導者は日本と中国を訪れ、経済問題を中心に、どちらがリーダーとして頼り甲斐(がい)があるのか両国を天秤(てんびん)にかけている。

ドゥテルテ大統領とアウンサンスーチー国家顧問が平成28年10月末から11月初めにかけて来日した。スーチー氏は安倍首相との会談で、「真の友人である日本の支援にお礼申し上げる」と微笑(ほほえ)んだが、対中国を念頭に自由・民主といった「価値観の共有」を訴える日本から、今後5年間で官民合わせて8000億円規模の援助を引き出した。

スーチー氏は8月に訪中し、人権問題の批判を控えるかたちで中国からも援助を取りつけている。実利に徹した姿勢で、「敵対的な国をつくりたくない」というスーチー氏の本音は日本側もわかっている。

一方、ドゥテルテ大統領は、安倍首相との会談で中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題について、「国際法に基づき平和裏に問題を解決したい。われわれは常に日本側に立つ」と述べた。日本側は、フィリピン海軍の警戒監視能力の向上に向けた海上自衛隊の練習機5機の有償貸与のほか、ODAとして約213億円の円借款供与(えんしゃっかんきょうよ)を約束した。

ドゥテルテ氏はフィリピンに帰国後、「日本はこれまでも今後も、フィリピンの真の友人だ」と上機嫌だったが、したたかなのは、訪日に先立つ中国訪問で、南シナ海における中国の主権主張を認めなかった仲裁裁判所の裁定にはほとんど触れずに、中国側から総額で約1兆5千億円に上る経済協力を取りつけたとされることである。

習近平が周囲にちらつかせる支援は巨額で、日本を凌駕(りょうが)しているように見える。だが、「スーチー氏もドゥテルテ氏も、それに釣られていった」と感情的に見る必要はない。

「親中」というよりも、どの国も自国第一であって、彼らの国益追及は当然として日本は構える必要がある。そして、日本にとって国益となる国際秩序の順守に応じる国から順に手を差し伸べていけばよい。

---owari---
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 経済問題によるストレス(後編) | トップ | 優位戦の発想をもって日本が... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治・経済」カテゴリの最新記事