有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

天野正子先生が逝去されました

2015-05-08 11:36:21 | 出版
天野正子先生(社会学・ジェンダー学、東京家政学院大学学長・お茶の水女子大学名誉教授)が亡くなられました。
天野先生とは、吉川弘文館勤務時代に『近代社会を生きる』『戦後経験を生きる』という2巻本の編者を、安田常雄先生・大門正克先生と共にお願いしたときに知り合い、有志舎を起ち上げてからも『現代「生活者」論』という単著を出版させていただくなど、お世話になりっぱなしでした。
とても凜としていてカッコイイ方でした。そして、ときどき有志舎に電話をくれては、「学術出版を一人でやっていくのって大変なんでしょ。でも、良い本を出していて、よく頑張っているわね」と励ましてくださいました。
実は先月、ご自宅に呼んでいただき、ご自身最後の仕事として、ここ数年で書いた論文などをまとめて本を出版したいという構想と決意を聞いたばかりでした。そのときには、病いがだいぶ重くなっていてつらそうでしたが、最後まで凜とした姿は健在でした。
本当に、天野先生にはたくさんの事を教えていただきました。とくに「生活者」という視点で政治・社会を考えることの大切さです。「生活者」とは政治家が言うような都合のいい消費者の言い換えではなく、もっと能動的でオルタナティヴなもの、すなわち、ご著書『現代「生活者」論』のオビに入れた言葉でもある、「他人(ひと)まかせにしない、できることは自分で。でも、一人で出来ないことは他者(ひと)と支え合って」という新しい公共性を求めていく生き方だという事。この言葉の射程は「3・11」後の日本社会を貫き、今、まさに重要になってきているのではないでしょうか。
ですから、その生涯の最後に信頼して声を掛けていただいた出版社・編集者として、天野先生の本は必ず実現する決意です。
ご冥福をお祈り申し上げます。

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