有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

『客分と国民のあいだ』、書名の思い出

2017-03-26 08:22:25 | 出版
前回のブログの続きとして、かつて私が吉川弘文館勤務時代に編集させていただいた、牧原憲夫さん著『客分と国民のあいだ-近代民衆の政治意識-』の書名についての思い出話を書いておこうと思います。
このメインタイトルは牧原さん自身が提案されたものをそのまま採用させてもらいました。
牧原さんはその意味を特に説明されなかったと思いますが(「読めばわかるでしょ」という感じだった記憶があります)、このなかの「あいだ」は近世から近代への時間的な推移にともなう変化であり、また客分と国民という意識の間の違い・断絶を示しているということでしょう。
ただ、これだけでは書店で本を手にとった一般読者は内容を推測できない、と私は思いました。そもそも「客分」って何だ? ヤクザの助っ人のこと? 「あいだ」って何? と「?」マークが浮かぶだけとなりかねない。だから、サブタイトルで補足しましょうということで「近代民衆の政治意識」を加えました。
牧原さんは「政事意識」としたいとおっしゃいましたが、「政事」がまた一般読者には分からないので、何とかお願いして今のサブタイトルになりました。
牧原さんも、本当に渋々という感じで了解してくれました。
ただ、いま出版するのであれば「政事意識」もアリかもしれませんが。
つまり、当時は「客分」も「政事」も、一部の専門家を除き、殆どの人にとっては、本の中味を読まないと何のことか分からなかったと思うのです(私も原稿を読んでいなかったら分からなかった)。
一方、オビのキャッチコピー「あなたは、いつ「国民」になったのか?」は牧原案で、私も大賛成でした。
なぜなら、このコピーを見た上司が「いつ国民になったって? そんなの生まれながらに決まってるだろ」と言ったからです。その意識をこの本で粉砕できる、してやったりだと思いました。
だから、これを強く推して会社としての決定にしてもらいました。
ということで、この本は出版されました。
まあ、たいした話ではないですが、こういうことを編集者が語り残しておくのも、後世のために多少は意味があるかと思ったので、書いてみました。




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