有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

歴博フォーラム「戦後社会運動のなかの「1968年」」、最高でした!

2017-10-21 18:38:28 | 学問
千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館(歴博)で行われた、歴博フォーラム「戦後社会運動のなかの「1968年」」に行ってきました。
お世辞ではなく、近来まれにみる感動的かつ勉強になったシンポジウムでした。
最近の学会・研究会における「研究発表」「報告」なるものは、史料を大量に引用して長々とやった結果(そもそも1人の発表時間が長すぎる。20~30分で十分だと思う)、内容は退屈なものばかりという事が多いのですが、このフォーラムの発表は違いました。

「1968」というものが持った経験と意味はとても多様でかつ「今、ここ」で学び直さないといけないような重要な問いやシグナルをたくさん発していたことを改めて知りました(会場に着いたのが昼12時すぎだったので午後の部からしか聞けませんでしたが)。

・闘争のなかに人間一人一人の「いのち」の問題を突き詰めた水俣病訴訟
・三里塚闘争のなかから日本の農業の在り方や「農」の精神を見いだし、より土と人間に寄り添った有機農業の在り方を見いだした人々
・「開発」とは何か、「住民」とは誰か、「市民」のなかに日雇い労働者や自治体職員は入っているのか、生活の中から立てる意義申し立てとは、を問うことになった横浜新貨物線反対運動
・反戦・平和運動のなかから、自分たちのもつ被差別の人々や在日朝鮮人へ偏見・差別を発見し、それを克服しようという地平を見いだした神戸ベ平連。そしてその中から生まれた新しい文化運動(彼らが刊行した『月刊プレイガイド』は『ぴあ』に先立つ日本発の情報誌で映画・演劇・ストリップ劇場といった催事を平等に伝え、それまでの文化権威に叛旗を翻した。なお、これは80年代文化にも受け継がれたと思う)

これを知ってしまうと、小熊英二氏が『1968』で描いた「この時代の社会運動は「現代的不幸」に直面した若者たちの自己実現であった」みたいな議論がいかに一面的で表層しか見ていないものであるか、と感じてしまいます。
そんな単純なものではなかったのです。
「1968」=全共闘・新左翼・学生運動とだけしか捉えていないからそうなってしまったのでしょうが、より広く社会を見渡さないと、日本における「1968」の意味は見いだせないという事。

最後に、神戸ベ平連の報告(黒川伊織さん)で、去年の反戦争法案のデモの時に、40年ぶりに神戸の空に翻った「ベ平連」の旗(イエローサテン地に「ベ平連」の文字がアップリケで縫い付けてある、当時の女子高生が手縫いで作った旗。現物が歴博に展示してある)の写真を見たときには、不覚にも涙が出そうになるほど感動しました。
こういった多くの問いと問題提起を私もきちんと受け継いで考え、出版や地域での活動で自分なりの答えを提示していかないといけない。
頑張らないと!
勇気を与えてくれた、素晴らしいフォーラムでした。

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