有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

本と学問をもっと広めるためには・・・

2017-10-16 12:52:18 | 出版
西野亮廣氏が面白いことを書いていました。
「(本が売れる・売れないはスマホやテレビなどとの)時間面積の陣取り合戦ですから、当然、恋人からのLINEも、自分の作品のライバルです。
空き時間に"とりあえずLINEを開かれている間"に、
家に帰ったら"とりあえずテレビをつけられている間"に、
自分の作品が検索される時間がどんどん削られていくわけですから。
この戦いに挑むには、(自分の書籍を売ろうと考えている)僕の場合は、本屋さんに足を運んでもらったり、図書館に足を運んでもらったり、Amazonを開いてもらったり…まずは『本』というジャンルにコミットしてもらう時間を増やす必要があります。」
「「本って、おもしれー」と思ってもらい、読者人口(分母)を増やすのが一番です。」

全くもってその通りだと思う。
そのためには「個人の努力」と言いたいらしい(したがって売れないのは「自己責任」)。
私も、図書館で文庫を貸し出しているから文庫が売れなくなったというのは違うと思うし、先に書いたように図書館はもっと学術書を買って欲しいと思う。
が、そのために西野氏のように自費でバラ撒いていては商売にならないし、サクラでリクエストを増やすのもまともじゃない。
ではどうするか。

私は学問の本を買ってもらうためには、地域で地道に学問の面白さを広めていくしかないと思っています。
1点1点でマーケット・シェアを取りに行くのは、作者個人にとっては効率的かつ重要なことかもしれないが、出版社にとっては非効率で費用対効果が低い。
結果的には、1社1社個別の企業努力や競争・つぶし合いではなく、協同の努力で本や学問の需要全体を拡大し、スマホやテレビに時間面積で勝つのが一番効率的で費用対効果も高いと思う。
そういう事もあって、私が歴史学を扱っているいくつかの出版社の編集者に声を掛け始めているのは、地域での共同販売(「歴史書フェス」)みたいなもの。
今は、地域で様々なブックフェスが行われているし、そういうものを歴史関連書の出版社で協同してやりたい。
前にも書いた事がありますが、そこでは単に本を売るだけでなく、学問の面白さを分かりやすく伝えられるような「歴史フェス」的な意味合いも持たせたい。
ワークショップやブックトーク、若手の先端的な研究発表、フードコートの設置、新刊書店だけでなく古書店にも来てもらって資料関連も買えるようにしてはどうでしょうか。
そして、「ひこにゃん」とかゆるキャラにも来てもらって、子ども向けのイベントも。
研究者の皆さん、ご協力いただけるとありがたいです。

こういったフェス的なものと同時に、大学や研究者と連携しての、地域での市民による自主的な勉強会・読書会をどんどん広げていくことが大事だと思っています。
かつて全国で盛んだったサークル活動を再起動・再活性化していくわけです。
時間はかかると思うが、こういう正攻法でいくのが一番根付くと思うのです。

同じように、「本が育てる街・高円寺」がやっている、「まちのほんだな」・交換市・読書会もすべて、本を身近に感じる機会を拡大する活動です。
個人ではなく、協同での行動こそが未来を切り拓く。
そう私は信じています。

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