有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

イ・ドンキさんの論文「国民的国家連合は不可能か-朝鮮半島からみた1989・90年のドイツ-」について

2017-07-07 12:17:03 | 学問
イ・ドンキさん(ドイツ現代史、江陵原州大学校)の論文「国民的国家連合は不可能か-朝鮮半島からみた1989・90年のドイツ-」(『思想』2017年7月号、浅田進史さん訳)を読みました。
同論文は、ドイツ統一にあたって現状のような西ドイツによる東ドイツの実質的吸収による統一というレールが最初から敷かれていたわけではなかったこと、一国家二制度的な国家連合という選択肢もあったということ、しかしそれがなぜそれが挫折したのかを論じています。
面白いのは、国家連合構想のなかには、全ヨーロッパ的な安全保障体制によって新ドイツ連合国家が維持されるという構想もあったということ。つまり、新ドイツ誕生を契機にヨーロッパ統合のさらなる前進と現存の軍事同盟関係の解消構想もあったということです。
残念ながらドイツではうまくいきませんでしたが、この構想はこれからの東アジアが挑戦すべき重要なプランなのではないでしょうか。
もちろん、実現させるのはとてつもなく困難でしょう。しかし、どうすれば民主的かつ平和的な朝鮮半島統一と冷戦終結が実現できるのか、は東アジアに生きるすべての人にとっての喫緊の課題だと私は思います(もちろん、今みたいな敵対政策ばかりの日本政府では何も期待できないどころか、その障害でしかありませんが)。
イ・ドンキ論文、とても良い論文です。おすすめです。
今回の『思想』最新号は大収穫ですね。