有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

『ベ平連とその時代』が「毎日新聞」で取り上げられました

2020-08-21 10:06:35 | 出版
平井一臣さん著『べ平連とその時代』が、『毎日新聞』(8月20日)の「論の周辺」欄で取り上げられました。

『ベ平連とその時代』を刊行して

2020-07-15 14:44:50 | 出版
平井一臣さん著『ベ平連とその時代―身ぶりとしての政治―』が配本となり、わりと感慨にふけっております。
ベトナム戦争とそれへの反戦運動については、高校生の時から興味をもってきてはいるのですが、それだけでなく、大学生の時に故・吉澤南さん(ベトナム・中国現代史)の本を読み、吉川弘文館の編集者として吉澤さんに『ベトナム戦争―民衆にとっての戦場―』を書いていただきながら、その続編たる『ベトナム戦争 2』を遂に書いていただくことができずに吉澤さんが亡くなってしまったことを改めて思い出します。
でもその吉澤さんが「大事だ」と話していたベトナム反戦運動、中でも日本のベ平連について、平井さんというすばらしい研究者にまとめていただけたことはとても嬉しい。私が書いて欲しいと思った事と、平井さんが書きたいと思ったことがピッタリ合ったという感じ。なかなか、こういう事はありません。

吉澤さんがこの本を読んだら、どう話されるだろう、などと想像してしまう。
「これでやっとベ平連について議論が出来るね。さあ、思い切りやろう。まず永滝君の意見から聞こうか。どうだい」
そんなふうに言うんじゃないかな。ちょっとキザな言い方で(笑)。


『些末時研究』について

2020-06-29 14:55:24 | 出版
『些末時研究』という小さな雑誌があります。その最新号(第5号)を購入しました。700円なり。
特集は「荻原魚雷 方法としてのアナキズム」です。
福田賢治さんという方が編集発行人をされている雑誌です。
福田さんとも魚雷さんとも、高円寺のコクテイル書房でお会いしています(福田さんとは暫くお会いしていないが)。
「思想の科学研究会」会員でもある福田さんは竹内好を研究されているとうかがって色々と話し込んだことがあります。魚雷さんとは以前、彼があちこち歩いている「旧街道」についての話で盛り上がりました。その魚雷さんも「思想の科学研究会」に関わっていたとは、この雑誌で初めて知りました。
私も一応、「思想の科学研究会」会員の末席にいるもので、不思議な縁を感じます。

それで、魚雷さんがやっている「文壇高円寺」というwebサイトを思い出し、久しぶりに読んだら(すいません。しばらく読んでいませんでした)興味深いことが書かれていました。
2020年5月6日の記事です。
「ヘミングウェイは『ハックルベリイ・フィンの冒険』がアメリカ文学の原点といった。そこからアメリカ文化は「子ども」性を大切にするという話になる。
《自分たちはヨーロッパとは違った国を作りたい、ヨーロッパとは違った文化をフロンティアに新しく作っていきたい。そこから「子ども」性の重視という無意識の伝統が形成されていったのだろう》
この話を読んでふとおもったのがマッカーサーの「日本人十二歳説」だ。
すこし前に占領期に関する本をいろいろ読んでいたとき、マッカーサーの「日本人は十二歳」という言葉に多くの国民が失望したと半藤一利のエッセイにあった。わたしもそうだとおもっていた。しかし「子ども」性を重視するアメリカ人の言葉と考えると「十二歳」には可能性を秘めた無垢な国という意味も含まれていそうだ。」

だとすると、私たちは、その小さな民主主義の芽を果たしてきれいな花に育てることができたのだろうか? 
私には、どうもうまくいかなかった気がします。
もう一回、12歳からやり直さないといけないのかもしれません。

話が全然違う方に行ってしまいましたが、この『些末時研究』は以下で買えます。
おすすめです。
些末時研究のサイト

自宅前に「まちのほんだな」(本の交換棚)を設置しました

2020-06-21 13:18:57 | 本と雑誌
本日から、私の自宅前に「まちのほんだな」(交換棚)を置きました。
有志舎の前ではないので、お間違えなく。
コクテイル書房前の「まちのほんだな」が本部とすると、「高円寺北2丁目支部」と名乗ることにしました(リーダーの狩野さんの了解済み)。
ご自宅から本を1冊持ってきていただくと、この本棚の本1冊と交換できます(1回にお一人3冊まで)。
一般の自宅前なので、本棚は小さいですが、コクテイルの斉藤さんが丁寧に作ってくれた本棚なので、大事に使わせていただきます。なお、アルコール消毒液も置いてあります。

実際に棚の世話をするのは私の老父(86歳)です。脳梗塞の後遺症で脚が不自由ですが、リハビリもかねて朝には本棚の蓋を開け、夕方には閉めてという作業と本の入れ替え・整理をします。アタマはしっかりしてますが、動きは遅いので温かい目で見守ってやってください(苦笑)。

近くに保育園があるので、2段のうち1段は絵本など子供向けの本にしてみました。保育園の行き帰りに親子で寄ってもらえると嬉しい。ただ、現状ではちょっと文庫・新書が少ないので、あとで補充します。
高円寺の皆さま、ぜひご利用ください。
こうして読書の文化が少しずつ市井で広がっていけばいいな、と思っています。
なお、雨の日・荒天の日はお休みです。


大門正克さんの「コロナ禍を身近な歴史からとらえ返す ――オンライン授業「学童集団疎開の経験」を通して」を読んで

2020-06-11 14:20:01 | 出版
大門正克さん(早稲田大学)の「コロナ禍を身近な歴史からとらえ返す ――オンライン授業「学童集団疎開の経験」を通して」(大月書店note連載「社会的距離〈Social Distance〉を超えて」)を読みました。
とても面白かったし、考えるべき事が多くありました。

社会的緊張の下で生きるという事においては、「戦時期の経験」と「コロナ下の経験」に類似性があるというのはとても重要だと思います(単に「ウィルスとの闘いだ!」と叫ぶのとは真逆の意味で)。
そして、学生さんたちが「コロナ下」の現状から歴史をとらえ返し、さらにまた現在と未来を考えることができたという事も素晴らしい。
「歴史を学ぶ」「歴史から学ぶ」とはこういう事なのだと思います。

そして、歴史書出版・編集者として、学生さんの意見の中で一番興味深かったのは以下。
「日本史をほぼ学ばなかったので「苦手意識」があったが、それは「大きな歴史」に対してのものかもしれず、一貫して吉原幸子のような「小さな歴史」から歴史を考えるのは「初めての経験」だった。個人の経験の視点からは 「過去と現在の往還が可能」になり、この往還からは「大きな歴史の位置づけが変わりうる」ことや、「歴史的現在」が「鮮明に見え、今を生きるための指針ともなる」」。
こういう歴史書・学術書が必要なのだと思います。

そして、こういう良質の企画を進めている編集者の角田三佳さん、さすがです。