como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

龍馬伝 感想再録 第42話

2010-12-22 23:01:19 | 過去作倉庫07~10
 今週も良かったです龍馬伝。こんなに良い出来が続くのもめずらしい…というか、あまり良いとツッコミどころが無く、書くことがないわ(笑)。
 今週は、約35分間まったく緊張感がとぎれず、引き締まっていたと思います。やっぱり、ああいうリーガルサスペンス調とか、マネーがらみの話っていうのは、大友D組のお得意分野なんでしょうね。さらに、昨今世間を騒がせている某国との海難事故問題(*)もあり、非常に時宜を得てまして、過去から現代へのリアルな苦言みたいに見えるところも迫力ありましたわ。こーいうのは偶然の産物なんだろうけど、計ったようなタイムリーな効果が偶然生まれるっていうのも、ちょっとすっ飛んだ言い方だけど、ドラマの勢いになんかが味方するってこと、あると思う。
 で、福山龍馬さんも、今週はほんとに良かったと思います。35分間、緩むところはまったくなく、表情や一挙手一投足に惚れ惚れしました。もう疑問なく龍馬らしいオーラが堂々と漂って、素晴らしかった。…ってこんなに褒めちぎっていいのか、自分。歯が浮くんじゃないか? 誰に気を使ってるんだ(爆)。いいえ、ウソじゃないですお代官様。ほんとに良かったんです。35分間は。
 ええ…。そうです、最後の5分強の余白というか、蛇足があるんですけど、それについては後述します。まあ、そのくらいのツッコミどころというか、脱力感もないと、なんか別のドラマになっちゃったの?と落ち着かない気持ちになりますからね。
 
 第42話「いろは丸事件」

 先週、亡くなった高杉さんの遺志を胸に出航した龍馬といろは丸。慶応3年4月23日午後11時ごろ、讃岐の三崎半島沖で衝突事故を起こします。相手は紀州半の藩船・明光丸。
♪♪ゆーあーひぁいんまいはあぁとえんまいはぁーうぃる~ごーおーんあーーーーーんどおーーーーーーん~~♪
…とセリーヌ・ディオンの歌が空耳で聞こえてくる中、いろは丸は海中にドボン。しかしそこにディカプリオは居ない。しかもやたらハデだがここまでがアバンタイトルだし。
 んで、OPをはさんで事故から一夜明けた鞆の浦。いろは丸の乗員・乗客の避難所に、明光丸に載っていた紀州藩のエライ人がやってきます。エライ人たちは上から目線で、このたびは残念でした、これはほんの気持ちですっつって、千両箱のお金を置いていくわけですね。
 千両って、ザッと5千万円とかそのくらい? まあかなりの大金じゃあるんですが、それでも「そんなはした金で済まそうっつーんかいボケ!」とイカッたバカ社…いや海援隊は、紀州のエライ人を取り囲んでドーカツします。
 それは慰謝料としてもらっときますけんど、事故の補償はまた別の話ですき!と脅す龍馬に、ワシらは忙しいんや!といって逃げようとするエライ人。あっ事故現場から逃げたらダメだよ。先に一方的に示談金払うのも負けよ。
 っと今ならこの時点で紀州の負けはあきらかなのですが、昔の話で、そうはいかないんですね。とういうわけで、第二ラウンドは長崎へ。

 弥太郎は、長崎で大洲藩のエライ人@岡本信人と飲んでまして、紀州にヘッドハンティングされそーになったりしてます。すごい大物になっちゃって、この大物っぷりが大笑い。
 そこに、大洲藩から借りているいろは丸の沈没の報せが届くんですね。このときの岡本信人のリアクションが、いい味出しすぎ~!さすが大河ドラマ最多出演俳優。これからもご健勝で、さらに大河ドラマに出て欲しいです。唯一無二のチョイ役として。
 自分の出世をかけたいろは丸の貸借契約がパアになり、さらに船の弁償もしなきゃならないしで、おさき真っ暗になってキレまくる弥太郎。ですが龍馬は落ち着いてて、これは紀州藩が一方的に悪い、10:0の事故だから、紀州から賠償金を満額ふんだくって見せますと見得を切るんですね。
 といっても昔のことで、10:0とか、どっちが悪いという概念自体がありません。強いほうが勝つんです。紀州は徳川御三家なので、格下の外様藩は、下から上にものが言えないわけです。そういうヒエラルキーがあたりまえだと思っていた弥太郎とか象二郎ちゃんは、こういうことは対等の立場で話をつけるという龍馬に、衝撃をうけるわけです。
 このあたりの感じが、なかなか良く出来ていて面白かったですね。幕末あたりまで、すべて封建制のヒエラルキーが基準で、それを壊すというのがいかに革新的なことであったか、ってことです。また、徳川時代の不文律的な社会ルールを、世界に通用するルールで突破するというのがすでに、徳川時代の崩壊を象徴していたんでしょうね。

 といっても、徳川260年の不文律はそー簡単に破れるものではないので、象二郎ちゃんは、紀州から満額賠償金を取れなかったら腹を切れ!と龍馬に命じるわけです。はい、とシッカリ受ける龍馬。
 こういうところ、いいよね~。龍馬はもちろん、象二郎ちゃんも、まず自分が腹切る覚悟だったんだろうしね。こういう、自分の命をイザというとき潔く投げ出す、それがあたり前って感覚が、サムライってもんだと思うの。
 ですけど弥太郎は武士であって武士ではないので、いろは丸裁判に同席を命じられると、「わしもですか!!」と動揺するわけです。わしも負けたら腹切れってことですか!!
…と、動揺した弥太郎は、恐怖に駆られて、超人的な働きをするんですね。いろは丸の積荷や、予測分された利益まで計算して、賠償額を算出し、その額面なんと8万3千両を紀州藩に叩きつけるんですけども、この不敵大胆な態度がすべて、切腹の恐怖に駆られてってとこが面白いの。武士の美意識じゃないとこから出た捨て身の行動が、局面を動かすってとこが面白い。
 さらに、長崎の町では、幕府の七光りで事故をもみ消した紀州を笑いものにした歌がはやります。一般世論で、紀州は思いっきりワルモノになります。庶民パワーがこれだけ影響力を持つようになってきたというのも、大きな変化だったりして。
 そういう多面的な価値観をうまく掛け合わせると、幕末ドラマは面白くなるんですよね。ホントにもう、いままで、相当重要なシーンでも龍馬さん万歳劇場のワンパターンで、つまんなく処理してきたのは、いったい何だったんでしょーか。

 そして、ここで登場しますのが、お待たせしました、よつば銀行の飯島さん(@ハゲタカ)…じゃなく、毛利輝元…でもなく(笑)、紀州藩勘定奉行の茂田一次郎。トレードマークの巻物もちゃんとしてます。
 いやあ、中尾彬は、龍馬伝にどーしても出たくてねじ込んだって話で、ホントかどうか知らないけど、ホントだったら、一刻も早く毛利輝元を上書きしたかったんでしょーね。その気持ちは痛いほど切実。でもまあ、紀州藩勘定奉行で上書きしたというよりも、よつば銀行頭取@ハゲタカが幕末に降り立った、って感じでしたけどね。実はこの茂田って名前わすれちゃって、あとで調べたのよ。今週のドラマ中、わたしの中で彼は「飯島さん」でした。
 飯島さんは、土佐の脱藩浪人の結社ごときが紀州藩に賠償を迫っている、という下克上が我慢ならず、みずから出張っていくことにします。
 この飯島さん登場の場面のBGMがまたカッコいいんだわ。毎度毎度、フラメンコギターにばっか反応してて悪いんだけど~(今回は「ファルーカ」だよ)、毎回ピッタリとはまっていて、ほんとに痺れる。これだけで5割り増しくらいの印象。

 これから蒸気船が増えると船同士の事故というものも増えるに違いない、日本で初の蒸気船対蒸気船の事故裁判で、御三家の圧力に屈して泣き寝入りしたら、今後それがルールになってしまいます、というか土佐は幕府の圧力に負けたといって世界の笑いものになってもえいがですろうか!と象二郎ちゃんを脅した龍馬は、これを土佐一藩が幕府を相手取っての裁判にしてしまうんですね。
 で、いろは丸裁判・第4回公判に出廷した飯島さん。幕府の威光をバックに、浪人風情がご公儀にものを申そうというのかと脅しでねじ伏せようとしますが、龍馬はそこに「万国公法」を持ち出します。
 海難事故というものは世界に通用するルールで裁かれるべきもので、徳川ルールは通用しません。徳川御三家たる紀州がローカルルールに固執してたら、世界中の笑いものになって後進国扱いされて、国益に響くことになるんですよと脅しをかました龍馬は、象二郎ちゃんを招きいれます。
 象二郎ちゃんは、ガイジンの船長さんをつれてきてたんですね。イギリス海軍のエライ人。この人が公平な立場で、事故の裁定をくだすわけなんですけど……これって実話じゃ…ないよね?。ここでガイジンさんを連れてきて裁判官にするって自体、微妙な気がするし。
 ま、それはともかく、新たなセオリーでぐいぐいと押し切ってゆく龍馬をじっと見た飯島さんは、「才谷梅太郎。おまえ何モンや」と呟きます。
 これがすごい迫力で、かっこよかった。まんま飯島さんだったけど(笑)。この、いままで知らなかった風を吹かせている人間は何者なのだという、幕府側の人の理屈抜きの動揺みたいなのが見えて、印象的でした。
  
 ということで、紀州は折れ、満額の賠償金を支払うことで、いろは丸事件は決着します。
 ここまでは良かった。素晴らしかった。しかし、このあとに、脱力シーンのオマケがちゃんとあります。
 夕日のうつくしい岸壁を散歩する龍馬は、そこでお元とイチャイチャ。「坂本さんはウチの希望ですけん」とかなんとか…やっているところに、覆面姿の4人の武士が唐突に沸いて出て、抜刀して襲ってくるんだ。キャー坂本さん! なんやて、お前は才谷っつーんじゃないんか!! ややっ、そーゆー君らは例の紀州のエライ人じゃアーリマセンカ。おんしらにワシは斬れんぜよ。フッ。
 なーんつって、チャンチャンっと約1分で殺陣終了。あー…久しぶりにやらかしてくれたわ、お家芸「陽炎の辻・居眠り剣法」
 あのー、これってネタなんですか? こーゆー脱力シーンって、無きゃいけないんですか? 45分をスキの無い、引き締まった良い出来で仕上げたら、どこかから文句でも出てくるんでしょうか??
 よくわかんないけど、来週は船中八策。ミッチー大久保の登場よ♪ さらに、龍馬暗殺の真実に繋がる? 伏線も張られるんだよね。って期待していいでしょうか?? .