マッサージという言葉はほとんどの方が知っている言葉だと思います。体を揉んだり、さすったり、押したりと非常に気持ちの良いものです。僕なんぞは仕事柄、毎日患者さんに「マッサージしますね」なんて言ってやっています。
ところでこのマッサージを業として行うには「あん摩マッサージ指圧師免許証」というのが必要です。略して「あマ指師免許」などと呼んだりもします。「業として行う」というのは不特定多数の人に対してお金をもらって施術するということです。ですから孫がおばあちゃんの肩を揉んでおこづかいをもらうというのは「業として行う」ということにはなりません。この「あん摩マッサージ指圧師免許証」はかの大前春子さん(ドラマ「ハケンの品格」)も持っていらっしゃいました。僕ももちろん持っていますし、妻も持っていますから、ドラマでこの免許証が登場した時にはちょっと盛り上がってしまいました。大前さんの免許証は表彰状のような感じの免許証でしたが、僕の免許証は
★あん摩マッサージ指圧師免許証
と、こんな感じです。自動車免許の更新の時に交通安全協会に入会するともらえる免許証入れみたいな感じです。妻の免許証は大前さんと同じような表彰状形式です。どうしてこのように違うのかというと、僕がこの免許を取得した当時は「あマ指師免許」は都道府県知事免許でした。ですから都道府県が試験を行い、知事の名前で免許証を発行していたのです。ちなみに僕は千葉県で取得し、妻は神奈川県で取得しました。ですから都道府県で形式が違っていたのです。ところが現在では「あマ指師免許」は厚生労働大臣免許となっていますから、厚生労働省が試験を行い、厚生労働大臣の名前で免許証が発行されています。大前さんの免許にも厚生労働大臣の名前が書かれていました。現在ではみんな一律に大前さんのような表彰状形式の免許証になっていると思います。この免許を取得するためには専門学校に3年間通って、それから国家試験を受験し合格しなくてはいけません。ですから大前さんがこの免許を持つことは物理的に不可能だったと思うのですが、そこはフィクション、ヤボな事を言ってはいけませんね。
「あん摩マッサージ指圧師免許証」と長ったらしい名前の免許ですが、この中には「あん摩師」「マッサージ師」「指圧師」というみっつの資格があるように見えます。一般の人にはこの違いは理解できないでしょうし、現在ではみっつともマッサージとして取り扱われていることが多いように思います。ところがこのみっつは徒手で施術を施すということは共通していますが、微妙に違うのです。
「あん摩」は中国で体系化された手技療法です。ところが中国では推拿(すいな)といいます。どちらもその手技の主体は「揉む」なのですが微妙に違います。ですから中国由来とはいえ、日本で独自に体系化されていったのでしょう。
ドラマ「チャングムの誓い」でチャングムが死にかけた王様の体を揉みましたが、あれはあん摩の手技ではありませんでしたから推拿のように思いました。
「あん摩」という言葉、お年寄りには言う人がいますが、若い人はほとんど言いません。ところでマッサージは「マッサージに行く」と言いますが、あん摩は「あん摩をとる」と言います。これはあん摩をやっていた人たちが患者の自宅に出向いて、つまり往診で施術していた人が多かったことに由来しているように思います。
「マッサージ」の起源は古く、かのギリシャの医聖ヒポクラテスが提唱したのがはじめだと言われています。マッサージの語源はギリシャ語の「マッシー(揉む)」だとする説もあります。しかしギリシャでは普及せずに後にフランスで体系化されたものが現在のマッサージだと言われています。その手技の主体は「さする」です。
よくテレビや映画で南仏のリゾートなどで金髪の若い女性がテラスかなんかで全裸になってオイルマッサージを受けているシーンが流れたりしますが、あれがマッサージです。ですからマッサージは皮膚に直接手を触れて行うものなのです。ただしそれでは手が滑りませんからオイルやタルク(天花粉)をつけて行うのです。現在の日本ではエステなどで行われているのが本当のマッサージに近いと思います。
僕も治療院ではマッサージといいますが、手や足などは直接皮膚に行うことはあっても体幹部はほとんど行いません。
「指圧」は「指圧の心、母心、押せば命の泉湧く」の浪越徳治郎先生が体系化された手技療法ですから日本でできたものです。その手技の主体は「押す」です。
僕が専門学校に通っていた頃にはまだ浪越徳治郎先生はご存命でしたから、特別講義を受けたことがあります。浪越徳治郎先生がかのマリリン・モンローの胃痛を指圧で治したという話は有名で、生でその話を聞くことができたのです。
このようにそれぞれ由来も手技も違いますが、現在ではひっくるめてマッサージと言われることが多いようです。僕も実際にやっている基本は指圧なのですが、それぞれの良いところを取り入れて、ごちゃ混ぜでやっている状態ですからマッサージと呼んでいます。いずれにせよ気持ちの良いものですし、リラックス効果が高く、現在のようなストレス社会では張り詰めた交感神経を緩めることは病気の予防にもなりますから、もっと医療の中に積極的に取り入れるべきものだと考えます。
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