博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大秦賦』その4

2020年12月26日 | 中国歴史ドラマ
『大秦賦』第19~24話まで見ました。

趙では孝成王が急死し、秦に人質にやられた太子佾をよそにバカ息子の次男公子偃が悼襄王として即位。学友で側近の郭開を丞相に取り立て、この郭開が目の上のたんこぶの廉頗から兵権を奪ったりとやりたい放題。


秦では燕と結んでともに趙を攻めるという「聯燕攻趙」策を提案。趙での人質時代に嬴政と親友だった太子丹がこの話に乗り、使者として秦へと赴きます。話がうまくまとまったと思いきや、鄭国による治水工事で人手が取られて趙攻めどころではないということで、嬴政のあずかり知らぬ所で呂不韋が趙との和平を画策。


で、12歳にして呂不韋の食客となっている甘羅君が趙への使者となり、新君即位後間もない状態で内部に不安を抱える趙側を説得し、趙との和平をまとめて帰還。もちろん梯子を外された形の太子丹は嬴政を裏切り者と詰り、旧友から一転絶許の仲に。後から事情を知らされた嬴政は、得意げに褒美をねだる甘羅を自ら刺殺。甘羅君、『史記』にも12歳の時の趙との交渉の話しか載ってないので、適当な所でフェードアウトさせる必要があるのですが、こういう退場のさせ方はあんまりだと思います。

一方、後宮の趙姫は偽宦官にされてしまった嫪毐とわりない仲となり、病気療養と偽って咸陽を出て旧都雍城へ。


そしてこうなるわけです (^_^;) 子供の存在がバレてはならぬと、お忍びで雍城を訪ねてきた嬴政にもつれない態度をとり、母子の仲が微妙になります。華陽夫人はその隙を突いて、ここぞと嬴政に楚の王族の娘と娶せようとします。


で、羋啓(後の昌平君)の娘の羋華を楚国から呼び寄せ、お狩り場で馬で走り回ってる所を横から飛び出してくるというわざとらしいシチュエーションで出会う2人。これがおそらく扶蘇の母親になるということなんでしょうけど、もしそういう展開になるなら扶蘇の母は楚出身ではないかという研究を参照していることになりますね。

この華陽太后の陰謀を嗅ぎつけた趙姫が急遽雍城より咸陽へと帰還。対抗して嬴政に斉の離秋公主を嫁入りさせようとしますが…… ここでしょーもない宮廷物エピソードが展開されてしまうんでしょうか……
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『棋魂』その3(完)

2020年12月26日 | 中国近現代ドラマ
『棋魂』第26~最終36話まで見ました。

初段入段を果たし、いよいよ職業棋士への道を歩み始めた……はずだった時光でしたが、定段賽の内容がパッとしなかったせいか、どこの団体からもお呼びがかからず、なかなか所属先が決まりません。


弈江湖道場卒業後も時光のルームメイトとなる洪河。原作の和谷に相当。


しかし兪亮の父親の兪暁暘、すなわち原作の塔矢行洋に新初段賽の対戦相手に指名されたことから注目を集めるようになります。

時光は道場の先輩許厚のチームに所属することに。そして「神之一手」を追い求める褚嬴のために、時光は久しぶりにネット碁を開き、彼と兪暁暘を対戦させることに。そして褚嬴はこの対戦を時光に見せることが、この時代に呼び出された自分の使命だったのではないかと気付きます。

職業棋士としてめきめきと頭角を現す時光ですが、褚嬴に残された時間は少なく……

【総括】
ということで今回のドラマ版、褚嬴の出現と消滅は超新星の爆発に関係づけられています。演出的に褚嬴が幽霊なのか穿越(タイムスリップ)なのかボカされたような演出。囲碁好きの僧侶が揃う蘭因寺で時光の指南役になる懶和尚も、褚嬴の声が聞こえるのかそうでないのか、含みのある描写となっています。

褚嬴がいなくなった後、原作と同様に北斗杯が控えているのですが、最終話近辺の展開は(私の記憶の限り)ドラマのオリジナル。全般的に原作の芯を生かしつつ中国を舞台として合うようにうまく換骨奪胎しているのですが、最終話の締め方は原作よりまとまっていると思います。懶和尚のようなドラマオリジナルのキャラクターも脇でちょいちょい出てきますが、ドラマ版の世界ではそれほど違和感なく溶け込んでいる感じです。
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『大秦賦』その3

2020年12月20日 | 中国歴史ドラマ
『大秦賦』第13~18話まで見ました。

嬴政が即位し、相邦にして新王の仲父として我が世の春を謳歌する呂不韋。序盤で出てきた樊於期や嫪毐も趙に人質になっていた荘襄王一家の帰国に尽力したということで引き立てられています。


ここらへんで荀子の弟子として韓非とともに賢才を謳われていた李斯が秦に到来。呂不韋に仕官を求めますが、他にも仕官志望者が詰めかけてなかなか思うようにいきません。しかし李斯は妓楼で無銭飲食のかどで店主に詰め寄られていた嫪毐を助けたことから呂不韋との面会に漕ぎ着けます。何かわらしべ長者みたいなノリになってきましたが……

呂不韋は李斯に得意げに編纂中の『呂氏春秋』を見せ、嬴政のために作っているのだと述べますが、ここで李斯から「あなたが秦王のためだということで何でもかんでも判断するというのはよくありませんな」と釘を刺されます。しかしその忠告が通じなかったようで、呂不韋は朝堂において上将軍の麃公が新たに定められた秦律に違反したということで処断を宣告し、嬴政も太后の趙姫も彼の独断専行に困惑します。


呂不韋は旧知の者がいないということで何かと自分を呼び出す趙姫のために、嫪毐を侍従に立ててやります。ところがこの嫪毐、身に覚えのない罪に問われて宮刑に処されたかと思いきや…… 上の画像は第1話の初登場時のものですが、身分の変動に応じて髭が生えたり抜かれたりします (^_^;)

一方、韓では韓王が秦の力を削ぐために、治水工事で秦の国力を疲弊させるという疲秦策を提案。王命を受けた鄭国が、韓非との縁を持ち出して李斯に接見。韓非は本作では韓の王子という設定。荀子のもとから故国に戻っております。李斯はその疲秦策とやらが結局は秦を強大化させ、韓の滅亡を早めるだけと知りながら、敢えて鄭国の話に乗ってやります。


趙では趙王の不出来な次男の趙偃が、邪魔な長兄の趙佾を秦への人質として追っ払って自分が太子の位をゲットしようと、幼馴染みの郭開や謀臣の毛遂とあれこれ画策中。出来のいい長男を人質に出したくない趙王の抵抗など紆余曲折ありつつも、結局趙佾が人質に出ることとなり…… というあたりで次回へ。趙偃&郭開は、趙に人質になっていた頃の嬴政と因縁があるという設定です。
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『棋魂』その2

2020年12月14日 | 中国近現代ドラマ
『棋魂』第13~25話まで見ました。

時光が弈江湖道場に入学してから初段となり、職業棋士として歩み始めるあたりまでの話です。原作では院生篇にあたる部分となります。


合宿では指導者・責任者だった沈一朗と白瀟瀟も道場では同学に。沈一朗は原作の伊角に相当。この沈一朗に洪河(原作の和谷)が時光のルームメイトに。


道場ではまずは二軍クラスの二組から始まり、一組への昇格が目標に。時光は「大老師」こと朱大勇の叱咤を受けつつ弱点を克服し、一組への昇格、そして一組でベスト8に食い込み、初段入段を競う定段賽への挑戦権を獲得します。


その過程でこの名台詞の場面もあり。


当時大人気だった女優舒淇のカレンダー。時光がファンということですが、彼女の名前が「輸棋」(囲碁で負ける)と同音ということで、同学の岳智(原作の越智)の怒りを買ってしまいます (^_^;) このドラマ、割とこの手の言葉遊びが多いです。

武者修行で訪れた寺には褚嬴に関係しそうな梁の武帝時代の棋譜やら、なぜか褚嬴の声を聞くことができるらしい僧侶が出てきたりと、生前の褚嬴に関係するエピソードも。そして兪亮は、韓国留学時の同学秀英が時光に敗れたという話を聞き、彼に再び興味を持ち始めます。

そして定段賽。一癖も二癖もある好敵手たちに翻弄されながらも予選、本選と勝ち進み、時光は本選最後の12戦目で最難関の岳智を打ち破ります。実力は折り紙付きながらもメンタル面での弱さから何年も入段できないでいた沈一朗も勝利を収めますが、初段入段を果たせるのは2人のうち片方だけで……
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『大秦賦』その2

2020年12月14日 | 中国歴史ドラマ
『大秦賦』第7~12話まで見ました。


趙では外交で秦にしてやられた平原君が趙王に責められショック死。秦でも孝文王が即位三日にして急死し、いよいよ子楚こと荘襄王が即位。華陽太后の弟の陽泉君を差し置いてブレーンの呂不韋を丞相に据えます。


孝文王の死を知って笑いがこみ上げる呂不韋の顔が邪悪すぎるw 中の人は『楚漢伝奇』で韓信を演じていた段奕宏です。しかし商人出身ということでなかなか丞相としての信望を得られません。そこでまず上将軍の蒙鷔を味方につけ、彼のバックアップにより東周国征伐を成功させ、丞相としての威信を高めます。


蒙恬・蒙毅兄弟の祖父にあたる蒙鷔。中の人はやはりいろんな所で目にする于彦凱。最近では炎上版『封神演義』の黄飛虎などを演じています (^_^;)


ここらへんで嬴政も本役の張魯一に交替。ただ年齢的に数えで12~3歳のはずなので、親政開始まで若年の俳優を充てるべきだったという気が……

病気がちの荘襄王は嬴政を太子に据えようとしますが、華陽太后は自分の養女格の韓夫人の産んだ成蟜を太子に指名させようとし、更に嬴政が呂不韋の子であると謡言を流させます。そして宴の場で嬴政母子を侮辱させるような寸劇を演じさせ、挑発に乗った嬴政は俳優を刺殺。それを目にした荘襄王は嬴政と趙姫に謹慎を命じ、血を吐いて昏倒。華陽太后は重篤の荘襄王の身柄を抑え、クーデターを図ります。

何だか于正の『コウラン伝』みたいな展開になってきましたが、嬴政は蒙恬・蒙強兄弟によって宮中から脱出し、呂不韋のもとに逃げ込みます。そこで自分が呂不韋の子であるという流言に惑わされつつも最後は立ち直り、呂不韋・蒙鷔ら百官に加え、風見鶏的な動きをしてきた秦の王族たちの支持を得て監禁されていた父母を救出。晴れて父王から太子に指名され、華陽太后は監禁、太后一派は宮廷を追われ……というあたりで次回へ。
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『大秦賦』その1

2020年12月08日 | 中国歴史ドラマ
タイトルだけだとピンときにくいでしょうが、大秦帝国第四部です。前作、前々作があまりに原作から外れていると原作者からブチ切れられたりして『大秦帝国』原作と謳うことができなくなり、こういうタイトルになった模様…… 『大秦賦』全78話予定のうち第1~6話まで鑑賞。

物語は長平の戦いの直後から始まります。趙で人質になっていた異人(昭襄王の太子である安国君の庶子)は商人呂不韋の庇護を受けつつ妻の趙姫、子の政児(後の始皇帝)とともに暮らしていましたが、秦が趙の都邯鄲に攻め寄せ、後難を恐れた異人は呂不韋の導きにより故郷咸陽へと逃亡することになります。しかし別ルートで逃亡するはずの趙姫と政児はその実おとりがわりで、異人か咸陽逃亡に成功する一方で、2人は邯鄲で抑留されることになります。


色々不憫な目に遭い、特に政児の方は父親に不信感を抱くことに……


呂不韋は実子のいない安国君の正夫人華陽夫人に異人を売り込み、太子嫡子争いのライバル公子傒を追い落として彼を嫡子の座に着けることに成功。夫人の出身地にちなんで異人は子楚と名乗ることになります。しかし華陽夫人の押しにより、彼女の養女格の韓霓を娶らざるを得なくなります。彼女との間には成蟜が誕生。子楚は嫡子として父を助け、めきめきと頭角を現します。その間に秦は800年続いた周王朝と西周国を滅亡に追い込んでおります。


その際に趙など五国が周に加担しようとしたのですが、その和平交渉の場に出てきた平原君は趙姫と政児の釈放と引き換えに子楚を脅して有利な条件を引き出そうとしたり、今作でもきたないなさすがな所を見せつけてくれますw 平原君は序盤のレギュラーと言っていいほど出番が多いです。


そして昭襄王は夢の中で曾孫にあたる政児と出会い、夢判断によりこの子こそが天下を統一する秦王となるということで、趙姫母子を邯鄲から呼び戻すよう遺言して75年の生涯を閉じます。今作の昭襄王は前作と違って狂気や禍々しさを感じさせない威厳のある老王として描かれています (^_^;)

一方、政児こと嬴政は趙で出会った少女冬児や燕の太子丹と交友を深める一方で、後に趙王となる公子偃や郭開とは確執を深めていきます。当時趙は燕との戦いで追い詰められており、嬴政と趙姫を秦に返すことで秦と和解しようと画策。しかし咸陽へと出立する前日に公子偃&郭開に夜討ちを掛けられたり、平原君とともにようやく咸陽に到達したかと思えば、母子の存在を快く思わない華陽夫人の陰謀で城外に留め置かれます……

しかしそこへ国外へと追われていた公子傒が帰還。子楚とは敵同士であったはずが、趙姫と嬴政を気に入ったらしく、2人に助け船を出します。安国君も嬴政を父昭襄王の夢を叶える少年と信じて母子を子楚の妻子として認知。しかし嬴政は何かと波風を立てたがる性格で……というあたりで次回へ。

歴史物としてのクオリティは高いのですが、前作『大秦帝国之崛起』(昭王〜大秦帝国の夜明け〜)と比べると普通の大河ドラマみたいになっちゃってるなあと。時系列的にも今回のあたりは前作の終盤とかぶっています。ついでにNHK-BSプレミアムで日本語版が放映中の『コウラン伝』も後半は本作とかぶってくるはずなのですが、こちらとも当然作風が違っています。というか違いすぎて笑いがこみ上げるぐらいです (^_^;)
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『棋魂』その1

2020年12月02日 | 中国近現代ドラマ
『ヒカルの碁』の中国ドラマ版ですが、極めて出来がよいと評判なので見てみることに。今回は『棋魂』第1~12話まで鑑賞。全36話なので、全体の3分の1ですね。

物語は1997年6月30日、香港返還の当日から始まります。原作のヒカルに相当する時光少年は、お爺ちゃんの物置で古ぼけた碁盤をあさっているうちに褚嬴と出会います。


原作の佐為に相当する褚嬴。ドラマ版では南朝の梁の時代の囲碁の名人で、清朝康煕年間にも一度甦って小白龍(白子虬。実在の棋士黄龍士がモデルだそうな)と行動をともにしていたという設定。

当初は褚嬴の力で囲碁の神童と名高い兪亮(原作の塔矢アキラ)を打ち破ったり囲碁の大会で優勝したりしていますが、負けた相手が本気で悔しがっているのを見て、褚嬴の態度に疑問を感じ始めます。そして一旦褚嬴、そして囲碁の世界とも訣別。


そして6年後。すっかりダメ中学生に成長した時光ですが、ひょんなことから再び囲碁の世界に足を踏み入れ、褚嬴とも再会。高校入学後は幼馴染みの呉迪(原作の筒井)、江雪明(原作のあかり)らとともに、囲碁社(囲碁部)「四剣客」(四銃士)の意。


一方、時光少年に敗れた後韓国に留学していた兪亮は時光との再戦を熱望。しかし高校囲碁大会で敢えて褚嬴の指示を無視して碁を打った時光の実力に失望し、囲碁は初段入段を果たし、職業棋士の道を目指していきます。

時光の方も、囲碁社の活動や囲碁の合宿への参加を通して次第に高校卒業後の進路として職業棋士を目指すようになり、囲碁道場の「弈江湖」の入学試験を受けるというあたりまで。

舞台を中国に置き換えて原作の展開や登場人物をうまく換骨奪胎しているなあという印象です。ミニ四駆や『康熙微服私訪記』などテレビの時代劇、ジェイ・チョウのCDなど、当時の流行り物もうまく取り込んでいます。第1話で香港返還が絡んでくる点が物議を醸しましたが、これも舞台設定のひとつにすぎないという感じで話に聞いていたほどしつこくないというか、実際の所はミニ四駆ネタの方がしつこく出てきますw
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2020年11月に読んだ本

2020年12月02日 | 読書メーター
日本の修史と史学 歴史書の歴史 (講談社学術文庫)日本の修史と史学 歴史書の歴史 (講談社学術文庫)感想
歴代の史書編纂とそれぞれの史書の特色、史観の変遷についてまとめた日本史学史。末尾には明治から戦後のマルクス主義史観に至るまで近代以降の展開もまとめる。六国史以後も『新国史』の編纂が試みられたが、おそらくは未定稿のままとなったことで、以後の国史編纂事業も杜絶してしまったのではないかと言う。ともかくも定稿することが大事と考えれば、中断期間も含めて編纂に膨大な時間を要し、かつ種々の問題点があるとはいえ、『大日本史』が完成に至ったことは褒められてよいのではないか。
読了日:11月03日 著者:坂本 太郎

白楽天――官と隠のはざまで (岩波新書)白楽天――官と隠のはざまで (岩波新書)感想
白楽天の生涯をその詩作とともに辿るという趣向だが、詩で唐のことを漢に置き換えるのは、政治的な憚りというよりは文学的な技法という指摘であるとか、宋代の白楽天の評価の変化、従来乏しいとされてきた中国での叙事詩の系譜、元稹との絡みからの友情の文学の成立など、白楽天周辺の議論がなかなか面白い。
読了日:11月05日 著者:川合 康三

孝経- 唐玄宗御注の本文訳 附孔安国伝-孝経- 唐玄宗御注の本文訳 附孔安国伝-感想
他の訳本と比べて文章、あるいは全体の構造に強くこだわっているのが特徴。副題に「唐・玄宗御注の本文訳」と微妙な書き方をしている通り、各章の注釈と玄宗御注との距離は微妙。
読了日:11月06日 著者:野間 文史

悪党たちの大英帝国 (新潮選書)悪党たちの大英帝国 (新潮選書)感想
悪党というか、本書「はじめに」によれば大英帝国が誇る偉大なアウトサイダーたちの評伝。「悪党」というイメージにそぐわないようでもアウトサイダー、すなわちよそ者と見れば、ウィリアム三世がその中に入っているのも納得できる。またアメリカ独立戦争時の頑迷な国王というイメージのジョージ三世については、国民からは愛されていたなど、意外な姿が描かれる。「大英帝国」というテーマからは外れるが、現在「悪党」というイメージに最もふさわしい為政者トランプは、本書の文脈からはどのように描かれるだろうかと何となく想像した。
読了日:11月09日 著者:君塚 直隆

初歩からのシャーロック・ホームズ (中公新書ラクレ, 706)初歩からのシャーロック・ホームズ (中公新書ラクレ, 706)感想
エピソードの紹介、登場人物や時代的な背景、著者コナン・ドイルに関する解説以外にも、各種邦訳の特色、映像版・漫画版などがどの程度、どのように原著を反映させているかなど、ホームズ物のガイドブックとして行き届いた内容となっている。ミニホームズ事典として本棚に備えておきたい。
読了日:11月10日 著者:北原 尚彦

中国の歴史3 ファーストエンペラーの遺産 秦漢帝国 (講談社学術文庫)中国の歴史3 ファーストエンペラーの遺産 秦漢帝国 (講談社学術文庫)感想
良くも悪くも尖った構成・内容のものが多いこのシリーズの中にあってオーソドックスな作り。原著出版から15年、その後も色々新発見や研究の進展があり、かつ本文には増補がないが、元々踏み込んだ記述がそれほどないこともあり、意外と今でも通用するなという印象。シリーズの中では安心して人に薦められるもののひとつ。
読了日:11月13日 著者:鶴間 和幸

中国の歴史4 三国志の世界 後漢 三国時代 (講談社学術文庫)中国の歴史4 三国志の世界 後漢 三国時代 (講談社学術文庫)感想
演義の専門家による歴史本ということになるが、史実と演義との比較によって流れをつかむという点で演義の影響力というか効用を再認識させられた。時代史の展開のほか、外交・情報戦略、儒仏道三教の成立、書道史、邪馬台国も含めた国際関係など、関連の話題で触れるべきものをあらかた網羅しており、気配りが効いている。
読了日:11月16日 著者:金 文京

よみがえる天才4アレクサンドロス大王 (ちくまプリマー新書)よみがえる天才4アレクサンドロス大王 (ちくまプリマー新書)感想
彼の死の直後、場合によっては在世時からのアレクサンドロス伝説の形成と、彼の実像を追う。歴史の重層性を考えるための絶好の題材ということになるだろうか。そしてそれはアレクサンドロスの東方遠征とセットで語られてきた「ヘレニズム」の評価や、現代の国家としての「マケドニア」という国名にも及んでいく。
読了日:11月18日 著者:澤田 典子

中国法 「依法治国」の公法と私法 (集英社新書)中国法 「依法治国」の公法と私法 (集英社新書)感想
裁判例中心の構成だが、法学に関する基礎知識がない身では決してわかりやすい本ではない。取り敢えずに民事に関しては中国でも法は着実に機能しているということで、「中国に法はない」という類の偏見でもって日本企業が現地の訴訟で失敗しているという話には「そりゃそうだろう」という以上の感想はない。憲法による規制の矛先が国家権力、公権力には向かわないという話には、中国政府の憲法観は日本の改憲勢力と一緒ではないかと思ってしまったが…… 
読了日:11月19日 著者:小口 彦太

木簡学入門 (志学社選書, 002)木簡学入門 (志学社選書, 002)感想
改めて読み直してみると、木簡の形態、発見と発掘、各種の木簡の内容、考古学と文献学のドッキングなど、総合の学問としての木簡学のあり方、書体の問題など、入門書として触れなければいけない問題についてあらかた解説されていることに気付く。「きれいな木簡」と「汚い木簡」、冊書への復原の問題などは、現在も残されているというか、甲骨学など他の出土文献についても通底する問題であろう。
読了日:11月26日 著者:大庭 脩

もののけの日本史-死霊、幽霊、妖怪の1000年 (中公新書, 2619)もののけの日本史-死霊、幽霊、妖怪の1000年 (中公新書, 2619)感想
古代から現代のエンタメに至るまでのモノノケ像や関連の語彙の変化を追う。うっかり死霊と親しくなってしまった藤原教通、中世において「幽霊」という言葉が成仏できなかった死霊を指すわけではないという指摘、近世のモノノケの滑稽なキャラクター化の話などが面白い。
読了日:11月27日 著者:小山 聡子

黄禍論 百年の系譜 (講談社選書メチエ)黄禍論 百年の系譜 (講談社選書メチエ)感想
黄禍論から見たアメリカの対日外交が中心的な話題。時代の射程を第二次大戦後にも伸ばしていること、日本が凋落してから、アメリカの黄禍論の対象が中国に移りつつあることに触れているのが新しい点か。その議論がどの程度妥当なのかはさておき、アメリカが日中同盟、東アジア共同体の形成を恐れてきたという指摘は、今次の大統領選で存在がクローズアップされた日本のトランプ支持者の目にはどう映るだろうか?
読了日:11月29日 著者:廣部 泉

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