博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『慶余年』その1

2019年12月27日 | 中華時代劇
原作者が『択天記』『将夜』の猫膩、脚本家が『大宋少年志』の王倦という黄金タッグが実現した作品ということで『慶余年』の鑑賞を開始。今回は第1~6話まで見ました。

本作は大学生が中国古典文学の教員に語って聞かせるという体裁で始まります。タイムスリップ物ということで、こういう設定で検閲を切り抜けたとされていますが、実のところ同じくタイムスリップ物の『天意』が普通に配信されたりしているわけで、タイムスリップ物だから一律にダメというわけでもなさそうなんですよね……


さて、難病で世を去ったらしい現代人が現代の知識を持ったまま、赤ん坊として異世界の南慶国に転生します。この赤ん坊范閑、何やら訳ありのようで、亡き母親の下僕だったという厨二臭いスタイルをした凄腕の五竹に守られ、都の京都から儋州の范府へと護送され、司南伯范建の私生児として養育されることになります。

現代の知識を持っているということで、クッソ生意気な少年范閑は、五竹に武術を仕込まれたり、京都からやって来た鑑査院(南慶国の特務機関らしい)の大物費介に医学と称して毒を扱う技術を仕込まれたりして、すくすく成長していきます。


そして青年に成長した范閑は、京都からの使者として紅甲騎士というこれまた厨二くさいネーミングの一団がやってきたことで、儋州を離れて京都の父親のもとで暮らすことに。


京都に到着し、なぜか慶廟にお参りすることになった范閑だったが、ここでなぜか手羽先を持っているヒロイン林婉児と出会います。彼女は長公主と宰相林若甫との間に生まれた私生児で、色々あって范閑の亡母が商売で築き上げ、その死後に国庫に納められた財産を引き継ぐ身。范閑とは許嫁同士なのですが、お互いにまだそのことは知りません。名前も名乗らずに別れ、彼女が持っていた手羽先が約束の品として范閑の手元に残されます。


二人の出会いを取り計らったのは、国を治める慶帝の模様。大物陳道明が演じてます。長公主と結ぶ太子を牽制したり、臣下の動きを逐一把握したりと、なかなか食えない人物のようです。

で、京都の范府に到着した范閑は、かつて儋州でともに暮らしていた異母妹若若と再会。そして范閑が嫡子の地位を奪うのではないかと恐れる第二夫人柳如玉、その子で范閑にとては異母弟にあたる范思轍が手ぐすね引いて待ち構えていましたが、范閑はそんなシンデレラの継母レベルの人間が手に負えるようなタマではありませんw

しかし范閑は「内庫」(彼の母親が残し、国庫に納められた財産をこのように称している)という巨大な紐付きの林婉児の婚約者ということで、「内庫」を狙う太子や二皇子、彼らと結ぶ重臣の子弟らに目を付けられ、二皇子と懇意の靖王世子から詩会に招かれますが……

この世界では、范閑が前世の記憶をもとに書いた『紅楼』がベストセラーになっているということで、詩会がどういう展開になるか予想できますね (^_^;) この世界にはもともと無さそうな石鹸や白砂糖を生成して巨額の財産を築いた、政治に理想を持っていたらしいということで、范閑の母親の身の上も何となく読めてきましたが……

ということで、何となく人を食ったところがあるのが、たまらなく良いです。全47話予定ということですが、オープニングタイトルロゴに小さく「第一季」とあるのは見なかったことにしましょう ……
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『大宋少年志』その7(完)

2019年12月20日 | 中国歴史ドラマ
『大宋少年志』第37~最終42話まで見ました。

七斎の面々が探りを入れているうちに、秦無涯が丁二こと米禽牧米と結託して宋・西夏間の戦争を煽ろうとしているという構図が見えてきます。(もちろん本作の制作者にも、陰謀によって戦争を煽るのはいけないという規範意識があるわけです。)秦無涯は邠州商会別館に集まった宋・西夏側の要人を殺害して戦端を開かせようとしますが、元仲辛らがそれを阻止。彼に迫って黒幕の名を吐き出させようとしますが、あっさりと自害。

一方、元伯鰭は三年前の祈川寨の戦いで宋側の人間が西夏に自軍の布陣図を漏洩させ、それが大敗につながったのではないかと考えます。そこで密かに西夏の大物没藏宝歴を攫い、彼らと結託していた人物が、現在邠州に駐屯している将軍周懸であると知ってしまいます……

実は元伯鰭にも秘密があり、実は祈川寨の戦いの折に米禽牧北に命を救われ、そのスパイとなっていたのでした。とは言っても彼には国家を裏切っているという意識は全くなく、逆に国家を裏切って布陣図を西夏側に漏洩した者を探り出すために米禽牧北に協力しているという認識です。愛国のために国家を裏切るというのアイロニーを感じさせます。そして元仲辛は、そんな兄の行動を早くから察知しておりました。趙簡を愛しながらも結婚に踏み切れないのも、兄のことで彼女を巻き添えにしてしまうかもしれないと不安に思っていたからなのでした。

七斎の面々は何とか元伯鰭の暴走を食い止めようとしますが、「戦神」と謳われた彼を止められるはずもなく、祈川寨での戦没者慰霊祭を周懸暗殺の場と見定めて突き進みます。七伊の頼みの綱の梁竹も、元伯鰭と不倶戴天と見せかけて、戦没した兵士たちの仇討ちのために早くから結託していたようです…… しかし国境付近の祈川寨で宋側の要人を殺害させることで、これを西夏側の仕業と見せかけて宋・西夏間の戦端を開かせることこそが米禽牧北の狙いだったのです。

慰霊祭の場で元伯鰭&梁竹が凶行に及ぼうとしたタイミングで陸観年が到来。周懸が布陣図を漏洩させたとされる一件は、実は無駄な戦いを速く終わらせようとした陸観年の陰謀でした……って、おっさん何やっとんのよ(´Д`;) しかし真相が明かされた時には、既に祈川寨が米禽牧米率いる西夏軍に包囲されており、一同は最後の決戦に挑むことに。陸観年は三年前の戦いで犠牲者を出した責任を取るような形で戦死し、元伯鰭も戦死を遂げます。米禽牧北は騒ぎを聞きつけて駆けつけた没蔵宝歴に捕らえられ、すべてが終わったかと思いきや、趙簡にはまだ解決すべきこが残されており……

【総括】
ラストは「オレたちの戦いはこれからだ!」エンドなんですが、話の勢いは削がれてないので、それほど不快感を抱かせないというか疾走感を感じさせる締め方になっています。北宋期を舞台とした学園物かつスパイ物という位置づけの本作ですが、宋の人たちが西夏や遼の要人たちと対等の立場で外交を行っているというのは、何気に凄い設定かもしれません。岡本隆司先生が最近出した『世界史とつなげて学ぶ中国全史』の中で、宋・遼・西夏の間でウェストファリア体制に類するものが成立する可能性を見出していたのと通じるものがあります。

また、渤海の遺民という立場から政治的に翻弄されてきたという設定の小景に対して、現在は宋に暮らしているのだから宋の民として正当に扱うへきであるとか、国家のためであれば何をやってもいいというわけではないとか、随所に制作者の「底線」を感じさせる描写があるのもポイントが高いです。ともすれば炎上しそうなテーマをライト感覚で描ききった佳作となっています。

炎上して湖南衛視での放映が途中打ち切りとなった『封神演義』の後番組として、よくぞこの作品を出してきてくれたという感じです。本作に関しては予告編の類も全く流れてなかったということなので、『封神演義』の一件がなければ日の目を見るのがまだまだ先ということになったのかもしれません。この作品が世に出るきっかけになったとすれば、『封神演義』も炎上した甲斐があったということになるでしょう。
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『大宋少年志』その6

2019年12月13日 | 中国歴史ドラマ
『大宋少年志』第31~36話まで見ました。

韓断章は、実は契丹族ではなく、渤海の遺民の首領大延琳の遺児でした。遼国内で大延琳が渤海の遺民を率いて反乱を起こし、本物の韓断章が殺害された際に、父親の命令で韓断章にすり替わり、反乱鎮圧後は遼への復讐のために工作活動をしていたという次第。同じ渤海の遺民でも、主体的な形では陰謀の遂行者にはならず、「宋に生きている限りは宋の民」とかばってくれる友人に恵まれた小景と対照的な描写になっています。

韓断章は雲霓郡主を宋の貴顕と政略結婚させ、遼国内で彼女の兄の雲安親王に猜疑の目が向けられるようにし、遼宋両国間で不審感を煽り立てようとしておりました。しかし陰謀の道具にされそうになった雲霓は、和親を裁可した宋の皇帝の詔勅を一旦受け入れた後に自害を選び、遼宋の双方に顔を立てる形で陰謀をぶち壊します。その過程で劉生ら秘閣の学生からも死者を出したことで、陸観年の怒りを買い、韓断章は陸観年によって始末されます。そして彼は呂簡の忠告を受け入れ、秘閣の閉校を決意。

それから二ヶ月後。父親に小景との結婚を反対された王寛は、二人して趙簡を頼って邠州へと赴きます。趙簡は父親とともにその任地である邠州で暮らすようになっていたのでした。更に元仲辛の兄元伯鰭も邠州に赴任し、彼を付け狙う梁竹も潜入している模様。趙簡が病を抱えた父親を慮って結婚を考えていると知った元仲辛らも邠州へと向かいます。

邠州は西夏ともほど近いということで、西夏の商人が多く入り込み、宋の商人とたびたびトラブルを起こしておりました。再会した元仲辛と趙簡は、宋人と西夏の人との双方から信望を得ている武威軍都尉の秦無涯の息子を暴漢の魔の手から救い出し、彼の知遇を得ます。

一方、趙簡との結婚の件は、元仲辛の非嫡出子という身分から父親の王爺に反対されるかと思いきや、娘が好意を持っている人物なら割と誰でも良さそうな雰囲気です。しかし肝心の元仲辛自身は、自分との結婚が彼女を害することになる、ある目的のために今は結婚できないと、乗り気でない模様…… それでもということで無理やり趙簡の婿選びのための筆記試験を受けさせられますが、そこで彼と婿の座を競い合った邠州商会会長の林墨生が、屋敷の召使いともども皆殺しにされてしまうという怪事件が発生。その黒幕は……


どうやら皆から信望を得ているはずの秦無涯の模様です。

そして趙簡にも今ひとり求婚者が現れますが、その正体は……


牢城営の話で登場した西夏のスパイ丁二こと米禽牧北でした。現在は将軍となっていますが、趙簡への思いは捨てられなかったようです。というか「娘子」と今の時点から思い切り嫁扱いしています (^_^;)


この米禽牧北が当年の祈川寨の戦いの大将であったということで、元伯鰭、そして梁竹は彼を討ち取って死んでいった兵士たちの仇をとろうとします。しかし現在は宋の客人ということで手出しはかなわず。彼は宋・西夏の友好の証として、宋の皇帝に趙簡との和親を認めてもらおうとしますが……
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『大宋少年志』その5

2019年12月06日 | 中国歴史ドラマ
『大宋少年志』第25~30話まで見ました。

偽郡主の正体は雲霓の侍女の小花でした。開封の街中に逃亡した郡主でしたが、なぜか味方のはずの霍宇光率いる大遼暗兵処(遼の特務機関)からも追われることに。助けに入った元仲辛ともども彼らに矢で体を射貫かれてしまいますが、命に別状ないとなると、予定通り宋の皇后の前で踊りを披露すると言いだします。それどう考えても鴻門宴的なやつですよね?と思ったら案の定、宋の皇后殺害をミッションとして課されていた模様…… 小花が彼女を捕縛して郡主に成り代わっていたのは、自分がかわりに危険な仕事を引き受ける心づもりだったとのこと。


で、郡主の実家の雲安親王家が遼国の中で立場を悪くしていたのは、予想通りこの人、韓先生こと韓断章の画策というオチ。

そして王寛に自分の身の上を語る小景。渤海の遺民として生まれた彼女ですが、元々遼国で暮らしていたところを父母の代に宋に亡命してきたとのこと。そこを陸掌院に目を付けられ、遼国内の渤海の遺民たちと連携し、騒擾を起こさせるための要員として秘閣への入学を許されたという次第。彼女が秘閣に入学する以前から政治的な道具として利用されてきたと知り、王寛は掌院に「渤海の遺民であっても宋に住んでいる限りは宋の民であり、出自の違いによって不当な扱いをしてはいけない」と厳重に抗議します。このドラマ、こういうマイノリティの扱いに対して良心を感じさせる描写があるのがとても良いです。


しかし掌院の陸観年は、実は韓断章と裏で手を組んでいたのでした…… ドラマの序盤で元仲辛・趙簡らに捕らえられ、以後秘閣に密かに監禁されていたはずの彼ですが、時折陸観年に釈放されて暗躍していた模様。二人はどうやら遼宋間の戦争を煽りたいようですが、陸観年が「我々の大いなる目的」みたいなことを口にし出してイヤな予感しかしません。


王寛らは密かに老臣の呂簡に呼び出され、陸観年の謀略を阻止するよう求められます。かつての重臣で現在も隠居の身ながら皇帝の顧問官として隠然たる力を持つ彼も、陸観年の動きに危険なものを感じ取っているようです。

一方、郡主暗殺を図った大遼暗兵処の霍宇光は韓断章に追われ、元仲辛と趙簡に救われます。七斎の面々は霍宇光とともに遼宋間の戦争勃発を阻止するべく動くことに。郡主は韓断章の手下に兄を人質に取られており、彼の命を救うために計画通り皇后の誕生日の宴で舞を披露し、暗殺を実行しようとしますが、元仲辛らは郡主をたばかり、小景を身代わりに仕立てて舞を披露させ、事なきを得ます。

七斎の面々は郡主一行と霍宇光を無事帰国させるために護送することになりますが、途中の旅籠で霍宇光は何者かによって暗殺されてしまいます。そこへ劉生率いる秘閣の第五斎の面々が乗り込んできて、元仲辛が殺害容疑者であるということで身柄を取り押さえ、郡主一行も彼らによって開封に引き替えさせられることになります。霍宇光の殺害犯は五斎の斎長劉生だと主張する郡主に対し、彼が犯人ではないと睨んだ元仲辛は、劉生と相談のうえ、開封で敢えて彼を容疑者として収監させて真犯人の出方を見ようとします。

しかし劉生は獄中で何者かによって殺害され、郡主の侍女小花も暗殺されてしまい、双方の現場で第一発見者となった王寛もやはり殺害容疑者として追われる身に…… そして掌院と韓断章の結託に気付いてしまった趙簡は密かに秘閣に幽閉されることとなります。陸観年は彼女に、「私は宋のためにならないことはしない。これは遼に内乱を起こさせるための計画なのだ」と口にしますが…… ということで謀略に次ぐ謀略という展開になってまいりました。



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2019年11月に読んだ本

2019年12月01日 | 読書メーター
なぜ歴史を学ぶのかなぜ歴史を学ぶのか感想
「ポスト真実」や歴史修正主義の問題、西欧歴史学の方法を受け入れた、我々日本も含めた西欧以外の地域の歴史学者が、西欧歴史学の手法でもってヨーロッパ中心主義を批判しはじめたこと、著者=女性も含めたマイノリティが歴史学者になる困難などに触れ、確かに21世紀版『歴史とは何か』という印象。歴史は民主主義社会防衛の最前線に近い位置にある、歴史はアイデンティティをめぐる論争に常に再生可能な領域を提供し続けるという著者の言葉が印象深い。
読了日:11月01日 著者:リン・ハント

仏教の聖者――史実と願望の記録 (京大人文研東方学叢書)仏教の聖者――史実と願望の記録 (京大人文研東方学叢書)感想
仏教の聖者はどういう存在と見られてきたのか、人はどうすれば聖者になれるのかを追う。第四章の、中国では儒教の聖人論との絡みもあり、聖者になれる人は多いという議論と、聖者になれる人はごく少ないという議論とが並行して存在していたという話を面白く読んだ。人は努力次第で聖者になれるのか、はたまたそういうものではないのか?インド仏教の僧名や時間論に関するコラムも参考になる。
読了日:11月02日 著者:船山 徹

文字文化のひろがり: 東国・甲斐からよむ (新しい古代史へ)文字文化のひろがり: 東国・甲斐からよむ (新しい古代史へ)感想
副題に「東国・甲斐からよむ」とあるが、基本的には日本古代の文字文化を総覧する内容となっている。カラー図版多数。多賀城碑の真偽判定、赤外線テレビカメラを利用した漆紙文書の読み取りなど、考古学的、技術的側面にも言及するなど、分野的に広がりのある読み物となっている。
読了日:11月04日 著者:平川 南

平将門の乱を読み解く (歴史文化ライブラリー)平将門の乱を読み解く (歴史文化ライブラリー)感想
序盤で平氏一族内紛の要因について議論していたりもするが、メインは新皇即位の思想史的意義に関する議論。関東に道真信仰が持ち込まれた経緯や、新皇即位が中央政界にインパクトをもたらした背景として、光孝即位以後の皇統のゆらぎや、唐・渤海・新羅の滅亡などを挙げているのがおもしろい。
読了日:11月05日 著者:木村 茂光
中国 古鎮をめぐり、老街をあるく中国 古鎮をめぐり、老街をあるく感想
中国各地の古い街並みや暮らしぶりを残す土地の探訪記。放っておけば過疎化で寂れるばかりだが、保護の手が入ればたちまち観光地化されて現形が留められなくなり、元からいた住民の生活が破壊されてしまう。そういうジレンマを抱えているのはどこも同じようである。名も知らぬ街や村が舞台かと思いきや、紹興のようなメジャーな観光地や、洛陽のような都市部も取り上げられている。
読了日:11月07日 著者:多田 麻美

はじめての三国志 (ちくまプリマー新書)はじめての三国志 (ちくまプリマー新書)感想
曹操の生涯をたどって読み解く三国志。渡邉氏の名士論・「古典中国」論を盛り込みつつ、読みやすくまとまっている。三国志絡みの変なサイトに引っかかるよりは安心してお薦めできる。魏を中心に描写される三国志ドラマで日本語版も出た『軍師聯盟』『三国機密』の副読本にもなりそう。
読了日:11月09日 著者:渡邉 義浩
日本の民俗宗教 (ちくま新書 (1450))日本の民俗宗教 (ちくま新書 (1450))感想
日本の民俗宗教というか伝統を歴史的な所産として見る、言い換えると、近代に創られていない伝統としての民俗宗教を概観する。その一方で、日本の独自性が元から日本列島に存在したものではなく、仏教伝来以来の海外から移入された分化の影響を受けたものであることもちゃんと強調している。日本の神仏習合と中国の儒仏道三教合一との違いとして、日本の場合、神は仏寺と同じ境内にあっても社殿で祀られているとしている点は、近代の廃仏毀釈の伏流と見てよいのではないかと思った。
読了日:11月14日 著者:松尾 恒一

明智光秀: 牢人医師はなぜ謀反人となったか (NHK出版新書)明智光秀: 牢人医師はなぜ謀反人となったか (NHK出版新書)感想
豊富とはいえない史料から、プロファイリングのように光秀の出自や家格、性格、口吻まで導き出しているのがおもしろい。最後に何が光秀と秀吉との運命を分けたのかという比較がなされているが、光秀はもうひとりの秀吉というか、秀吉になれなかった男として位置づければ、その歴史的価値が見えてくるのかもしれない。
読了日:11月14日 著者:早島 大祐

現代美術史-欧米、日本、トランスナショナル (中公新書)現代美術史-欧米、日本、トランスナショナル (中公新書)感想
デュシャンの「泉」、バンクシー、トリエンナーレの開催など、個別の作品、作家、催しといった「点」でしか知らないことが通史としてどう位置づけられるのかに注目しつつ読んだ。従来「政治的メッセージや社会批評的視点を明確にした表現が少ない」とされてきた日本の現代美術が、東日本大震災以後様相が変わってきている中で、本書では触れられていない「あいトリ事件」をどう考えるべきか、その手がかりになる本だと思う。
読了日:11月18日 著者:山本 浩貴

中国の行動原理-国内潮流が決める国際関係 (中公新書 (2568))中国の行動原理-国内潮流が決める国際関係 (中公新書 (2568))感想
その対外的姿勢が外国からは脅威として写る一方で、自らは平和的な国であると信じ、また経済グローバル化などの既存の国際秩序の転覆者ではなく、擁護者として振る舞おうとする。そうした矛盾が生じる背景を、社会主義政治&市場経済のキメラ方式、そして家父長であり嫡男である党が、異母弟である国家と軍を統括するという国内体制の捻れが読み解く。国際関係を自らの被害者意識と陰謀論で読み解こうとするという中国の姿勢は、あるいは日本の「行動原理」を読み解くにも参考になりそうである。
読了日:11月21日 著者:益尾 知佐子

中華の成立: 唐代まで (岩波新書)中華の成立: 唐代まで (岩波新書)感想
新石器時代から安史の乱あたりまでを扱うが、特に漢代までが多くを占める。科挙をもその範疇に含めた貢献制の継続、王莽の前後からの古典国制の形成、従来北魏で創始され、唐代まで続いたとされてきた「均田制」の用語と位置づけの見直しなどが読みどころ。「天下」や「中華」の成立を扱いながらも、冊封体制についてほとんど触れていないのも新しい。王朝単位の時代輪切り構成にこだわらないこのシリーズの続刊に期待したい。
読了日:11月22日 著者:渡辺 信一郎

神仏と中世人: 宗教をめぐるホンネとタテマエ神仏と中世人: 宗教をめぐるホンネとタテマエ感想
院政期や鎌倉時代の人々は神仏、はっきり言ってしまえば迷信をどこまで真剣に信じていたのかを、信者の側、寺院の側、為政者の側など、いろんな角度から検討する。雨乞いなど公的、政治的な祈りの結果がどう判断されたのかという話は、他の時代、あるいは他の地域での国家的な祭祀がどういうものであったのかを考える良いヒントになりそう。
読了日:11月24日 著者:衣川 仁

ひとり暮しの戦後史―戦中世代の婦人たち (岩波新書 青版 924)ひとり暮しの戦後史―戦中世代の婦人たち (岩波新書 青版 924)感想
戦争によって婚期を逃し、独身のまま戦後30年間働き続けて中年に至った女性たちのライフヒストリー。日本版『戦争は女の顔をしていない』というか、彼女たちの後日談といった趣きもある。高確率で結核が発症し、それが彼女たちのキャリアを大きく変えることにつながったことなどは現在と異なるが、老後の国民年金の支給額や、老いた母親の介護の問題などは、現在の「ひとり暮し」の女性たちにとってもなお大きな問題となっているだろう。
読了日:11月26日 著者:塩沢 美代子,島田 とみ子

歴史総合パートナーズ9 Doing History:歴史で私たちは何ができるか?歴史総合パートナーズ9 Doing History:歴史で私たちは何ができるか?感想
生徒の「歴史離れ」の状況、実証主義の弊害、構成主義と、何かと批判されがちな実用主義の可能性、頷ける部分が多々あるのだが、著者の言う高校の教員の採用や行動、山川の教科書の採用が多い背景が、あまりに実態とかけ離れているように思う。たとえば著者は部活顧問要員として採用された地歴科の教員(史学科出身者にも一定の割合で存在する)について存在を認識できているのだろうか?
読了日:11月28日 著者:渡部 竜也

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