博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

最近見てるドラマ(2023年6月)

2023年06月19日 | 中華時代劇
『後浪』
しがない外売の女配達員孫頭頭。孤児出身の彼女は実は伝説の姜氏針法の伝承者だった。中国医学の名医・任新正は彼女に目を付け、自分が医術を仕込もうとする。彼はまた若き医学生たちに現場で医学を仕込む「師承班」の立ちあげを計画していた。そこに様々な動機で中国医学を志す若者たちが集う。……というわけで趙露思・呉剛主演の中医ドラマです。テンポがよく、典型的なダメ学生の頭頭を売れっ子の趙露思が好演してます。武侠要素もありw

『正好遇見你』
于正の会社である歓娯影視が制作。ただし于正は制作には直接タッチしてません。ヒロイン魚在藻は、蘇州博物館と提携する伝統工芸のドキュメンタリー番組の制作会社に編導として就職。金銀細工やつづれ織りなど、毎回いろんな文物が取り上げられます。実在の修復職人による解説コーナーもあり。シリーズごとに李一桐など、過去に于正ドラマに出演した大物俳優が友情出演。過去の回想などで古装のシーンもあります。『後浪』ほどの勢いはありませんが、切り口が新鮮。

今月は古装や武侠も多少絡むとはいえ、現代物を見てます。ほんでどっちも「伝承」がテーマなんですよね。
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2023年5月に読んだ本

2023年06月01日 | 読書メーター
SNSで学ぶ 推し活はかどる中国語SNSで学ぶ 推し活はかどる中国語感想
二文字の言葉を一文字に集約したり名詞を動詞化したりなど、文言文で古くから存在する用法が見られるのは面白い。ただ、中国ドラマで吹き替えがなされる理由のひとつとして俳優の演技力不足を挙げるなど、コラムで真偽不明の情報も盛り込まれているので、コラム等の内容については尽くは信用しない方がいいだろう。活字が緑色だったり、ピンインや「カルチャー深堀り」の部分の活字が小さすぎたりと老眼持ちにやさしくない仕様なのも残念。
読了日:05月01日 著者:はちこ

神話学入門 (ちくま学芸文庫)神話学入門 (ちくま学芸文庫)感想
批判も含めて古典的な学説からしっかり解説した本。民族学からのアプローチを中心にしている。地名など事物起源神話には往々してその後に真の神話、すなわち真の意図があるという指摘や、死者の国の話が人類の誕生の話の基礎になるなどの、フロベニウスのひっくり返しの法則が面白い。
読了日:05月03日 著者:大林 太良

インドの正体-「未来の大国」の虚と実 (中公新書ラクレ 793)インドの正体-「未来の大国」の虚と実 (中公新書ラクレ 793)感想
「世界最大の民主主義国」と自画自賛しながら、自由民主主義の国としては疑問符が持たれる政治の実態、外交ではアメリカにもロシア、中国にも肩入れしない「どっちも」主義を取っていること、敵対関係と見られてきた中国とも「グローバル・サウス」の国として協力しあう局面も存在すること、 南アジアの超大国でありながら同地域の国々からは嫌われ、在外インド系移民からも印象が悪いことなど、インドの実相を描き出す。本書を読む限りはインドは中国と共通点の多い「もうひとつの中国」に見えてくるが……
読了日:05月05日 著者:伊藤 融

つくられたエミシ (市民の考古学)つくられたエミシ (市民の考古学)感想
エミシとは中国との外交の都合上、古代国家によって創られた文献上の存在であり、当時東北に住んでいたのは、日本国行きからの移住者であり、エミシの征討とは屯田兵による開拓や、移住者との私的交易を記録の上でカモフラージュしたものであったということを、文献史学、考古学、地名・言語の分布など多様なアプローチによって論証する。著者は考古学者ということだが、文献の見方にも大きな問題はなさそうである。ただカモフラージュ云々については具体例を交えてもう少し詳しく議論してほしかったが……
読了日:05月06日 著者:松本 建速

男社会をぶっとばせ! 反学校文化を生きた女子高生たち男社会をぶっとばせ! 反学校文化を生きた女子高生たち感想
「底辺」とされる、1990年代半ば頃の公立女子高生の等身大の姿とその後の人生を、当時同校に勤務した女性教員の目から描く。傍目には荒れているように見えても、自由な校風の女子高が、本書に言う所の「女版野郎ども」にとって安心出来る場になっており、後々振り返ると楽しい学校生活だったと思えるというのは、色々示唆的である。個人的な経験から、あるいは「底辺校」とされる男子校や夜間定時制高校なんかも、男女問わず同じような機能を果たしている所があるのではないかと思う。
読了日:05月09日 著者:梶原 公子

戦後教育史-貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題まで (中公新書 2747)戦後教育史-貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題まで (中公新書 2747)感想
戦後、子どもの人権を大切にするという所から出発したはずの初等・中等教育が次第に財界の意向を汲むようになっていき、更に90年代以降は国や右派勢力の意向が反映されるようになり、新自由主義の影響もあって管理教育というよりは国家による統制が進んでいくといった戦後教育の展開をまとめている。特に学校、教師が学力テストの成績を求める所から普通教育からの排除が進められていく障害児の扱いに注目している。本書の最後に取り上げられている大空小学校の運動が大阪で展開されているというのは、昨今の政治情勢を踏まえると示唆的である。
読了日:05月10日 著者:小国 喜弘

中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史 (講談社選書メチエ)中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史 (講談社選書メチエ)感想
拓跋氏は果たして鮮卑かという問題、代と魏の国号の併用、孝文帝の漢化政策の実相、そして隋唐での胡漢融合の状況などが面白い。北魏史としては素直に時代順に話を進めている分、窪添慶文『北魏史』より取っつきがよい。しかし胡漢融合の結果としていつしか胡俗が漢俗となっていくのを見ると、本書の序盤で言及されている遊牧民の多様性というのは、彼らと対比される漢人にも多分に存在したものではないかと思う。
読了日:05月14日 著者:松下 憲一

増補 文明史のなかの明治憲法 ――この国のかたちと西洋体験 (ちくま学芸文庫 タ-59-1)増補 文明史のなかの明治憲法 ――この国のかたちと西洋体験 (ちくま学芸文庫 タ-59-1)感想
岩倉使節団の西洋体験から憲法制定、諸外国による憲法の評価、そして補章による立憲政治まで。しかし「憲法は国民精神を代表すべきである」という当時のドイツで支持されていたらしい発想によるならば、民間で数多編纂された私擬憲法を無視する形で制定された明治憲法は、制定の過程で大きな問題があったと言えるのではないだろうか?あるいは補章で仄めかされているがごとく、明治憲法は日本国憲法のように民間の私擬憲法を取り込んだものだったのだろうか?
読了日:05月15日 著者:瀧井 一博

土偶を読むを読む土偶を読むを読む感想
『土偶を読む』自体は未読。該書への多方面からの批判を通じて、土偶、ひいては縄文時代、考古学自体の面白さと現状を伝えてくれる良い本となっている。トンデモ本に対すると学会のスタンスと似ているが、学知(それも小難しくない)を基本としている点でそちらより実りが多いという印象。他の分野での同様の問題に「専門家」がどう立ち向かっていくべきかを考える良い手がかりになりそう。
読了日:05月18日 著者:望月 昭秀,小久保拓也,山田 康弘,佐々木 由香,山科 哲,白鳥兄弟,松井 実,金子 昭彦,吉田 泰幸,菅 豊

牧野富太郎の植物学 (NHK出版新書 696)牧野富太郎の植物学 (NHK出版新書 696)感想
牧野富太郎の業績もさることながら、日本の植物分類学のあゆみ、ひいては植物分類学自体の良い入門書となっている。牧野の業績については単なる紹介に留まらず、標本の整理をしなかったなどの負の面や、数々の伝説の検証・訂正も行っている。後半生は一般への教育普及活動に力を入れたということで、このあたりは白川静の生涯と似通っているように思う。
読了日:05月21日 著者:田中 伸幸

今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる (講談社現代新書)今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる (講談社現代新書)感想
宮本常一の業績の概略について一通りまとめつつ、離島振興法との関わり、女性の生涯への注目、絵巻物への民俗学的アプローチ、写真撮影へのこだわりなど、短い紙幅の中でも通常あまり注目されない(と思う)ポイントにも触れているのが特徴ということになるのではないかと思う。
読了日:05月22日 著者:畑中 章宏

「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史 (講談社現代新書)「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史 (講談社現代新書)感想
本書の内容を要約すると、神話を軸として見る戦前の国家と思想ということになるだろうか。そしてもうひとつの軸が「上からの支配」に対する「下からの参加」である。これはナチス・ドイツや文革と対比してもいい着眼点だろう。神武天皇のモデルを明治天皇とする動きを西欧の状況と結びつけて世界史的に理解しようとする点も面白い。ただ、個人的に最近物議を醸した乃木神社参拝の評価や「キャンセル史観」という言葉には疑問を感じたが。
読了日:05月24日 著者:辻田 真佐憲

鋼鉄紅女 (ハヤカワ文庫SF)鋼鉄紅女 (ハヤカワ文庫SF)感想
中華風エヴァンゲリオンといった趣のロボット物。作中のキャラクター名には出典があるが、それが設定や展開とうまくマッチしている。また現代社会のジェンダーに関する問題も作中にトレースされていて、それが物語の核心となっている。これが日本でアニメ化されるとしたら、特に受け手の側の嗜好や思想信条のゆえに、その核心部分が魔改造されることになるのではないか?(そして自由がないとされる中国では却って核心を魔改造することなく映像化できるかもしれない)
読了日:05月27日 著者:シーラン・ジェイ・ジャオ

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