輪タクの罠
前回その5の最後で述べたように、20元を支払って輪タクに乗り込み、恭王府まで連れて行ってもらうことにしたわけですが、さすがに輪タクは快適です。おまけに運転手の兄ちゃんが頗る愛想が良く、
運転手「お客さん、どこの国の人だい?」
私「日本人だけど」
運転手「日本人!?にしてはえらく漢語がうまいねえ。」
なんて調子のいいセリフがポンポンと飛び出します。更に車がビュンビュン走行する大通りでは、車と車のわずかな隙間をすり抜け、こちらを振り向いて「どうだい、今のテクニックは?」と言わんばかりに、ビッと親指を突き立てます。いや、そんなサービスはいいから、前を向いて安全運転してください(^^;)
そうこうしているうちに大通りから胡同に入り込み、恭王府らしき建物が見えてきました。ちなみに恭王府とはもともと乾隆帝の寵臣であった和珅の邸宅だったのが、乾隆帝の死後に官府に没収され、清末には咸豊帝の弟である恭親王奕訢の邸宅となったもので、その名にちなんで恭王府と呼ばれるようになり、現在は敷地内の庭園を見物できるようになっています。
しかし運転手の兄ちゃんは恭王府の前ではなく、その向かいにある小さな店の前で車を止め、「ここで恭王府のチケットが売ってるよ。」と言ってます。ホントにここでいいの?と思いながら中に入ると、店員の女性が出て来て「チケットは1人60元よ。」と申します。こりゃまたえらく高いなあと思いつつ60元を払いますと、その場にいた中国人観光客4~5人とともに向かいの恭王府の方に誘導されました。
恭王府の入り口には更に2~30人ほどの観光客の一団がたまっており、我々を誘導してきた女性は、赤いチャイナ服を着たガイドさんらしきお姉さんを指さし、「ここからはあの人に着いて行ってね」というようなことをおっしゃいます。
ここで私はハタと気付きました。そう、私が買わされた60元のチケットはガイド付きツアーのチケットだったのです。慌ててガイドブックをカバンから取り出してチェックしますと、「恭王府の入場料は20元。ガイド付きは60元」と書いてあります。また「ガイド付きツアーは途中で短いショーを見ることができ、お茶菓子もついてくる。」なんてことも書いてあります。そう言えばガイドのお姉さんの説明にも茶とか小吃といった単語が出て来たような気がします。これはちょっと楽しみです。
しかしあの輪タクの兄ちゃんはどういうつもりで私をツアー用のチケット売り場に案内したのでしょうか? 一瞬、あの兄ちゃんがチケット売り場に観光客を送り込んではバックマージンを貰っているんではないかと思いましたが、「庭園なんて1人で見て回ってもつまらないし、ガイド付きの方が楽しめていいよ。」と、兄ちゃんなりに気を利かせて案内してくれたに違いないと、ムリヤリ思い込むことにしました。
ガイド付きツアーの罠
ということで中国人観光客の一団に混ざって庭園を見物することになったわけですが、私の貧弱なヒアリング力ではガイドさんの解説も「乾隆帝」「1808年」といった固有名詞や数字を断片的にしか聞き取れません(^^;)
そんな感じで庭園を半分ほど見て回ったところで、ホールのような建物に到着しました。どうやらここでショーとお茶菓子が我々を待ち受けているようです。周りの観光客も「いよいよだよー」と歓声をあげております。
ホールの中に入り、めいめい座席に着いていきますが、テーブルには既にお茶の葉を入れた湯飲みとお菓子が用意されています。係員が一通り湯飲みにお湯を注ぎ終わると、いよいよ正面の舞台で派手な音楽とともにショーの始まりです。数人の子供たちが出て来て、頭上で壺を回したり、椅子を積み重ねてその上で倒立したりといった雑技を披露し、技が決まるたびに我々観客は拍手喝采です。
ところがこの雑技が5分か10分ほどで幕引きとなってしまいました。まだお茶を二口三口しか飲んでおらず、お菓子に至っては口にしてもいないというのに、ガイドのお姉さんは「はーい、それでは外に出てくださーい」と我々観客を追い出しにかかり、係員が一斉にガチャガチャとお茶菓子の片付けに取りかかっています。周りの観光客も「何だ、もう終わりかよ」とブーブー文句を言ってます。
何だか狐につままれたような気分で庭園巡りが再開されました。このガイドツアーの終着駅はお土産売り場です。ガイドのお姉さんが売り場のお土産を一品一品宣伝していきますが、そうやって宣伝された品物の中に上下2冊セットの書籍がありました。『和珅秘伝』という歴史小説です。おそらくこの恭王府がもともと和珅の邸宅だった関係でここで売られているのでしょう。
ふと横を見ると、その『和珅秘伝』のポスターが貼り付けてあり、「乾隆帝の寵愛をよいことに専権を振るい、蓄財に励む貪官・和珅。彼を中心に爛熟した宮廷生活が展開される」みたいな宣伝文句が書かれています。
この本をおっさんが買って、友人らしき人に「この本で貪官の生活ぶりを勉強するんだ」みたいなことを言っているのは良いとして、小学生ぐらいの女の子がお母さんに買ってもらってるのはどういうことでしょう(^^;) 将来玉の輿に乗ってこの本に書かれているような贅沢なくらしをしたいということでしょうか。
繰り返される過ち
さて、恭王府を後にした私は付近にある郭沫若の故居に向かいますが、ここが既に4時半に閉館となっておりました。時は既に夕方5時前です。恭王府より先にこっちを回るべきだったと軽く後悔した後、歩いて前海に向かいます。前海と後海の周辺には食べ物屋が集まっているということなので、今晩はここで夕食です。
何を食べようかと迷いましたが、北京に来てからまだ餃子を食べてません。ふと横を見ると、まさに水餃子の写真を出している店があったので、その店に入って水餃子と緑茶を注文しました。
で、料理が運ばれてくると、私は昼食の時と同じ過ちをしてしまったことに気が付いたのです。そう、大きな皿に山盛りの水餃子が出て来てしまったのです…… 「まあ、うっかり他の料理も頼まなかったことが不幸中の幸いだな」と自分を慰めながら、このぐらいなら残してもオーケーだろうというラインまで何とか餃子を平らげました。
夕食の後はタクシーで宿に引き返します。これで長かった3日目の旅程は終わりですが、明日はいよいよ最終日です。
(その7に続きます)
そう言えば恭王府は行ったような行かないような…。写真禁止の所で写真撮りまくって怒られたところだっけなぁ…。郭沫若故居にしろ、宋慶齡故居にしろ、あんまり興味がなくて行ってないんですよねぇ…。
はじめ「14元!」と言うておいて、
降りる時に「40元!」という詐欺でした(笑
前からそういう詐欺が有る、と聞いていたので、
冷静に対処できたようです。
しかし、運転の兄ちゃんの調子の良さは、わたしも同じでした(^^;
運ちゃんに直接ポラれたわけじゃないので、
私のなんかはまだマシな例なのかもしれませんが……