博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『木簡から古代がみえる』

2010年07月16日 | 日本史書籍
こんな所で業務連絡を書くのもどうかと思いますが、明日の阪中哲は残念ながら所用により参加できません(^^;) 遠方から来られる(かもしれない)先輩と久々にお会いしたかったのですが……

木簡学会編『木簡から古代がみえる』(岩波新書、2010年6月)

木簡学会所属の研究者たちによる木簡の入門書。しかし個人的には木簡の内容より木簡自体の保存処理の話の方が面白かったのですが(^^;)

曰く、出土したばかりの木簡はタプタプに水を含んでいて高野豆腐かこんにゃくみたいな状態になっております。そこから注意深く泥を落としていって、その後ホウ砂・ホウ酸水溶液、あるいはホルマリンに漬けて保管。状態が安定してきたらフリーズドライなどの科学的保存処理を施して乾燥させるとのこと。このあたりは中国の竹簡と似たり寄ったりだなあと。上海博物館蔵戦国楚簡なんかも最初はやはり水気を含んでこんにゃくみたいな状態で、最終的にフリーズドライで乾燥させたとのことですし。

で、保存処理と同時に木簡の読解も進めて行くわけですが、これは複数人で行うのが理想的で、「正解」は多くの読み手の瞬時の同意を得るものであり、複数の読み手の同意が得られなかったり、複数の読みが乱立して収拾がつかないような場合は「正解」からほど遠いとのこと。出土文字資料の読解なんてどれもそんなもんなんですなあ。

本書の最後には、実は出土した木簡の多くが排便の後にお尻をぬぐうヘラとして再利用されたもので、便槽や側溝など充分に水気がある所に廃棄されたからこそ現代まで腐食せずに残ったのだという衝撃的な説が語られます。

それにしても多くの研究者が協力してこういう本が出せるという状況が羨ましいです。中国の出土文字資料でこういう本を出そうとすると、各研究者がどれだけの恩讐を乗り越えなければならんのかと思うと目眩がしてきます(-_-;)

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