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博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『イングランド王国前史』

2010年11月14日 | 世界史書籍
桜井俊彰『イングランド王国前史 アングロサクソン七王国物語』(吉川弘文館歴史文化ライブラリー、2010年11月)

日本語の本としてはかなり珍しいイギリス七王国(ヘプターキー)の通史本ということで購入。『イングランド人民の教会史』『アングロサクソン年代記』を主要な史料として(著者によると日本の『古事記』『日本書紀』とそれぞれ性質・関係が似通っているということですが)、七王国のうちケント・イーストアングリア・ノーサンブリア・マーシア・ウェセックスの5カ国の主要な王の事績を解説しています。

それにしてもウェセックスのエグバート(エグベルト)とアルフレッド大王ぐらいしか知った名前が出て来ないうえ、エゼルベルト・エゼルウルフ・エゼルフリッド・エアドバルト・レドワルド・オスワルド等々と、出て来る人名が耳慣れない&実に紛らわしい…… 巻末に各王家の系図とかが付いていれば良かったと思うのですが。ちなみにこれらの名前が元来のアングロサクソンのネーミングで、チャールズとかヘンリーとかウィリアム等々はフランス由来のネーミングとのこと。本書でも出て来るエドウィンとかエドワードはアングロサクソン名がその後も継承された例らしい。

また『イングランド人民の教会史』『アングロサクソン年代記』において各国の王の中から7~8人の覇王(ブレトワルダ)が設定されているということですが、このあたりは中国の春秋・戦国時代を想起させますね。仇敵の魔の手から逃れるべく各国に亡命して渡り歩き、最後には覇王となったノーサンブリア王のエドウィンの生涯はまんま晋の文公という感じがします。

あと、七王国の世界観を取り入れたファンタジー作品というのも探せば意外とあるんですね。マーティンの『氷と炎の歌』はイギリスのバラ戦争をモチーフとしたファンタジー作品ということになってますが、そっちよりも七王国時代の方が雰囲気が近いように思います。それと光栄が昔出したシミュレーション『ロイヤルブラッド』は、登場キャラクターの名前からしてモロ七王国です(^^;) エセルレッドとかウルフヘルとか、本書に見えるような名前がぞろぞろと出て来ます。


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3 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (Archer)
2010-11-14 23:54:10
>フランス由来のネーミング
佐藤賢一はその著書で、獅子心王を「リシャール1世」、その父を「アンリ2世」、弟の欠地王を「ジャン」と表記しますね。

結局、「英仏百年戦争」と言ったところで、突き詰めればフランス人同士が争っているにすぎませんし^^;
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先進国列強の歴史 (臨夏)
2010-11-14 23:55:39
へプターキーとは、たしかにめずらしいですね!
エグベルト、かすかに思い出しましたw

日本は、欧米から近代文明を取り入れたのに、
「歴史」は近代文明ではないからか、
欧米の常識的な歴史があまり知られてないようですね。

イギリスみたいな超有名大国でも、
わたしアーサー王すら、周りとの関係がわかりませんよ。

このような「近代の盲点」を突いていけば、
結構研究になるかも。

「常識」というものは、
近代どころかあらゆるものの前提・土台ですもの!

高校では、結構西洋史も習うのに、
大学になって「西洋史」を取る人は少ないですね。
なぜかやはり、皆中国史に行くようです、

てこの掲示板の面々のローカル認識かも(笑
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Unknown (さとうしん)
2010-11-15 19:46:26
>Archerさま
佐藤賢一の著書では「自分達はイギリス人」という意識は百年戦争後にようやく出て来たものだという結論でしたっけ? このあたりまでブリテンはまだまだヨーロッパの辺境というイメージですよね。

>川魚さま
>わたしアーサー王すら、周りとの関係がわかりませんよ。

アーサー王伝説はほとんど架空の世界みたいですよ。本書によると、アーサー王のモデルの1人はアンブロシウス・アウレリアヌスという人物であるということですが、モロローマ名ですな(^^;)
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