VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

桃花徒然 その90

2023-02-04 22:50:10 | 永遠の桃花

枕上書 番外編より

  帝君と鳳九の結婚式の最中

いきなり 敵軍が結界を解いて攻め寄せて来た。

 

大河の向こう岸に整列した三族の連合軍は

ざっと見積もっても百万以上いる。

そして、岸辺に陣取った先鋒隊は 数千の

獰猛な妖獣を従えていた。

獣たちの彷徨が  天を震わせる。

王台の下  天族の兵士たちはすぐさま反応し、

体制を整えた。

 

鳳九は急いで帝君の手を取ると 

高台から降りようとしたが 帝君は落ち着き払って

「怖がらなくて良い」というと  蒼何剣を手に取った。

刃に手を滑らせると  赤金血が刃を伝う。

時を同じくして 敵軍は  進軍のサインを出し

獣たちが  一斉に河を渡り  こちらへ向かってくる。

その時、帝君が手を振るや否や  蒼何剣は千年の巨木

程に肥大し、それが瞬時に  千本の剣に変わると

岸に整列して  堅固な結界を築いた。

そして

先陣を切って突撃して来た獣の幾匹かが  剣の刃に

触れたとみえた途端、赤金血を吸った刃に無惨に

切り刻まれてしまった。

 

鳳九は ただただ圧倒されて その堅固な結界を

見ていた。

次々と突進して来た獣たちは もれなく刃に

かかって  結界の境界はあっという間に

血の海に変わり  累々と屍が連なっていった。

 

鳴蛇に乗って中空に浮いていたB上神は

その光景に怒り狂って、ありったけの力で

法術を繰り出したが  結界はびくともしなかった。

それでも 鳳九は気が気ではない。しかし

帝君は  まるで何事もなかったかのように

再び  昼度樹の杖を掴んだ。

「!あ・・貴方は  まだ結婚式を続けるつもりなの?」

帝君は落ち着き払って心配している鳳九をなぐさめ

「怖がらなくても良い。十五分もあれば 全ての儀礼を

円満に終わらせる事ができる」

結界に目をやってから

「今回は  途中で問題が起きたりしないから」

鳳九「だ・・だけど・・」

 

帝君は  冷たくなった鳳九の手を握り  安心させる

ように「怖がらなくて良い。私がいる」と言った。

「私が  大丈夫 と言うのだから  大丈夫だ」

 

鳳九の手が ほんのり温かくなったところで

帝君は兵士たちの方に向きなおると

昼度樹の杖を高く掲げて 一振りした。

杖の先から  金色の光が飛び出して 瞬時に

戦場を覆いつくす。

そしてその光が散ってしまう前に

「整列!」という号令のもと  四方の天空から

猛極獣に跨った騎兵隊が姿を現した。

いづれも鉄の甲冑に身を固め、中空に跪く姿勢を

とって 神王に服従の礼を尽くす。

地上では 大音声を上げ  兵士たちが八つの陣営に

分かれて 乾元の法陣を組んだ。

戦旗が風にはためく。戦いの準備は整った。

 

帝君は 何事もなかったかのように整然と神樹に

向かい  儀式の続きをおこなった。

「白家の鳳九  聡明にして明るく、天から授かった雅あり。

深く我が心を捉えたる。  夫婦となりて 今生を共に生きる

事を深く決意し  結んだ手を決して離さないと誓う」

 

誓いの言葉が終わると、天樹から 柔らかな七色の光が

発せられた。繁った葉の間から神冠が現れる。

数羽の美しい小鳥たちが  天樹の花で編まれた神冠を

くわえると  ゆっくりと帝君の前に降りて来た。

帝君は  神冠を受け取ると

「昼度樹の趣味は 悪くないようだ。この神冠は

なかなか良く出来ている。そうは思わないか?」

と言った。

このような状況で冗談を言える帝君に敬服しながらも

目は  華美で端麗な神冠に注がれ  鳳九は胸が一杯に

なって  言葉を失った。

帝君は 鳳九に近づき  神冠をかぶせた。

神冠が降りた事で 天樹が 神后を認めた事になる。

兵士たちは 一斉に兵器を突き出して敬意を表した。

 

帝君は 鳳九の背後に立って彼女の手を 昼度樹の杖に

添え 「彼らの神后になったなら、この 最後の戦争

の始まりを  貴女が指揮する事にしよう」と言った。

そうして、杖を 大きく右に振った。

 

進軍ラッパが鳴り響き 蒼何剣の結界が解除されるや

「進攻!!」という叫びをあげて 兵士たちは戦いを

開始した。

 

 


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