鈴木恵理子の幸運

2017年03月29日 23時57分54秒 | 創作欄
鈴木恵理子は制癌剤の内服薬を朝食後と夕食後の2回、2錠飲み続けていた。
吐き気がして気分が滅入る。
味覚障害であろう、美味しいはずの日々の食事に違和感がある。
さらに、倦怠感で横になると、起き上がるのが億劫となる。
リクライニングのベッドでテレビをみながらウトウトしていた。
競輪場へ行けば気分は前向きになるだろうと思い、車で家を出た。
ハンドルを握ると、点滴の針を刺していた腕の周辺が痛みだした。
点滴をして5日が過ぎていたのに、これまでにないようなうずくような痛みであった。
病院に入院していた時にも毎日、点滴を受けていたが、痛みはほとんど感じることはなかった。
さらに、指の痺れもあった。
道すがら運転が危ないと思ったが、競輪場の駐車場に何とか到着すると、偶然、大島和也が車から降りるところであった。
恵理子の赤い車に和也が気づき近付いてきた。
「元気そうだね。顔色もいい」彼の人懐こい笑顔に安堵する。
「まだ、寒いのね」外の風が指を痺れさせる。
捨てられた新聞や車券が風に舞う。
風に当たって頬も痺れる感じがして、恵理子は灰色のネット帽で頬を覆った。
これも制癌剤の副作用である。
「これ、逢ったら渡そうと思って」和也は茶系のカシミヤのブレザーから、白い封筒を出した。
「快気祝いと言いたいが、お礼だ」
「お礼?」恵理子は封筒を手にした。
「先日、電話で話したけど、6-2で儲けさせてもらったからね」
「ああ、あの時の。私がツキ女になった」恵理子は微笑んだ。
「何時までも、ツキ女でいてもらいたいね」和也がウインクをする。
恵理子の病院に同行した日、彼女は緑のセーターに黒地のロングスカートを履いていた。
そこで、半分、運を試すために、6-2の車券を3000円買ったら、27500円の配当になったのだ。
穴は予想をして取れるものではない。
恵理子は特別観覧席で封筒を確認したら、10万円も入っていた。
「こんなに、貰えないわ」と恵理子は封筒をテーブルに置く。
「制癌剤は高いのだろう。治療の足しにしてくれ。遠慮はいらない」和也は席を立ち、オッズを確認に行く。
恵理子はスポーツ新聞を濃紺の手提げバックから取り出した。
後半の9、10、11レースを楽しむ。
和也と同じように、恵理子は午後2時30分過ぎに、競輪場へ姿を見せていた。
まるで啓示を受けたように、恵理子は病院に入院していた時の病室の番号を脳裏に浮かべた。
487号室であった。
以前、自宅の電話番号で大穴を的中したことがあった。
4点ボックス車券なので24点。
100円なら2400円買うことになる。
5点ボックス車券なら6000円であるが、6000円は買えない。
後半の3レースを5点ボックス車券を買うと1万8000円も買うことになる。
487の3点ボックス車券なら600円、遊びのつもりで買える。
思い付くが実行できないことが、過去に何度もあった。
「私って、ダメね」と落ち込むのである。
この日は、貫いてみたくなる。
ダメなら、次の機会もあると思い直した。
「遊び心も大切かも」と恵理子は目論む。
和也には内緒で、487のボックス車券を、3レース分あらかじめ買って置おいた。
「何で今日は、本命サイドで決まるんだ」車券を外して、和也は苛立っていた。
穴が買いの和也にはレースの流れが悪い方向である。
「レースが本命でも、買うべき車券は買わないとな」と競輪仲間の真島公男が、1000円の的中車券を誇示するように見せる。
850円の3連単車券であった。
「確かにゼロは、どこまでもゼロである」と和也は気を取り直した。
そして11レースは、本命の2-5-9ラインが不発で、筋違いの487の車券となる。
配当を告げる放送とテレビ画面に大きなどよめきが起こる。
恵理子は、唖然としていた。
100円の487の3連単車券が、何と98万7500円となったのだ。
「ええ!487の車券!買っていたの?!信じられないな」和也も唖然とした。
彼自身3連単で一度も取ったことがない大穴車券であったのだ。
恵理子が「これ取って置いてね」と20万円を手にしたが、「これからの治療費に充てるんだ」と和也は受け取らなかった。
二人は取手駅近くの寿司屋へ寄った。
さらに、和也は初めて恵理子の柏のカラオケスナックへ顔を出した。
学習塾の講師をしている和也は、この日は休日であった。
恵理子は、和也が得体の知れない遊び人と思っていたが、意外にも学習塾の講師であったのだ。
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今日、懸命に書けば

2017年03月29日 13時05分47秒 | 社会・文化・政治・経済
不安や臆病といった後ろ向きの気持ち。
それとは逆の、確信や負けじ魂―これらは共に心の中にある。
<もはや、これまでか>とい難局を乗り切る力は、外から借りるこのではなく、自身の心の中から取り出すものである。
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「さよなら」がくれる力
戦後の出版界で、週刊誌連載のエッセイをまとめた本がこれだけ長く売れ続けることは無いそうだ。
シリーズ累計165万部を超えた。

現代の人は、間違いなく前の時代の人よりも大きな不安を抱えています。
高齢社会で別離も増えるでしょう。
なのに、どう生きればいいかわからない。
そんなことも関係して「俺はこうしてるよ」という呼び掛けに共感を示してくれているのかもしれません。
通底しているのは、人生の別離の連続だということです。
別離が与える悲しみや苦しみが人生には必ずある。
けれども、人は別離から学ぶことができます。
悲しみや苦しさを経験した人の中には別離した人が生き続けていて、残された者に「さあ、今日から」と懸命に生きる力を与えてくれている。
だから「不運と思うん」「追いかけるな」。
そう呼び掛けているのです。
別離の経験を通して他人のために生きる力が備わるでしょう。
今日、懸命に書けば、今まで書けなかったものが書けるかもしれない。
昨日までできなかったことに今日は出合えるかもしれない。
自分に、そう言い聞かせるのです。
人間は本来、優しく弱い。
そして、楽をしたい。
それが私の考え方です。
ところが、世間は優しくないし、弱くもありません。
楽もさせてくれない。
だから皆、揺さぶられて戸惑う。
不安になる。
けれども、人生は捨てたものではないよ。
あなた次第で、いくらでも変えられるんだ、と私は伝え続けたいんです。
人は変わる。
人間の可能性は本人が考えているよりも大きい、と。
私は「言葉の力」も信じています。
作家・伊集院静さん
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失敗への対処法

2017年03月29日 12時27分39秒 | 社会・文化・政治・経済
失敗は誰も犯しますが、失敗への対処法が勝者と負者を分けてしまいます。
「失敗したら是正する。被害を最小限に抑えために何をすべきかを考える、そして失敗を引きずらない」のが多くの成功者の失敗に対処する秘訣です。
二度と同じ失敗を繰り返さないように学び、失敗のダメージを少なくするように気持ちを切り替える。
失敗を引きずらず、成功を淡々と伝えていれば周りの評価も高くなり自信も付きます。
成功している男性の多くは失敗を隠しているのではなく気に留めず、忘れています。
失敗を恐れない、失敗したらどう立ち上げるかを学ぶ必要があります。
昭和女子大学総長・坂東眞理子さん
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やむにやまれぬ熱き思い

2017年03月29日 10時49分44秒 | 社会・文化・政治・経済
自民党は一強
だが、公明党の存在価値は昔も今も変わらないだろう。
「公害に最も大きい関心を寄せ、熱心に勉強し、実績をあげている政党は、どの革新政党よりも公明党」作家・有吉佐和子さん
小説「複合汚染」に記している。

「実績の背景にある、やむにやまれぬ熱き思い」

一部マスコミが偏った報道で国民の不安を煽る中、連立政権のブレーキ役となっている。
ドクターヘリの導入も公明党の実績の一つ。
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「強いものに頼りたい」

2017年03月29日 10時33分31秒 | 社会・文化・政治・経済
ネット・SNSはバカのための拡声器
ビートたけし

いびつな保護主義や排外主義が広がるのは、格差を「見える化」した情報化も一因ではにか。
インターネットで、誰もが自らの経済的位置が「分かる」と、格差で不安や妬みがあおられる。
一方、将来への不安で「強いものに頼りたい」という願望もある。ジャーナリスト・森健さん

「インターネットで理想的な民主主義がうまれる」との主張も広がりましたが、今思えば、なんと牧歌的な・・・。
インターネット上で他者を激しく攻撃する人は、安定した中高年男性が多いようです。
北海道大学教授・遠藤乾(けん)さん

日本を「日本国サービス株式会社」だと考えると分かりやすい。
高齢者に年間20兆円が社会保障給付といてサービス配当される。
個人貯蓄854兆円の6割弱を60歳以上が保有しているから、彼らは事実上4%弱の配当を受け取っている。
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3月28日(火)のつぶやき

2017年03月29日 02時11分32秒 | 医科・歯科・介護
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