明日に向けて

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明日に向けて(910)アメリカのメディアがあなたに言わないこと(岡真理さん翻訳)

2014年08月04日 13時00分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20140804 13:00 トルコ・シノップ時間)

以下、岡真理さんが7月30日に連続投稿された記事を転載します。
 
*****
 
みなさま
 
本日、これから3本の投稿をいたします(連投、お許しください)。

まず、このメールで、「アメリカのメディアが、パレスチナ/イスラエルについて、あなたに言わない9つのこと」をご紹介します。そのあと、「ハマースを理解する」と「ガザにおける集団懲罰」の2本をお送りする予定です。

「ハマースなんか理解したくない」と思われるかもしれませんが、読んでみてください。内容的にそれぞれ、密接な関連がありますので、順番に読んでいただければ幸いです。
企業メディアが必死になって歪め、私たちの目から隠蔽しようとしている、問題の本当の構図がどのようなものであるのか、見えてきます。

「アメリカのメディアが…」は題名どおり、アメリカの主流メディアが決して語ろうとしない9つの論点について紹介しています。(日本の主流メディアの報道とも、だいぶ重なるように思います。)

その9つの論点を先にご紹介します。

1.イスラエルは民間人の死を避けようと思えば避けることができる。
2.ユダヤ人の3人の少年たちは、誘拐された直後に殺されていた。
3.ガザは実質的に、野外監獄である。
4.アイアン・ドーム(イスラエルの迎撃システム)はイスラエルを護っていない。
5.イスラエルは2000年以来、1500人以上の子どもを殺している。
6.ハマースは二国家案を受け入れている。
7.ハマースはイスラエルに挑発的攻撃を受けてきた。
8.ハマースとファタハの統一は良いことである。
9.イスラエルは戦略兵器ではない。

6の「ハマースが二国家案」を受け入れている」の「二国家案」とは、1967年の境界線を国境にして、西岸とガザにパレスチナ国家を建設することをハマースが受け入れている、ということです。つまりオスロ合意におけるPLOと同じ立場だということです。
私たちはメディアによって、「イスラエルの生存権を認めないハマス」という言葉をこれまで耳にタコができるくらい聞かされているので、にわかには信じられないことかもしれません。
これについては、次の「ハマースを理解する」で、さらに詳しく説明されていますので、ぜひ、こちらもお読みください。

7の「ハマースはイスラエルに挑発攻撃を受けてきた」ですが、日本の主流メディアの報道だけ聞いていると、ハマースがイスラエルをさかんにロケット弾で攻撃するので、イスラエルの堪忍袋の緒が切れて、ついに自衛のための戦争を始めたかのように思ってしまいます。
でも、2012年11月の攻撃の停戦から今回の戦争開始まで、停戦合意を破り攻撃しているのは、むしろ圧倒的にイスラエル側であるという事実も、アメリカ同様、日本のメディアもぜんぜん報じていません。
これについては、たいへん分かりやすく図像で説明したものがありますので、こちらをご覧ください。
Infographic: Who violates ceasefires more, Israelis or Palestinians?
Ali Abunimah / Electronic Intifada / 07/24/2014 

http://electronicintifada.net/blogs/ali-abunimah/infographic-who-violates-ceas
efires-more-israelis-or-palestinians

さて、本稿の著者、アラステア・スローン(Alastair Sloan)は、不正、抑圧、人権をテーマとするイギリスのジャーナリス、作家。ガーディアン紙、アル=ジャジーラ等に執筆しています。著者のHPはこちら→ http://unequalmeasures.com/published/
なお、英語原文では、出典等、すべてリンクが張られています。出典や論拠を知りたい方は、オリジナルでご確認ください。

■■ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
http://mondoweiss.net/2014/07/american-telling-israelpalestine.html

アメリカのメディアがパレスチナ/イスラエルについて、あなたに語らない9つのこと

アラステア・スローン
Mondoweiss / 2014年7月29日

7月8日に始まったガザにおけるイスラエルの「プロテクティヴ・エッジ(保護の刃)作戦」全体を通して、合衆国のメディアは、選択的な報道や、歪んだ意見、イスラエルの立場を暗に支持する嘘のバランスを利用して、パレスチナ人に対しバイアスがかかっていることが日増しに明らかになっている。ザ・デイリー・ショーの司会、ジョン・スチュアートは最近、メディアはパレスチナ人よりもイスラエル人の生命により重きを置いていると批判した。

これは、今に始まった問題ではない。メディアのバイアスをモニターしている監視団体、フェアー(Fair)は2001年、NPR(国営公共ラジオ)が、イスラエルの子どもの死であれば、その89%を報道するのに対し、パレスチナ人の子どもの死は20%しか報じていないと発表した。2年後、学者のマット・ヴァイザーが「国際プレス・政治ジャーナル」誌に発表した調査報告によれば、ニューヨークタイムズは、イスラエル人の死を人格をもった人間の死として報道している一方、パレスチナ人の死はほぼ無視しており、また、情報も圧倒的にイスラエル側に依拠している。2012年11月の8日間のガザ攻撃のあいだ、CNNがインタビューしたイスラエル軍将校の数は、パレスチナ人の2倍に及んだ。

今日のガザ危機に話を進めると、バイアスは依然、存在している

最近の出来事についてのブルームバーグ・ニュースを見てみよう。「ハマースが停戦案を拒否したあと、イスラエルはガザの爆撃を再開」。ワシントン・ポスト「イスラエルは攻撃を停止、ハマースは停戦せず」。7月10日にワールドカップを観戦していた8人の若者がイスラエルのミサイルで殺されたことについて伝える記事の最初の見出しは、「ガザの浜辺のカフェにミサイル、ワールドカップ観戦の常連客と遭遇」だった。ニューヨークタイムズのお粗末な編集ぶりに感謝したい。

これらの見出しはすべて最終的に変更されたものだが、合衆国メディアにおいてパレスチナ人の苦しみがいかにして自動的に矮小化されるかをいくつかの点で象徴している。ダニー・シェサーが今日の危機について書いたエッセイ「イスラエルの広報はガザの大量殺戮をいかに売るか」は一読をお奨めするが、その中で、シェサーが言っているように、まさに「24時間延々と」。

では、合衆国のメディアは、アメリカの視聴者の目から何を隠しているのか?合衆国のニュースで、イスラエルについて、あたなが決して耳にしない9つの事実がある。

その1.イスラエルは民間人の死を防ぐことができる。

過去12日間のあいだ、イスラエルの攻撃は、1000人以上を殺害した。大半が民間人である。
イスラエルは、[これらパレスチナ人民間人の]死は、ハマースが、普通のパレスチナ人を人間の盾に利用している結果であると言い、おぞましい死者数もただ、肩を竦められるのが落ちだった。
2009年に遡ると、キャスト・レッド作戦のあいだ、国連総会の議長、ミゲル・デスコト・ブロックマンは、イスラエルはガザで民間人を標的にしており、国際法を侵犯しているとイスラエルを非難した。
ブロックマンは、攻撃を、「無力な、身を守る術のない、閉じ込められた人々に対する戦争」と呼んだ。「ガザ攻撃に孕まれる国際法の侵犯はしっかりと記録されている」と彼は付け加え、集団懲罰、[攻撃対象と]釣り合わない法外な軍事力の行使、そして住宅やモスク、大学、学校など、民間施設を標的にした攻撃などを挙げた。

イスラエルはどうしても民間を狙って発砲しなければならない、というわけではない。イスラエルはわざわざ、選んでやっているのだ。イスラエルの爆撃シェルターの包括的ネットワークを考えれば、ハマースのロケットなど、いずれにせよ、大した威力はない。これまでイスラエルで殺された民間人は3人だけだ。
イスラエル軍による「多くの死傷者をもたらす違法な空爆の長い記録」に注目して、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長、サラ・レア・ホワイトソンは、「イスラエル国防軍のメンバーの自宅ならどれでも、軍事的な攻撃目標として合法であると主張してもイスラエルは決して受け入れたりはしないだろう」と述べている。
IDFのスポークスパースン、ピーター・ラーナーは、記者たちから直接、質問されたとき、住宅が、ロケット攻撃のコントロール司令部として使われているといういかなる証拠も提示することができなかった。

その2.3人のイスラエル人の少年たちは、誘拐された直後に殺された。

事件調査ジャーナリストのマックス・ブルーメンサールは最近、6月、西岸のヘブロンで誘拐され、行方不明中の3人の少年たちが、誘拐されたその直後にすでに殺されていたことをイスラエル政府は知っていた、ということを明らかにした。だが、この事実は、公にはされず、その代わりに、行方不明の少年たちを捜索することで、西岸に暴力的な弾圧が広がった。
ブルーメンサールが言うには、ネタニヤフ首相は、誘拐に対する怒りを利用して、その後に続いた侵略的な軍事攻撃を正当化する十分な支持を醸成したのだった。

その3.ガザは基本的には、野外監獄だということ。

ガザの経済封鎖は、集団懲罰の一形態であり、それは、監獄の中で生きるようなものだと住民たちは言っている。軍の検問所や、強大なIDFの存在、高い壁などによって、ガザ地区は見た目も監獄だが、ガザを「監獄」たらしめているもっとも残酷な要素は、イスラエルが課す封鎖のせいで経済的自由がないことである。
イスラエルは、ガザ地区との国境の検問所を完全に支配し、制海権、制空権を握り続けており、これにより物資と人間の移動が制約されている。イスラエルは、[ガザから]軍隊を撤退させたので、それにより、ガザは占領されてはいない、と主張するが、イスラエルは依然、税制をコントロールしている。

これらの規制の結果、住民の68%が1日、1ドル以下の生活を余儀なくされている。対照的に、イスラエル人の平均は、その85倍である。
その監獄の内部で、パレスチナ人は、イスラエルによって内的にも支配されているために、十分な医療も、教育も、仕事も手に入らない。土地や作物、医療施設、学校や大学にアクセスし、家族や友人に会うのにさえイスラエル当局の許可が必要だ。

その4.アイアン・ドームはロケットからイスラエルを護ってはいない。

アイアン・ドームは、「ゲーム・チェンジャー(ゲームの流れを変える者)」と称賛される防御システムで、上院は、ハマースがイスラエルに向けて発射するロケットを迎撃するために設計されたこの軍事プログラム支援用に3億5100万ドルの予算を認めたばかりだ[7月22日]。
だが、ディック・ダービン上院議員がこの防御システムについてどれだけまくしたてても、国のミサイル防御システムとしてそんなにいいものではないように思えるのだが。

マサチューセッツ工科大学の物理学者でミサイル防衛の専門家であるテオドール・ポストルは、迎撃率を5%と見積もっている。防衛関連企業ラファエルのもと社員、モルデハイ・シェフェル博士その他の研究者と共同で、ポストルのチームは、「迎撃」のようすを何十本もヴィデオ撮影して分析した。
彼らの判定は? [迎撃が]成功したように見える爆発の大半は、実際には、アイアン・ドーム側のミサイルの自己破壊だった。合衆国の納税者にぜひとも知らせてあげた方がいいのではないか。

その5.イスラエル軍は2000年以来、1500人以上のパレスチナ人の子どもたちを殺している。

この数字は、「プロテクティヴ・エッジ」作戦が猛威を振るうなか、上昇の一途をたどっている。2000年以来、およそ1500人ものパレスチナ人がイスラエルの保安軍に殺害された。13年間、3日に1人の割合で殺されているということだ。同じ期間中、パレスチナ人が殺したイスラエル人の子どもは132人。

その6.ハマースは、1967年の境界に基づく2国家を受け入れている。

いや、本当だ。悪名高い1988年のハマース憲章は、2006年、評議会選挙でのハマース勝利を受け、事実上、更新され、ハマースは1967年の境界線に基づいたパレスチナ国家を受け入れると認めている。
2006年、イスマーイール・ハニーエ[首相]は、ブッシュ大統領に手紙を書き、「我々は地域の安定と安全保障を心配しており、1967年の境界を国境としてパレスチナ国家を建設し、そして、長期にわたる停戦を申し出てもかまわない」と述べている。
ハマースは、謙虚以上のものを示しているが、イスラエルのネタニヤフ首相自身は、パレスチナ国家など決して受け入れるはしないと語っている。

7.ハマースはイスラエルに挑発されてきた。

私たちが右派のレトリックやフォックス・ニュースを信じるのだとすれば、ハマースが、ガザにおけるイスラエルの強力な軍事攻撃を挑発しているということになる。
下院議長、ジョン・ボーナーは最近、ハマースを「イスラエルに対し攻撃的で、いわれのない暴力行為」を行っている非難した。
エリック・カンター下院議員も同意見だ。「イスラエルに対するハマースの非道で、いわれのない戦争は止めねばならない。」ハマースの戦術が嫌悪すべきものであるにしても、彼らの行動は予想可能であり、挑発されてきたのは彼らの方だ。

イスラエルはガザが港や空港をもつことを許さず、ガザが生産するものの大半の輸出も許さない。パレスチナ人は自分たちの土地の3分の1で働くことができない。イスラエルが、安全保障のための緩衝地帯としているためだ。
残忍な経済封鎖のせいで、ガザの5歳以下のパレスチナ人の子どもたちの10%が栄養不良による成長不良となっている。2010年、セイヴ・ザ・チルドレンの調査によれば、パレスチナ人の子どもの3分の2と、母親の3分の1が、貧血を患っている。

デヴィド・キャメロン英国首相は、2010年に、「ガザは強制収容所であり続けるのを許されてはならない」と述べ、次のように言った、「ガザの人々は、野外監獄で、絶えざる攻撃と圧力のもとで生きている。」
監獄の反乱を是認するつもりはないが、こんな監獄なら看守は言うだろう、「反乱は起こる」と。

8.ハマースとファタハの統一は良いことである。

6月に遡って、対立していたハマースとファタハの統一政府が発足した。
合衆国は、武装組織であるハマースが[政府に]入ることに憂慮を示したが、ハマースは、新政府と協働していく準備があると語った。
イスラエルのネタニエフ首相は、ハマースも加わった新政府を承認しようとはしなかった。首相はこれを、「後退」と呼んだ。共和党上院議員のリンゼー・グラハムは[新政府発足の]ニュースに嫌悪を示した。

「これは、イスラエルとの本格的和平交渉に対する、パレスチナ自治政府による挑発的行為である。パレスチナ人は、オバマ政権に対し恐れも尊敬もほとんど抱いていないのだということを表している」
おそらくビビ[ネタニヤフ首相の愛称]は、友人のトニー・ブレアと話をしたらよいだろう。首相として、ブレアは、1988年、北アイルランドで「良き金曜日」合意(北アイルランド紛争終結協定)を立案した。

「トラブル」――30年に及ぶ北アイルランドにおける暴力的な紛争はこう呼ばれていた――は、650名の民間人の命を奪った。その大半は、アイルランド共和国軍(IRA)のテロリストの手によるものだった。だが、彼らはようやく政治に参入した。それは、歓迎すべきことだった。テロリストがテロに代わって対話を選ぶとき、それは、前進するサインである。ネタニヤフはまだ、それを受け入れる準備ができていないのだ。

9.イスラエルは戦略兵器ではない。

アメリカ人の半数近くが、イスラエルを同盟国として見なしている。
共和党上院議員、トレント・フランクは、イスラエルのもっとも雄弁な支援者の一人である。彼は、アメリカは「この地上で我々のもっとも貴重な同盟」を護るための、自由の武器庫であると誓っている。友情の腕輪を編みながら、フランクは、「イスラエルはここに永遠にいる」と語る。

1948年春、大統領執務室に立ちながら、合衆国の国務長官、ジョージ・マーシャルは建国されたばかりのイスラエル国家を承認するかどうかについてトルーマン大統領に助言した。彼の見解は、ユダヤ国家を支援することは、より広いムスリム世界との関係を損なうだろう、したがって、中東の石油に対するアメリカのアクセスを危険にさらすだろう。彼はまた、中東がより広範に不安定化することを警告した。
トルーマンはこの助言を聞き入れなかったが、マーシャルの予言は的中した。2013年のピュー研究所の報告によれば、イスラエルのユダヤ系市民の90%が合衆国に対し好意的だが、イスラエルのパレスチナ系市民では42%だ。

中東のいずこのムスリムもそうであるように、アメリカの評判はここでも地に落ちている。結果、オサーマ・ビン・ラーディンに率いられた卑劣なテロリスト集団が、(いろいろある不満の中でもとりわけ)アメリカのイスラエル支援に腹を立て、アメリカ人を殺害した。
アメリカ大使館や戦艦や民間人を標的にした攻撃で成功を収めたあと、アル=カーイダは世界貿易センタービルを攻撃、およそ3000人のアメリカ人が一日で死んだ。だから、イスラエルはアメリカ人にとって戦略兵器なのか。むしろ、重荷ではないのか?

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以上
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