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明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(911)ハマースを理解する

2014年08月04日 13時30分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)
守田です。(20140804 13:30 トルコ・シノップ時間)
 
岡さんの翻訳文章の転載を続けます。
 
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京都の岡真理です。

本日、2本目の投稿です。
先ほどお送りしたアラステア・スローンの「アメリカのメディアが、パレスチナ/イスラエルについて、あなたに語らない9つのこと」に続いて、カタ・シャレットの「ハマースを理解する」をご紹介します。

「ハマスなんか理解したくない!」などとおっしゃらずに、どうか、ご一読いただければ幸いです。嫌うにせよ批判するにせよ、まずは事実をきちんと踏まえることが肝心だと思いますので。
著者のカタ・シャレット(Cata Charrett)は、英国ウェールズ地方のAberystwyth大学の博士課程で博士論文提出資格をすでに得ている研究者(Ph.D.candidate)です。2006年のパレスチナ評議会選挙以降のハマースとEUの関係について専門に研究しています。

日本の主流マスメディアは、ハマースについて言及するとき、「ガザを実効支排しているイスラム原理主義組織ハマス」と並んで「イスラエルの生存権を認めていないハマス」と説明します(昨日の「クローズアップ現代」でもそう言っていました)。
それだけ聞くと、「イスラエルの生存権を認めていない」=「イスラエルのユダヤ人の殲滅を企図している」=「和平に反対、ユダヤ人をパレスチナから追い出そうとしている」=だから、いつもロケット弾でイスラエルを攻撃している…というように思ってしまっても不思議ではありません。和平の障害となっているのはイスラエルの生存権を認めないハマース、問題が解決しないのは原理主義のハマースがガザを支配しているせいだと。

ハマースは本当に、和平を望んでいないのでしょうか?

シャレットの論考の結論を先にまとめておくと、先の「アメリカのメディアが…」でも論じられているように、ハマースは、1967年の境界線に従って、パレスチナ国家を建設し、長期にわたる停戦をする用意があると明言しています。また、ファタハとも和解し、民族統一政府を作ったように、政治外交路線で和平について交渉したいと考えています。

しかし、米国やEUは、そうしたハマースの政治外交努力を無視し、ハマースの実際がどうであろうと、あくまでもテロリストとみなし続けるイスラエルの方針に追随しています。

そうであるとすれば、和平を望んでいないのは、ハマースではなくイスラエルであり、イスラエルの方針に追随しているアメリカやヨーロッパ諸国こそ、紛争の永続化と犠牲者の増大に加担しているということになります。

主流メディアが、私たちに思い込ませたい問題の構図とは、まるで正反対の構図が浮かび上がってきます。

「パレスチナ人の帰還権を支持するユダヤ人」の声明に引用されていたマルコムXの警句が想起されます――新聞を読むときは気をつけて読まないと、抑圧されている者を憎み、抑圧をおこなっている者を愛するようになってしまう。

■■ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
http://mondoweiss.net/2014/07/understanding-hamas.html

ハマスを理解する

カタ・シャレット / Mondoweiss / 2014年7月14日

2006年、パレスチナの評議会選挙で勝利を収めると、新たに首相に選出されたイスマーイール・ハニーエは、ブッシュ大統領に書簡をしたためた。この書簡の中でハニーエは、彼の新政府が承認されることを求め、1967年の境界を国境とすることを申し出、長期にわたる停戦に同意した。

ハニーエは以下のように書いている。
「私たちは、民主的なプロセスで選ばれた政府です。」
「私たちは域内の安定と安全保障を重要視しており、それゆえ1967年の国境に基づいてパレスチナ国家を建設し、長期にわたり停戦することを申し出てもかまいません。」

「私たちは戦争屋ではありません。平和を創るものであり、私たちはアメリカ政府に対し、新たに選出されたパレスチナ政府と直接交渉をもつよう呼びかけます」とハニーエは書いた。同様に、アメリカ政府に、ハマースに対する国際ボイコットを終わらせるよう呼びかけている。「なぜなら、ボイコットの継続は、域内全域に暴力と混乱を煽ることになるからです。」

ブッシュ大統領はこの書簡に応答せず、合衆国はハマースとガザに対するボイコットを継続した。

2006年の選挙以来、ハマースはEUやアメリカの代表と外交的な接触を打ちたてようと繰り返し努力した。そのすべてが拒絶された。ハマースは民主的プロセスによって選出された。この民主プロセスをEUは歓迎し、資金も提供し、監視し、自由かつ公正であったと宣言している。ハマースと西洋の外交官とのあいだで秘密裏の非公式会合は継続して開かれているが、その内容はいつも同じだ。「カルテットの原則を受け入れなければ、我々は、お前たちを非合法組織として扱い続け、ボイコットを続ける」というものだ。
[カルテットの原則:カルテット(国連、EU、ロシア、米国)がパレスチナ政府を承認する3条件:1.イスラエル国家の承認、2.過去の合意事項の遵守、3.武装闘争の放棄――訳者]

2007年のワシントンとイスラエルのやりとりがリークされたが、その中で、イスラエルの諜報局長、アモス・ヤドリンは、「ハマースがガザを制圧してくれればイスラエルとしてはありがたい、そうなれば、IDF(イスラエル国防軍)はガザを敵性国家として扱うことができる」と述べている。

そして、まさにそうなった。ハマースが民主的選挙によってガザを掌中にすると、イスラエルはガザを敵性地区として扱った。そして、まさにこの瞬間も、それが起きているのを私たちは目にしている。イスラエルは、ハマースはテロリストだと述べ、西洋の指導者たちもこの方針に異を唱えなかった。それどころか、ハマースの指導者と外交上、会うのを拒絶し、新たに選出された政府に対するあらゆる融資をやめ、ガザの領土に対するイスラエルの完全制裁と封鎖を支持したのだった。イスラエルはハマースをテロリストだと述べ、ヨーロッパの諸政府とアメリカ政府はそれに従った。

この方針は、西洋政府の国策としてたいへん強力なものとなり、主流メディアの報道機関によるガザをめぐる発言はすべて、ハマースに対するイスラエルの「自衛権」、すなわち、イスラエルによるテロリズムからの防衛という言説に還元されることになった。ハマースはテロリズムと同義になり、ガザは「テロリストが匿われている領土」と同義になった。

そのようなものとしてイスラエルは、テロリズムから自らを守るためだと言って、誰ひとり介入する者のない、無差別かつ過激に不均衡な軍事行動という凶悪な贅沢を自らに与えた。西洋の諸政府および西洋の主流メディアの報道機関は、ハマースのアイデンティティについて暴力的に誤解した情報を買い、支持し、広め続けている。

私は、大勢のハマースのメンバーや指導者に会ったことがある。西洋の主流メディアの言説におけるハマースと、その行動やパレスチナ社会におけるその地位についての矮小化されレイシズムに満ちた誤解に、私は深く失望し、意気消沈している。2012年9月から12月にかけて、私はガザで3か月の調査旅行をおこない、ハマースのメンバーやリーダーたちと、2006年の選挙における彼らの勝利に対する西洋の反応について話をした。会話の中で彼らは、かくも根深く誤解され、誤って表象されていることについて、彼ら自身、抱いているフラストレーションと悲しみを語ってくれた。

ガザにおけるハマースの地域マネージャー、アフマド・マジュディは、外部の多くの権力が自分たちをテロリストと見なしていることを自分たちは自覚していると語り、その誤解は、イスラエルからの誤った報道に基づいているからだと説明した。

ハニーエ首相の顧問、アフマド・ユースフは、自分たちが西洋で間化され、悪魔化されていることを我々は知っていると言い、だからこそ、単にステレオタイプ化するのではなく、西洋の高官たちはここに来て、自分たちと会って、ハマースについて、そしてハマースの政策について、よりよく理解してほしいと語った。

ハマースは西洋の外交官に対して門戸開放政策をとっているとユーセフは言った。ハマースは承認され、外交的関係を結びたいと願っているのだと。しかし、合衆国とEUの国々の代表者たちは、新たに選出された政府を承認することを拒み、ハマースに対する財政的、外交的制裁を継続しているのだと。

ハマースのリーダー、ガーズィ・ハマドは私にこう語った。「EUはハマースに反対し、陰で脅しをかけ、失敗させたいと思ったのだ。世界に、我々はイスラーム主義者には権力の座に就いてほしくないと示すために。イスラーム主義者によって民主主義がもたらされてほしくなかったのだ」

■ハマース憲章の強迫的強調

西洋のメディアでハマースに関して論じられるとき、ほとんどの場合、ハマースの悪名高い1988年憲章で始まる。だが、ハマースの軍事的立場について強迫的なまでに狭隘な解釈をおこなう報道各社は、果たして一度でも、ハマースの政治的仕事について調べてみたことがあるのだろうか。

これら報道各社は、他の専門家の手による憲章の詳細な分析を読んだことがあるのだろうか。たとえば、メナヘム・クラインは次のように書いている。
「ハマースの政治要綱とイスラーム憲章のあいだの相違は、欺瞞でもなければ、言葉が空疎かつ無思慮に使われているからでもない。それらの相違は、ハマースが政治運動となったことによるプロセスの一部として、その考えの方向性が変化し、修正された結果、生み出されたものだ。」

ハマースは、憲章を取り消しはしないとクラインは説明する。憲章はハマースにとって、第一次インティファーダさなかに彼らが活動を始めたときに書かれた重要な歴史文書だからだ。しかしながら憲章は、現行の形態となったハマースを表すものではない。

現在のハマースをよりよく表す文書がある。2006年の選挙のマニフェストは、パレスチナ社会についてのハマースがより広い視野をもっていることを表している。起草したハーレド・フルーブが述べるところによれば、「マニフェストは、西洋諸国の政府や金融機関に要求されたいくつかの改革を実行するために考案されたと言える」。ところが、合衆国もEUの高官も、鈍感にも、ハマース憲章にとり憑かれ続けているのだ。

ハマースについてのこの還元主義的で具体的な読みを通して、西洋の高官は、ハマースの政治に目を閉ざし続けている。ハマースの創設者やパレスチナ立法評議会の現行メンバー、ハリール・アル=アーヤは、インタビューの中でこう述べている。

ハマースは、多くの場で、実に臨機応変だった。我々は戦略的なものと固定的なものをもっていた。たとえば、ガザとパレスチナのすべての党派による計画もあった。我々はそれに同意したのだ。今に至るまで、EUはこのイニシアティヴについて知らない。ハマースは以前からとてもフレキシブルだ。それに我々は、他の党派とともに、イスラエルとの合意も考えている。我々は、帰還権が承認されれば、1967年の国境を受け入れる。これはすごいことだ。だが彼らに害はない。出ていけというわけではないのだから。」

ハマースは、実用主義で臨機応変な政治的当事者だが、1988年の憲章にばかり焦点化することは、ハマースが今、どのような存在か、ということを完全に見誤ることになる。しかし、恥さらしなことに合衆国やヨーロッパ諸国は、彼らの無教養ゆえか、あるいは意図的にか、ハマース理解について誤った方向に引っ張って行こうとしている。ハマースやその活動について議論するとき、イスラエルの意図的な、人を不安に陥れるレイシズムの言説を繰り返していれば事足れり、であるかのようだ。

おそらくより困った問題は、一般の人々も、ハマースについてのこの恐ろしい誤解を鵜呑みにしていることだ。ツイッター、ブログ、報道記事に寄せられるコメントを見ると相変わらず、ハマースをテロリストと見なし、ガザの人々をテロリストの支持者と見なしている。ハマースについても、ガザについても、何も知らない人々が、イスラエルが、これはイスラエルの自衛の権利だと言っているから、という理由で、ガザに対する爆撃を支持して満足しているのだ。公衆の目には、悪質なことに、ガザの破壊もガザの人々の命の破壊も映らない。彼らはみな、テロリストの一団だと信じているからだ。

イスラエルはこの特別な政策を推し進め、広め、コントロールし、悲劇的なまでの成功を収め、その結果、西洋のリーダーや西洋の公衆のあいだに、幻覚状態がインストールされてしまったのだ。

■パレスチナの統一

2007年、ハマースとファタハはメッカ合意に調印後、民族統一政府を形成した。ハマースは、国際的承認を得て、ガザと自分たちの政府に対するボイコットを緩和するために、統一政府をつくることが奨励されていた。

合意署名後、ハニーエ首相は、主にハマースの代表で構成されていた第10期の政府を解散し、ファタハとハマースのメンバー同数ずつと無党派の代表多数で構成される民族統一政府を創った。これらの変化にもかかわらず、西洋の指導者たちは、ハマースのボイコットとガザに対する封鎖を継続した。インタビューの中でハマースのリーダー、アフメド・ユースフは継続するボイコットに対する不満を述べた。

「我々は彼らの政策にがっかりした。彼らは、約束したことを実行していない。彼らは我々に、「ハマースが民族統一政府を創れば、ヨーロッパはハマースに門を開きますよ」と言った。だが、不幸にも、統一政府を創っても、彼らは門を開かず、閉ざしたままだ。」

今、あれから7年がたち、ハマースに投票したことに対してガザの人々を集団懲罰するという暴力的な政策のあとで、ファタハとハマースがもう一度、[統一政府作りを]試みた。不幸なことに、今日、私たちはこの統一政府について語ってはいない。不幸なことに、今日、西洋の指導者たちは、この統一政府と関係を結んでほしいという彼らの願いを追いかけてもいない。

不幸にも今日、ファタハとハマースは、この統一戦線が、彼らの政治的主権の中で残っているかもしれないものを救い出そうとする試みにおいて、パレスチナ社会を強化するのをいかに助けるか、ということについて話してもいない。代わりに、私たちが話しているのは、相変わらず、イスラエルの自衛権と見なされているガザの爆撃についてだ。
テロリズムについてのイスラエルのナラティヴは、またもやハマースが政治的主体として統治する機会を破壊し、西洋の指導者たちは、愚かにも、あるいは悪意あって、これに共犯した。ガザの人々は、彼らをテロリストと見なすイスラエルの言説に還元され、今この瞬間にも続いている際限ない爆撃や絶え間ない攻撃を許している。

[翻訳:岡 真理]
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以上

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