守田です。(20111105 01:30)
明日に向けて(312)の推論に続いて、ここでは自発的核分裂が原子炉の外で起こっ
ていることそのものの危険性について指摘していきたいと思います。
そもそも自発核分裂とは何か。原子が、中性子の衝突などを経ないで、自分で
勝手に分裂してしまうことです。原子が放射線を出して、違う物質に変わっていく崩
壊現象と同じように、ある確率に基づいて起こってくる現象です。理論的にはウ
ラン以降の原子番号の原子=超ウラン元素のすべてが、自発核分裂を起こしうると
されますが、実際にはプルトニウム240、242など偶数番号の原子に起こりやすい。
この自発核分裂を起こす核種のうち、重要な位置を持っているのがプルトニウム
240です。というのは、原子炉はそもそも核分裂しないウラン238に中性子をあて
て、核分裂性のプルトニウム239を生み出すために作られた装置ですが、このとき
中性子が二ついっぺんにあたるとプルトニウム240ができてしまうのです。それは
プルトニウム239と混在しやすい。
これは核兵器を作るときに、重大なネックとなります。プルトニウム240は自発
核分裂する。当然そのときに中性子が出てくるので、それが核分裂しやすいプル
トニウム239にぶつかると、核分裂反応を惹起させかねない。勝手に核爆発が始
まってしまうのです。そのため核兵器級のプルトニウムは、Pu239の比率が93%以
上でないといけない、Pu240は7%以下でないとされています。
では商業用の軽水炉の中ではどうなのか。この点は政府や文部科学省、東電など
が強調することなのですが、生成されるプルトニウムのうち、30%もPu240が含ま
れているのです。「だから核兵器には使用できません」というのが、決まり文句
として言われることです。しかしそれは長く運転した結果で、運転をごく初期に
やめてしまえばPu240はそれほど発生しない。実は軽水炉でも核兵器は作れるのです。
それはともあれ、こうした点からも、プルトニウム240は、全プルトニウムのうち
30%近くを占めることが、・・・核兵器用のプルトニウムを作っていない証として
・・・求められるのであり、だから当然にもある程度使われた核燃料の中には、
プルトニウム240がそれなりの量、生成されていることは、常識に属することがらな
のです。そのため自発核分裂というのなら、Pu240のことが言及されて不思議はない。
ところがなぜかキュリウムと仮定すると・・・という記述が出てくる。なぜだろう
か。プルトニウムが自発核分裂することに言及したくないのではないか。どうして
かといえば、すでに9月30日に、プルトニウムが原発から45キロ地点の飯舘村で検出
されたことが報道されているからではないかと僕には思えます。このときもPu239と
並んでPu240が検出されたと書かれている。
そうなるとどうなるか。検出された地点で、Pu240の自発核分裂が当然にも起こり
うるわけです。というより過去形としてすでに起こっていると思います。ということ
はその周辺に中性子が飛んだことになる。α線、β線、γ線だけでなく、中性子線
が環境を、したがってまた人を襲ってしまった可能性が高いといわざるを得ない。
重大で深刻なこの問題がここから浮かび上がってきます。
「重いから飛ばない」とされてきたストロンチウムが横浜から検出されたように、
プルトニウムがより原発から遠い地点で検出されることも近いうちにありうると
思うのですが、その可能性が高いからこそ、東電はプルトニウム240が、原子炉の
外で、環境中で、自発核分裂を起こしていることに言及したくなかったのでは
ないだろうか。なぜかといえばそれが重大な危険性を意味するのだからです。
もっともキュリウム自身も、原発から3キロの大熊町で計測されたことが6月時点で
明らかになっています。当然、このときもキュリウムの自発核分裂は起こっていた
はずで、周囲の方々が中性子線に襲われてしまった可能性が高い。今回の東電の
発表からはこうしたことも演繹される。要するに、そもそも原子炉の外で、自発核分裂
が起こるなどということが大変な事態なのです。
では実際に、原子炉の周辺はどうなっているのでしょうか。とてもではないが近づ
けない状態であることは間違いない。もともと放射線値が高い上に、中性子が常に
飛び交っている。それを知るからこそ、常に現場では臨界の可能性を感じるのだし、
中性子はあたったものを放射化してしまうので、それはさらに放射線値をあげる
結果を生み出す。危険で近寄れず、対処ができないどころか現状も把握できない。
それが今あることなのだと思います。つまり問題は、自発核分裂なんぞをする物質
が、原子炉と格納容器という閉じ込め機能の外に出てしまっていること自体にある
のです。それそのものがきわめて危険なのです。再臨界の可能性を云々するよりも、
この点を重視し、だからこそ、超ウラン元素がどのように、どれだけ外に飛び出し
ているのか、早急に計測することが必要です。
これらに踏まえて、超ウラン元素の拡散の実態に関する分析を深めていきたいと
思います・・・。
なおキュリウムが観測されたことに言及した、「明日に向けて」の記事のアドレス
を記しておきます!
明日に向けて(149)キュリウム・アメリシウム・ストロンチウムが検出された!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/29360d5be7cccc6d875fbd108858455c
明日に向けて(312)の推論に続いて、ここでは自発的核分裂が原子炉の外で起こっ
ていることそのものの危険性について指摘していきたいと思います。
そもそも自発核分裂とは何か。原子が、中性子の衝突などを経ないで、自分で
勝手に分裂してしまうことです。原子が放射線を出して、違う物質に変わっていく崩
壊現象と同じように、ある確率に基づいて起こってくる現象です。理論的にはウ
ラン以降の原子番号の原子=超ウラン元素のすべてが、自発核分裂を起こしうると
されますが、実際にはプルトニウム240、242など偶数番号の原子に起こりやすい。
この自発核分裂を起こす核種のうち、重要な位置を持っているのがプルトニウム
240です。というのは、原子炉はそもそも核分裂しないウラン238に中性子をあて
て、核分裂性のプルトニウム239を生み出すために作られた装置ですが、このとき
中性子が二ついっぺんにあたるとプルトニウム240ができてしまうのです。それは
プルトニウム239と混在しやすい。
これは核兵器を作るときに、重大なネックとなります。プルトニウム240は自発
核分裂する。当然そのときに中性子が出てくるので、それが核分裂しやすいプル
トニウム239にぶつかると、核分裂反応を惹起させかねない。勝手に核爆発が始
まってしまうのです。そのため核兵器級のプルトニウムは、Pu239の比率が93%以
上でないといけない、Pu240は7%以下でないとされています。
では商業用の軽水炉の中ではどうなのか。この点は政府や文部科学省、東電など
が強調することなのですが、生成されるプルトニウムのうち、30%もPu240が含ま
れているのです。「だから核兵器には使用できません」というのが、決まり文句
として言われることです。しかしそれは長く運転した結果で、運転をごく初期に
やめてしまえばPu240はそれほど発生しない。実は軽水炉でも核兵器は作れるのです。
それはともあれ、こうした点からも、プルトニウム240は、全プルトニウムのうち
30%近くを占めることが、・・・核兵器用のプルトニウムを作っていない証として
・・・求められるのであり、だから当然にもある程度使われた核燃料の中には、
プルトニウム240がそれなりの量、生成されていることは、常識に属することがらな
のです。そのため自発核分裂というのなら、Pu240のことが言及されて不思議はない。
ところがなぜかキュリウムと仮定すると・・・という記述が出てくる。なぜだろう
か。プルトニウムが自発核分裂することに言及したくないのではないか。どうして
かといえば、すでに9月30日に、プルトニウムが原発から45キロ地点の飯舘村で検出
されたことが報道されているからではないかと僕には思えます。このときもPu239と
並んでPu240が検出されたと書かれている。
そうなるとどうなるか。検出された地点で、Pu240の自発核分裂が当然にも起こり
うるわけです。というより過去形としてすでに起こっていると思います。ということ
はその周辺に中性子が飛んだことになる。α線、β線、γ線だけでなく、中性子線
が環境を、したがってまた人を襲ってしまった可能性が高いといわざるを得ない。
重大で深刻なこの問題がここから浮かび上がってきます。
「重いから飛ばない」とされてきたストロンチウムが横浜から検出されたように、
プルトニウムがより原発から遠い地点で検出されることも近いうちにありうると
思うのですが、その可能性が高いからこそ、東電はプルトニウム240が、原子炉の
外で、環境中で、自発核分裂を起こしていることに言及したくなかったのでは
ないだろうか。なぜかといえばそれが重大な危険性を意味するのだからです。
もっともキュリウム自身も、原発から3キロの大熊町で計測されたことが6月時点で
明らかになっています。当然、このときもキュリウムの自発核分裂は起こっていた
はずで、周囲の方々が中性子線に襲われてしまった可能性が高い。今回の東電の
発表からはこうしたことも演繹される。要するに、そもそも原子炉の外で、自発核分裂
が起こるなどということが大変な事態なのです。
では実際に、原子炉の周辺はどうなっているのでしょうか。とてもではないが近づ
けない状態であることは間違いない。もともと放射線値が高い上に、中性子が常に
飛び交っている。それを知るからこそ、常に現場では臨界の可能性を感じるのだし、
中性子はあたったものを放射化してしまうので、それはさらに放射線値をあげる
結果を生み出す。危険で近寄れず、対処ができないどころか現状も把握できない。
それが今あることなのだと思います。つまり問題は、自発核分裂なんぞをする物質
が、原子炉と格納容器という閉じ込め機能の外に出てしまっていること自体にある
のです。それそのものがきわめて危険なのです。再臨界の可能性を云々するよりも、
この点を重視し、だからこそ、超ウラン元素がどのように、どれだけ外に飛び出し
ているのか、早急に計測することが必要です。
これらに踏まえて、超ウラン元素の拡散の実態に関する分析を深めていきたいと
思います・・・。
なおキュリウムが観測されたことに言及した、「明日に向けて」の記事のアドレス
を記しておきます!
明日に向けて(149)キュリウム・アメリシウム・ストロンチウムが検出された!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/29360d5be7cccc6d875fbd108858455c
使用済み燃料で生じる自発核分裂は、キュリウム242と244の2つのみで90%以上になります。プルトニウム240の100倍以上です。
1立方センチメートル当たり10万分の1ベクレルは、キュリウムで説明できます。プルトニウムでは全く届きません。
こんな当たり前のことで、臨界という発想が出てくる方がどうかしているのですが。