明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(312)東電、「臨界」の可能性を自発核分裂によって否定・・・しかし解せない。。。

2011年11月04日 23時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111104 23:30)

2日から3日にかけて、福島第一原発2号機で核分裂が起きているのではない
かという東電発表のニュースがかけめぐり、一時は、一時的に臨界がおきた
可能性があるとされたものの、最終的に臨界の可能性の根拠とされたキセノ
ンが、キュリウム242、244の自発核分裂によって発生したものと思われ、
臨界が起きた可能性はないという結論が東電より出されました。

その後の報道を見ていても、このまま臨界はなかったという方向で話が流れ
る可能性が強いように思われます。しかし僕にはどうも腑に落ちないところ
がある。臨界の可能性があるといいたいのではないのですが、何かが強く
ひっかかるのです。全体として発表があまりに不自然だからです。夕べから
これを解こうとチャレンジしてきて、現段階で推測できることを述べます。


まず非常に解せないのは、自発核分裂の可能性があることなど、初めから
わかっていることなのに、なぜ東電が、当初、再臨界の可能性があると判断
したのかという点と、自発核分裂をした放射線核種を、なぜキュリウムと
「仮定」したのかです。なぜ量的にはよりたくさんあるはずのプルトニウム
は問題にせずに、キュリウムを仮定に持ち出したのか・・・。

ネットを検索してみると、「陰謀説」的な見解がいくつか見られました。そ
のひとつは、細野大臣が新聞記者を12日に原発サイトに招くと発表したこと
に対し、東電が嫌がって、「臨界」を演出したなどというものもありました。
しかし僕にはとてもそうは見えない。そんな情報操作を演出するほどに、東
電に余裕があるようには見えないのです。

そうではなくて、一時は本当に臨界の可能性を疑ったのではないか。それで
あわてて核分裂反応をとめるホウ酸水を投入したのではないかと思えます。
この点で印象的なのは、その後の細野大臣の談話です。彼は自分も一時期は
核分裂していると思ったと述べつつ、「臨界が起きていないことを確認する
方法を検討する」と赤裸々な重大発言をしています。

4日のNHKWEBNEWSが報道していますが、これだと政府も東電も、実は臨界が
起こった際、それを把握する術を現段階では持っていないことが浮かびあが
ってきます。少なくとも、臨界と自発核分裂の違いを即座に知る手段がない
のだと思います。今はただ、核分裂生成物の量をみるしかない。そこから
連鎖反応があるのかないのかを判断するしかないのだと思います。

こう考えると、やはり東電も、細野大臣も、当初は核分裂反応が起きたので
はと相当に泡をくったことが推測されます。しかしその後に次第に量が明ら
かになった。正確には当初、観測されたものがすべてで、それ以上、大規模
な核分裂が進行していないことが判明し、臨界は起こってないと胸をなでお
ろした。その上で、では何が起こったのかの理由付けを考えたのだと思います。

そこで出てくるのは自発核分裂説ですが、この際、自然に考えれば、プルトニ
ウムの中で自発核分裂の起こる頻度の高いプルトニウム240の分裂を考えるの
が順当だと思うのですが、しかしプルトニウムの核分裂という表現はショッ
キングにとられかねないので避けたかった。それで同じく自発核分裂に至る
確率が相対的に高いキュリウムを持ち出したのではと思えます。

つまりこの過程には、東電も細野大臣も、本当に核分裂が起こったと一時は
思ったこと、ないしはそれを本当に恐れたことが介在しています。そしてそ
れがなぜかといえば、端的には、圧力容器を突き破り、格納容器をも破って
外に出てしまっていると思われる核燃料の状態を、東電がまったく把握でき
ていないからだと思います。だから相当に焦ったのではないか。


実際には、核分裂が起こる可能性、正確には核分裂が連鎖状態を維持する
「臨界」にいたる可能性について、たとえば、京大原子炉実験所の小出さん
は、きわめて少ないのではないかと指摘しています。核分裂のしやすい形状
の圧力容器が壊れてしまったので、きわめてしにくい状態なのではないかと
いう推論に基づいていです。

おそらく可能性としてはそうなのだと思います。しかし現場にいるものの
立場としては、確率論では考えられない。現状が把握できない・・・つまり
核燃料がどういう形状になっているかわからないので、ひょっとして臨界
しやすいように集まっているのではという不安が払拭できないのだと思いま
す。だから自発核分裂ではなくて、臨界を疑わざるをえなかった・・・。

つまりこのドタバタ劇ともいえる一連の過程の中から見えてくるのは、一つ
には、政府も東電も、実は燃料棒の現状をまったく把握できておらず、だら
ら臨界が起こる可能性も否定できずにいること、つまり臨界はありうること
と考えていることです。それほどに現状が分からない。分からないからこそ
さまざまな危機が考えられてしまう。それが実情なのではないか。

そして今、私たちの前にある危機はそこにこそあるのではないでしょうか。
どうなるか分からないのです。もちろん、論理的可能性でつめていって、
臨界は起こらないだろうと推論することは可能です。しかし少なくとも東電
と細野大臣はそうは考えていない。だから臨界ではないことを知る手段が必
要だと言っている。これが彼らの把握の実態なのは間違いないです。

・・・長くなったのでいったん、ここで文章を切り、続便で、自発核分裂を
キュリウムと仮定していることの不自然性について述べたいと思います。

この一連の過程の報道を貼り付けておきます・・・。

******************************

原発事故相 再臨界確認方法を検討
NHKWEBNWES 11月4日 12時52分

細野原発事故担当大臣は、閣議のあとの記者会見で、東京電力福島第一原子
力発電所の2号機内の気体から放射性物質のキセノンが検出された問題に関
連して、原子炉で再臨界が起きていないことを確認する方法を検討する考え
を示しました。

この中で、細野原発事故担当大臣は「2号機のキセノンについては、新たな
ことが起きたというよりは、これまで測れていなかったものが、正確に測れ
るようになって顕在化したということで、きのう東京電力が発表したが、私
も部分的な核分裂があったということだと考えている」と述べました。その
うえで、細野大臣は「冷温停止状態を目指すステップ2の終了の大きな前提
の1つは、事故がこれ以上、エスカレートしないことを確認することで、そ
れには再臨界も含まれている。キセノンの存在が明確になったのを契機に、
再臨界が起こらないことを確認する方法を検討する必要がある」と述べ、
原子炉で再臨界が起きていないことを確認する方法を検討する考えを示しま
した。そして、細野大臣は、国と東京電力が事故の収束に向けた工程表を月
に一度、見直すのに合わせて、今月中旬にもそうした方法を説明したいとい
う考えを示しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111104/t10013730391000.html

*****

福島第1原発:東電、一時的「臨界」の可能性否定
毎日新聞 2011年11月3日 21時09分(最終更新 11月3日 22時59分)

キセノンが生じる自発核分裂と臨界の違い 東京電力福島第1原発2号機の
原子炉格納容器内で、核分裂によって生じる放射性のキセノン135などが
ごく微量検出された問題で、東電は3日、中性子が当たらなくても単発で起
きる「自発核分裂」でキセノンが生じたとする見解を明らかにした。継続的
な核分裂が起きる「臨界」が一時的に生じた可能性は否定した。東電が分析
したところ、検出されたキセノンの濃度は、臨界になっていたと仮定した
場合よりかなり低かったという。

東電は、検出されたキセノン135が、損傷した核燃料などにあるキュリウ
ム242とキュリウム244の自発核分裂で生じたと仮定し、容器内のキュ
リウムの量を推計。核分裂で生じるキセノンの濃度を試算したところ、今回
検出されたキセノンの濃度(1立方センチあたり約10万分の1ベクレル)
とおおむね一致したという。一方、臨界が起きていたと仮定した場合、キセ
ノンは今回検出された濃度の約1万倍に達するという結果になった。

東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「容器内の中性子が臨界の必要量
を維持していない点からも、一時的な臨界はない」と説明。2日の会見で
臨界の可能性に触れた点について「詳細な分析ができていない中、可能性が
あったので言及した。『臨界』は一般の方が危険な状態と考えやすい言葉で、
不安を与えたのは申し訳ない」と陳謝した。

東電によると、キュリウムはウランやプルトニウムが中性子を吸収して生成
され、通常運転時や定期検査中でも自発核分裂が起きる。健全な炉内では、
キセノンは燃料棒の被覆管内に閉じ込められているが、今回は事故で被覆管
も溶けたため検出された。1、3号機についても、2号機と大きく変わらな
い状態だという。

経済産業省原子力安全・保安院は「東電からの正式な報告がなく、現時点で
『局所的な臨界が起きた可能性は否定できない』との見解は変わらない」と
している。【奥山智己、岡田英】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111104k0000m040054000c.html

*****

福島第1原発:2号機でキセノン検出確認 
毎日新聞 2011年11月2日 22時00分(最終更新 11月3日 3時55分)

◇1、3号機でも核分裂の可能性
東京電力福島第1原発2号機の原子炉格納容器内で、核分裂によって生じる
放射性のキセノン133やキセノン135とみられる気体がごく微量検出さ
れた問題で、経済産業省原子力安全・保安院は2日、検出されたのはキセノ
ン133と135だったと発表した。東電も同日、気体を再度測定した結果、
同濃度のキセノンとみられる気体を検出したと発表。保安院は「核分裂反応
が起き、キセノンが発生した可能性は高い」と話している。

東電は、日本原子力研究開発機構に気体の詳細分析を依頼。同機構がキセノ
ンの検出を確認し、保安院が公表した。保安院は「1、3号機でも同様に核
分裂が起きている可能性がある」としている。

東電は、格納容器内の気体を浄化して外部に放出する「格納容器ガス管理シ
ステム」(10月28日稼働)を使って1日午後に採取して測定した物質を
再び調べた。その結果、キセノン133とキセノン135がそれぞれ1立方
センチあたり10万分の1ベクレル程度含まれるデータが得られた。

さらに、2日昼にも物質を採取して測定し、同濃度のキセノン135を検出
した。キセノン133は検出されなかった。

東電の松本純一原子力・立地本部長代理は会見で「(1日午後に採取した)
同じ気体から2回検出されたので核分裂が起きた可能性は高い。ただ、核分
裂が起きていたとしても小さいレベルで、大量のエネルギーを出している
状況ではないので問題はない」と説明。圧力容器の温度や圧力のデータに
大きな変化はなく、核分裂が繰り返し起こる臨界が続いた可能性を否定した。

2号機の格納容器内では、8月にも今回と異なる方法で調査を実施。2種類
のキセノンが発生していた可能性があったが、ごく微量で検出できなかった
上、再臨界の可能性は低いとして詳しい測定をしていなかった。

保安院の森山善範原子力災害対策監は「今後、連続的な核分裂で局所的な
臨界が起きたかも含め、専門家の意見も聞きながら確定していきたい」と
述べた。【奥山智己、関東晋慈、久野華代】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111103k0000m040089000c.html
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