守田です。(20150109 23:00)
内部被曝研究の第一人者、矢ヶ克馬さんを沖縄からお招きして、滋賀県の浜大津と京都市の京都大学で講演会を開催することにしました。
それぞれ「ネットワークあすのわ」と実行委員会の主催です。後者は僕が代表になっています。お近くの方、ぜひご参加下さい。
矢ヶさんとは2012年初めに岩波ブックレット『内部被曝』を共著として出しました。
僕が矢ヶさんにインタビューし、応えていただく形で編みましたが、内部被曝のメカニズムと、それが隠されてきた歴史をかなり詳細かつ分かり易く書き表すことができたと思っています。
今回の講演でもこの内容を軸にお話してもらいますが、可能な限り新しい内容も加えていただきます。
矢ヶさんが内部被曝を「隠された被曝」と銘打って書籍で明らかにされたのは福島原発事故の前の2010年でした。
原爆被爆者が自らが背負った病を、原爆の放射線由来のものだという認定を求めて提訴した「原爆症認定訴訟」の中でのことでした。
矢ヶさんはこの中で、被爆者調査を排他的に独占して行ったアメリカの原爆傷害調査委員会(ABCC)が、被曝影響を小さく見せるために、内部被曝をすっぽりと欠落させた報告書を作り上げたことを曝露されました。
またこの報告書をもとに国際放射線防護委員会(ICRP)が、やはり内部被曝を無視することで、放射線の人体への影響を非常に小さく見積もった国際的スタンダードを作り出してきたカラクリも明らかにされました。
これらの点は、私たちにとって、いや核の時代の中にある現代世界にとって極めて重要な点です。
なぜか。世界中の放射線の安全管理が、内部被曝の危険性を除外したままに行われているからです。巨大な危険性がいまだ隠されたままであり、多くの民衆の側に立つ科学者ですら、この「隠された被曝」を見抜けずにいます。
このカラクリ、内部被曝のメカニズムはどのようなものであり、同時にどのようにそれが隠されいるのかと言うことをつかみ、それを社会に広めることの中でこそ、被曝防護の徹底化を図ることができます。
実はすでにこうした内容を、画期的に表した書が発表されています。一つには旧ソ連の科学者たちが結集した行ったチェルノブイリの被害の調査報告書です。2009年に出版されました。
邦訳書が岩波書店から『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』というタイトルで出版されています。
これを読むといかにチェルノブイリ原発事故の被害が小さく見積もられてきたのかが分かります。ABCCやICRPは現実の放射線被害の一部しか認めず、多くの病の発生を切り捨ててきたのです。
さらにもっと重い報告書が提出されました。2011年4月に発表された『ウクライナ政府報告書』です。
この中には前掲書の内容も盛り込まれていますが、注目すべきはこの書は、当時のウクライナ政府が国民約250万人の追跡調査の中でつかんだことを明らかにしたことです。
そこにはICRPが放射線被害として認定した小児甲状腺がん、白血病、白内障の他に、心筋梗塞や、胃や腸の病を始め、もっとたくさんの病気の発生が有意なデータで示されていました。国家機関による調査だけに大きな重みがありました。
今、その報告書を出した政府が、昨年2月のクーデタによって倒されてしまったため、この報告書もまた埋もれてしまっていますが、そこには国際機関が現実の原発事故の被害をほんの一部しか捉えられてないことが膨大なデータの裏付けのもとに明らかにされていました。
詳しくはこの点を取材したNHK報道チームの報告書を分析した以下の記事に記しましたのでそれを参照して下さい。
明日に向けて(977)ウクライナの悲劇=被曝の現実を読み解く(ポーランドを訪れて-5)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/83669290d338e0f63d694c7e55bfbee2
明日に向けて(979)ウクライナの悲劇=被曝影響の隠蔽と第2世代の健康悪化・・(ポーランドを訪れて-6)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/4fe8468358e177a263eb02d2c943b422
岩波ブックレット『内部被曝』は、こうした病の実相を裏付ける内部被曝のメカニズムと、その危険性を隠してきたICRPのあやまりを平易に明らかにしたものです。
この論理的メカニズムの解明があってこそ、チェルノブイリの報告書は真に生きることができますが、実は今、矢ヶさんは岩波ブックレット『内部被曝』から一歩先に研究を進めておられます。
僕も幾度か論文を読ませていただき、さらに昨年末には個人的に数時間のレクチャーを受けさせていただき、ようやくその内容をつかむことができました。
12月に「明日に向けて」で、国際放射線防護委員会(ICRP)がどのような歴史的変遷をたどり、見解を変えてきたのかを批判的にレポートしましたが、実はこれもまた矢ヶさんが新しくつかまれた内容に追いつくための作業の一つでもありました。
そして矢ヶさんとさらに討論を重ねながら、今、『内部被曝』に続くこの新しい点を盛り込んだ論稿を作成中です。今回の矢ヶさん講演会はこの作業の流れの中で設定したものです。
そのため可能な限り、この時にもこの新しい内容に触れたいと思っています。(矢ヶさんの講演+その後の討論や資料などで)
こうした内容を平易に分かり易く解き明かすのが僕の役割だと思っていますので、目下、大奮闘中です。なんとか講演会に間に合わせるつもりです。
その点を含めて、ぜひ少しでも多くのみなさんに、内部被曝のメカニズムについて、国際放射線防護委員会(ICRP)の被曝過小評価のカラクリについて、学んでいただきたいです。
当日の講演や討論を、できる限り、中継、録画の形でもみなさんにお伝えしようと思いますが、やはりライブで聴くのが一番。関西近郊の方、ぜひぜひ、ご参加下さい。
一緒になって、隠された被曝を暴いていく場を盛り上げていただければと思います。
以下、2月7日滋賀県浜大津、8日京都市京都大学での企画の案内を貼り付けます。
なお滋賀の企画案内にも最後に矢ヶさんと守田のプロフィールがついていましたが、ここでは割愛しました。
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2月7日(土) 滋賀県浜大津
2015年ネットワークあすのわ最初の企画としまして、岩波ブックレットの「内部被曝」でおなじみの矢ヶ克馬先生のお話会を浜大津でひらくことにしました。
矢ヶ先生は沖縄在住ですので、なかなか直接お話を聞く機会がありません。ぜひ、この機会に放射線の影響についてお聞きしたいと思います。
午前の部は昼食持ち寄りで矢ヶ先生、共著者の守田敏也さんを囲んで座談会形式に。
午後の部は矢ヶ先生の講演と守田さんとの対談で内部被曝についてじっくりお話していただきます。
みなさんも一緒に、放射能のこと、内部被曝のこと、学んでみませんか?
矢ヶ克馬先生お話会
内部被曝ってなあに?
日時:2015 年2月7日(土)
午前の部 11:00~12:30 昼食持ち寄り座談会
午後の部 13:00~14:30 矢ヶ先生お話会
14:30~16:00 矢ヶ先生&守田敏也さん対談+質疑応答
会場: 明日都浜大津 5階中会議室
大津市浜大津四丁目1番1号 Tel 077-527-8351
*JR大津駅から徒歩約10分 京阪浜大津駅から陸橋を渡って徒歩 約1分
*明日都公共駐車場をご 利用の方は、駐車券を4階のふれあいプ ラザ受付までお持ち下さると、
駐車料金が1時間半無料になります。
参加費: 午前の部 ひとり300円(会場費として)
午後の部 ひとり500円(会場費・資料代として) カンパもよろしくお願いします!
*午前の部にご参加の場合は昼食をお持ちください。
*午後の部の途中でお茶休憩を入れます。差し入れ大歓迎です!
*託児はありませんが、親子スペースを設けますのでお子さんもご一緒に参加していただけます。
*人数把握のため、下記ま で事前にお申し込みいただけるとありがたいです。
お問い合わせ・お申し込み
E-mail:asunowa_kouenkai@yahoo.co.jp TEL : 077-586-0623(暮らしを考える会)
主催: ネットワークあすのわ
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2月8日(日)京都市左京区 京都大学
矢ヶさん講演会-隠されてきた内部被曝の危険性
福島原発事故から4年近くが経ちます。政府は放射能の害をとても小さく見積もり、危険地帯に人を呼び戻そうとしています。
しかし実際には関東・東北でさまざまな放射能被曝由来と思われる病気の発生が報告されており、危険性が隠されたまま被害が進んでいます。
こうした中で私たちが命を守っていくためには、内部被曝のメカニズムと危険性や、内部被曝の危険性が軽んじられてきたカラクリをしっかりと学ぶことが大切です。
矢ヶさんは原爆被爆者の病気が放射線由来であることの認定を求める「原爆症認定訴訟」への関わり以来、隠された被曝の現実を暴いてこられた内部被曝研究の第一人者です。
その矢ヶさんに内部被曝のメカニズムと危険性が隠されてきた歴史を解説してもらいます。
放射線防護のスタンダードを作り出している国際放射線防護委員会(ICRP)が被曝影響を軽く見せてきたレトリックについての最新の研究成果も教えていただきます。
講演の後、京都市で子どもを被ばくから守る活動に取り組んできた加藤あいさんと広海ロクローさんを交え、パネルディスカッションを行います。
分かりにくかったところを質問しながら内容を深め、お二人の活動についても語ってもらい、会場からの質疑も受けます。
コーディネーターは矢ヶさんと共に内部被曝の危険性を訴えてきた守田敏也さんです。
みなさん。ぜひ一緒に内部被曝について学び、すべての命を守る力を培いましょう!
日時 2月8日(日)午後1時開場 1時半開始
場所 京都大学吉田南4号館1階 4共11教室
講演 矢ヶ克馬(琉球大学名誉教授)
パネルディスカッション パネラー
矢ヶさんほか、加藤あいさん(日本共産党京都市会議員)
広海ロクローさん(ノンベクキッチン ホテヴィラ店主)
コーディネイター 守田敏也さん(フリーライター)
参加費1000円
主催 矢ヶさん講演会実行委員会
代表:守田敏也(090-5015-5862)morita_sccrc@yahoo.co.jp
予約はいりません。
託児はありませんが子どもと親御さんが一緒に入れるスペースを作ります。
絵本など準備します。泣き声など気にせずに会場内でお話を聞いてください。
プロフィール
矢ヶ克馬
1943年生まれ。沖縄県在住。広島大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。理学博士。専攻は物理。琉球大学理学部教授、理学部長などを経て2009年3月定年退職。
2003年より原爆症認定集団訴訟で「内部被曝」について証言をする。
東日本大震災以降は、福島ほか、全国各地で講演している。2012年久保医療文化賞受賞。
著書に『隠された被曝』(新日本出版社)『力学入門(6版)』(裳華房)
共著に『内部被曝』(岩波ブックレット)がある。
加藤あい
1975年京都で生まれ育つ。京都市在住。日本共産党京都市会議員(3期)
福島原発事故時は市会議員として市に給食の放射線測定を要請するなど子どもたちを被ばくから守るために奔走。
現在、市会運営委員会理事、市会改革推進委員会副委員長、教育福祉委員。
佛教大学社会学部卒。家族は夫と娘、息子。
広海ロクロー
1965年生まれ。東京・北海道を経て1980年より京都市在住。
1992年より7回の渡米でウラン採掘による被害の実態を知り核サイクル反対の活動を始める。
福島原発事故後、安全な食べ物を提供したいと放射線測定器を備えた「NONベクレル食堂」を京都市岩倉に開店。
2014年、京都市三条猪熊に移って「ノンベクキッチン ホテヴィラ」開店。使用食材の測定数は700を超える。
音楽をこよなく愛し数々のイベントも手掛けてきた。家族は妻と息子、娘。
守田敏也
1959年生まれ、京都市在住。同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして取材を続け、社会的共通資本に関する研究を進めている。
ナラ枯れ問題に深く関わり、京都の大文字山害虫防除も実施。東日本大震災以降は、広くネットで情報を発信し、関西をはじめ被災地でも講演を続けている。
2014年はドイツ、ベラルーシ、トルコ、ポーランドでも講演。共著に『内部被曝』がある。
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