明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(391)「市民と科学者の内部被曝問題研究会」が立ち上がった!!

2012年01月28日 09時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20120128 9:30)

みなさま。表題のように、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」
(通称内部被曝研)がついに正式に立ち上がりました!昨日、2回にわた
る記者会見を行い、被曝医師で名誉会長の肥田舜太郎さん、医師の松井
英介さん、被爆者で物理学者の澤田昭二さん、物理学者の矢ヶ克馬さ
ん、歴史学者の高橋博子さん、福島市民放射能測定所の岩田渉さん、
ビキニ環礁の水爆実験で被爆した元第五福竜丸乗組員の大石又七さんら
が登壇して、内部被曝研結成の意義を切々と訴えました。

内部被曝研のメンバーの一人の岩上安身さんのチームが、自由報道協会
での記者会見をユーチューブにアップしてくださったので、ぜひご覧く
ださい。圧巻は肥田舜太郎さんの発言です。55分ぐらいから話していま
す。2~3分でということでしたが10分近く熱弁してくださいました。
肥田さんは質疑応答にも答えて話しています。こちらは1時間21分20秒
ぐらいから。実際に被曝したらどうするのかという問いに答えたもので
必見です。
http://www.ustream.tv/recorded/20030116

また会を代表して矢ヶさんが、この日、政府に対して打ち出した内部
被曝研の「提言」を朗読しています。この文章は矢ヶさんが書いたた
たき台をもとに、前日、大変な時間をかけてみなさんで煮詰めていった
もの。おかげで会議が予定時間を大幅にうわ待ってしまい、会場で午後
11時半ごろまで討論の後、宿泊組(同じホテルをとっていました)が
ホテルの一室に集まって討論を続行。結局、草案がまとまったのが午前
2時でした。

その後、矢ヶさんが自室に戻って、文章を推敲。午前3時までかかって
修正し、翌朝、朝8時に起きて、生物学者でメンバーの生井兵治さんと僕
が加わって文章を再度推敲。9時にようやく印刷をしてくれる方のところ
に送って、記者会見に間に合わせることができました。

この討論の過程がとても充実していました。提言内容の吟味のあらゆる
場面で、それぞれのメンバーの深い見識が披露され、僕自身、学ぶもの
がとても多かったです。ともあれこうして紡ぎ出された宣言文を貼り付
けますので、ぜひお読みください。

内部被曝研の結成が、多くのみなさんの放射線防護の努力に何がしかの
プラスをおよぼすことにつながるように、僕も可能な限りの力を尽くそ
うと思います。みなさま、どうか内部被曝研をよろしくお願いします!

**********

2012年1月27日

内部被曝の拡大と健康被害を防ぐ為に政府がとるべき安全対策(提言)

市民と科学者の内部被曝問題研究会

東日本大震災にさいして起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故
(東電事故)は深刻な被害をもたらしています。広範な地域が汚染され、
多くの人々が被曝して、いのちと暮らしを脅かされています。これに対
して私たち「市民と科学者の内部被曝問題研究会」は、日本政府に対し
て、「人間は核=原子力とともに生きていける」との考えを根本的に改
め、汚染地域には住み得ず、農林水産業はできない、との前提で、国家
100年の計を策定することを求め、緊急にいくつかの提言を行いたいと思
います。

原発事故による放射線被曝の主要なものは、呼吸や飲食を通しての内部被
曝です。政府や政府に助言する専門家は、被曝影響の評価を主として測定
しやすいガンマ線に頼っています。しかし、内部被曝では、ベータ線やア
ルファ線がガンマ線よりもはるかに大きな影響を与えます。政府と東電は、
ベータ線を放出するストロンチウム90や、アルファ線を放出するプルトニ
ウム239などの測定をほとんど行っていません。内部被曝の特性とその健康
影響を意図的に無視し続けているのです。

その背景には、アメリカの核戦略や原発推進政策があります。これらの政
策の影響下で組織された国際放射線防護委員会(ICRP)、国際原子力機関
(IAEA)、国連科学委員会(UNSCEAR)などの機関は、広島・長崎原爆の放射性
降下物による被曝影響を無視した放射線影響研究所の研究に依存していま
す。日本政府は福島原発事故の被曝に関しても、「100mSv以下では病気を
引き起こす有意な証拠はない」とするなど、事実を覆い隠し、被曝限度に
高い線量値を設定して、市民のいのちを守ろうとはしていません。また、
世界保健機構(WHO)はIAEAと放射線被曝問題を除外する協定を結んでいます。

東電事故以来、政府はICRPの勧告を受けて、被曝限度値を通常の年間1mSv
のところを突如20mSvにつり上げました。事故があったからといって、人間
の放射線に対する抵抗力が20倍になるというようなことは金輪際ありません。
本来は事故を引き起こした東電と原発推進を図ってきた政府の責任で、住民
の被曝回避にあたらねばならなりません。逆に、この措置は住民の保護を放
棄し、住民を長期にわたり被曝さるにまかせて、事故を起こした者の責任と
負担を軽くするためのものです。住民のいのちを犠牲にする棄民政策です。
日本国憲法第二十五条には、主権者として保障されるべき権利として、「す
べて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記さ
れ、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生
の向上及び増進に努めなければならない。」と記述されているのです。

事故後10ヶ月を経過し、事故の被害は全住民に広がろうとし、今なお拡大の
一途をたどっています。放射能汚染は福島に留まらず、日本全域に広がって
います。陸だけでなく海の放射能汚染も深刻です。放射能汚染は、長期間続
き、被曝の被害はますます深刻になることが予測されます。中でも深刻なの
は、放射性物質を含んだ食物が、全国に流通していることです。原則的な考
え方、根本的な方法で、食物をとおしての被曝回避を図らねば、全住民が深
刻な被曝を受け続けることとなります。子どもの「安全な環境で成長し教育
を受ける権利」は侵され続けます。

野田佳彦首相は「原子炉が冷温停止状態に達し発電所の事故そのものは収束
に至ったと判断」し、「事故収束に向けた道筋のステップ2が完了した」と
宣言しました(2011・12・16)。しかし、圧力容器の下部にはメルトスルー
で生じた穴が空いており、核燃料の状態も把握されていません。四号機の倒
壊も懸念されています。汚染水を垂れ流しながら「安定冷却できている」と
するにはあまりにも不安定な状態です。いつまた核分裂などの暴走が起こる
かわかりません。今、幕引きができるような状態では全く無いのです。

私たちは次のような提言を行い、政府が速やかに実施することを求めます。

1.住民の安全を保障できる体制確立 原発を安全神話で進めてきた「原子
力村」による委員組織ではなく、公正な立場から客観的に判断できる委員会
を構成し、原子炉の破壊状況と原因を究明するとともに、住民の安全を最優
先する立場から情報の迅速な全面公開を行うことを求める。

2.子どもと被曝弱者を守る 少なくとも、法定の年間1mSv以上の、放射能
汚染が高い地域に在住する子どもを、即刻集団疎開させる。乳幼児、妊産婦、
病人等の被曝弱者を即刻安全地域に移すこと。全ての保育園、幼稚園、学校
の給食食材の安全を確保するために、産地を選び、きめ細かく精度の高い放
射能測定を行う。

3.安全な食品確保と汚染の無い食糧大増産 住民に放射能汚染の無い食糧
を提供すること。「健康を維持できる限度値」(現在の限度値の100分の1程
度)を設定して限度値以上の汚染食品は市場に出さない。東電、政府の責任
で生産者にも消費者にも生活保障と健康保障を行う。これからずっと続く食
糧汚染を避けるために、休耕地を利用するなどして、非汚染地域で食糧大増
産を行う。高汚染地の生産者には移住して生産の担い手になる権利を保障す
る。水産物の汚染も非常に危険な状態に入っている。全ての漁港・市場に放
射線計測器を設置し、汚染されたものが流通しない体制をつくる。漁業者に
は補償を行う。

4.除染、がれきなどの汚染物処理 ずさんな除染は非常に危険であり、効
果も期待できない。一般住民に、除染作業による被曝をさせてはならない。
放射能拡散を防ぐため、汚染がれきなどは、放射性物質を放出した東電の責
任において収集し、原発敷地内に戻す。

5.精度の高い検診・医療体制の確立 内部被曝を軽視するICRP等により、
現状の医学・医療現場は放射線の影響を過少評価している。からだのあらゆ
る部位にあらゆる疾病の出現が懸念される。これらを丁寧に治療できる医療
体制を即刻実現する。保障対象の疾病を制限することなしに、放射能被害者
の無料の検診・医療制度を確立する。
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