明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(845)『美味しんぼ』素晴らしい!雁屋哲さん頑張れ!勇気ある発言を守り発展させよう!

2014年05月13日 21時30分00秒 | 明日に向けて(801)~(900)

守田です。(20140513 21:30)

日本の食を深く究めてきた雁屋哲さんの漫画、『美味しんぼ』が、福島原発事故の真実の一端をきわめて的確に報じてくれました。
原発事故で多くの人が鼻血を出した事実、さらに高度な汚染にさらされた福島が、人が住むのは困難な地帯になっていること、除染も効果があがらず、とてもではないけれども安全に住むことはできないことなどです。
大拍手です!これでこそ食べること=私たちの生命に一番密着したことを本気になって追いかけてきたこの作品の本領発揮です!

中でも秀逸なのは、原発事故被災者の当事者として、自ら鼻血を出したり、脱毛を味わうなどしながら、一貫して住民の安全のために政府批判を貫き行動してきた井戸川元双葉町長の訴えを、明快に掲載してくださったことです。
さらに早くから内部被曝の危険性を先頭に立って暴き、放射線防護活動を担ってきた松井英介医師のコメントや、一貫して福島全体の除染などとても無理だと主張してきた荒木田岳福島大学准教授の発言も丁寧に載せてくださっています。
先週発売された23号では、福島を取材に訪れた主人公らが鼻血を出すシーンが描かれましたが、本日発売された24号ではもっとつっこんだコメントが掲載されました。内容を少し紹介したいと思います。

まず井戸川さんはこう述べています。「私が思うに、福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被ばくしたからですよ」
続いて松井さんがこう説明しています。「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、放射線だけの影響とは断定できませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています。鼻血、眼、のどや皮膚などに不快な症状を訴える人が約800人もあったのです。」
「鼻の粘膜や毛細血管細胞の70~80パーセントは水でできています。水の分子(H₂O)は放射線で切断されて水酸基(・OH)のような毒性の強いラジカルと呼ばれるものになる。しかもラジカルがくっついて分子に戻ったとき、今度はオキシフルとして消毒薬に使われるくらい毒性の強い過酸化水素分子(H₂O₂)になることがある。
このように放射線は直接粘膜や毛細血管の細胞・DNAを傷つけますが、同時に水の分子が切断されて細胞の中にできる、ラジカルによる間接作用が大きいのです。まだ医学界に異論はありますが、鼻血や強い疲労感などに、その影響は十分考えられます。」

この松井さんの確かな説明を受けて、井戸川さんは再びこう語っています。
「だから私は前町長として双葉町の町民に福島県内には住むなと言っているんです。今までの対応から東電と国の言うことを信じてはいけないと思うからです。
今度の事故まで東電は原発は絶対安全だと私たちに信じ込ませていた。事故の起こった3月11日の15時36分には原発は電源喪失して冷却もできないことがわかった。そうなれば次にどうなるか誰にでもわかる。しかし国が避難指示を出したのは12日の朝5時44分です。」
「避難指示は出たけれど避難場所は用意されていない。避難道路も作られていないから道が混雑して逃げられない。そのうちに12日の午後3時36分頃1号機が爆発した。
しかし、それ以前の2時半頃、東電は圧力容器内の蒸気を抜くためのベント作業を行い、その際に大量の放射性物質を放出した。それで爆発以前に双葉町では毎時1590マイクロシーベルトを計測しているんです。そうとは知らず避難最中われわれはその放射線を浴び続けてたんです。」

「私は政府の事故対策会議にも、福島県の会議にも呼ばれたことがありません。それなのに、汚染土壌を貯蔵する放射性廃棄物の中間貯蔵施設を双葉郡に作ると国と福島県が言う。私はその福島県と双葉郡の会議に出席しなかった。それを町議会でとがめられて不信任決議を受けたので辞任しました。」
「私はとにかく今の福島に住んではいけないと言いたい。どんな獣でも鳥でも自分の子供を守るために全力を尽くす。どうして人間にできないんですか。子供の命が大事でしょう。」

さらに場面が変わって、主人公たちは「福島に住んではいけないというもう一方」に会いにいきます。福島大学行政政策学類准教授の荒木田岳さんです。荒木田さんはこう述べています。
「福島がもう取り返しのつかないまでに汚染された、と私は判断しています。問題の出発点として、この現実を認めるかどうかで対応が違ってきます。」
「私は除染作業を何度もしました。その度に、のどが痛くなるなど具合が悪くなり、終わると寝込む。」
「しかも除染をしても汚染は取れない。みんなで子供の通学路の除染をして、これで子供たちを呼び戻せるぞ、などと盛り上がっても、そのあとに測ったら毎時12マイクロシーベルトだったこともある。汚染物質が山などから流れ込んで来て、すぐに数値が戻るんです。」
「除染作業をしてみて初めてわかったんです。除染作業がこんなに危ないということを。そして、福島はもう住めない、安全には暮らせないということも。」

「私の買った土地は今でも毎時1.5マイクロシーベルトありますし・・・すぐ下の河原は1キログラム当たり43万ベクレルでした。愛着があっても自分の身体を蝕むかもしれないところで住むのか。その土地が汚染されてしまっている現実を直視するかどうかですね。」
「除染に意味があるとすれば・・・たとえば阿賀野川を除染して日本海に広がるのを阻止するなど、汚染を広げない作業です。」
「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います。」

まったくその通り。井戸川さんの言っていることも、荒木田さんが述べていることも、僕はまったく正しいし、勇気ある正義の発言だと思います。松井さんは医師としてそれを力強く補強してくださっている。
もちろん3人ともこのことを初めて述べられたのではありません。これまでも堂々と実名で、たくさんのバッシングをはねのけながら発言し続けています。その結果、たくさんの方の支持も集めてきています。
今回はそれを雁屋哲さんが取り上げてくださり、一気に社会的な論議にまでこの話題が高まりました。

みなさん。私たちは今こそこの勇気ある真実の声を守り、発展させる必要があります!
僕もこれまで繰り返し鼻血を出した体験者の方のお話を聞いてきました。いや鼻血は序の口に過ぎない。もっとたくさんの健康被害を耳にしています。
にもかかわらず、政府はこうした調査をまったく行わなかった。本当にそれが放射能のせいではないというのなら、実態調査を行い、データを示せばすむことであるにもかかわらずです。
こうした調査は、事故によって多大な不安をも社会的に作り出してきた政府が当然果たすべき責任でもありました。しかし政府は、実際には放射能による被害が広がることを知っていたから、そうした調査をしてこなかったのです。

政府が行ってきたのは、当初から事実をもみ消すことばかりです。そのことは井戸川さんがはっきりと指摘しています。
そもそも事故直後などは、膨大な放射能が出ているのに、それを周辺住民に教えもしなかった。そのためにあたらたくさんの方たちがしなくてよい被曝をしてしまったのです。
福島県もまったく同じ態度をとりました。それどころか福島県は、唯一、放射性ヨウ素の到来を前に安定ヨウ素剤の配布を行った三春町に「配布を止めよ」という強権的な命令まで発していました。
今、その政府と福島県が、『美味しんぼ』に罵声を浴びせていますが、「盗人猛々しい」とはこのことです。あるいは自らが人々を大量被曝させた後ろめたさがあるからこそ、真実を告げる人々を口を極めてバッシングしているのでしょう。

現実に広がっている健康被害は、鼻血だけではありません。視力が低下したり、記憶力が落ちたり、そればかりか心臓の病による突然死も増えています。これは福島市の大原総合病院が一時期データとして示したことです。
それだけではない。そもそも原発関連死によって2013年3月31日までで1300人以上の人々が亡くなっているのです。にもかかわらずこの原発事故による死についても政府はきちんと扱ってきていません。
事故がなければ亡くなることのなかった1300人以上の死の責任者の追及もまったくなされていないのです。あのひどいフェリー事故のあった韓国社会で、首相が辞任し、大統領が弾劾されていることと雲泥の差です。

こうした中で、今回、『美味しんぼ』は、封殺されようとしている健康被害を、断固として明らかにしてくれました。
国と福島県が強行してきた、まやかしの「除染」の矛盾も明快に示してくれています。このことにこそ、福島の人々、いや日本に住まう人々の命を真に守っていく明快な方向性があります。
だからこそこの声をみんなで守っていく必要があります。守るだけでは足りない。発展させなければいけない。

とくに私たちは今こそ、原発事故で最低でも1300人以上を死においやった政府と東電の責任を追及していく必要があります。
責めるべきは私たち民衆の側です。守るだけではいけない。責任者を追及しなくてはならない。その中で避難の権利を拡大し、被曝医療の充実化をはからなければなりません。
だからこそ、この論争にそれぞれの地域で、職場で、生活圏で、参加してください!自分の知っている真実を語り、『美味しんぼ』を応援し、雁屋さん、井戸川さん、荒木田さん、松井さんと肩を並べて、真実を響きわたらせようではありませんか!
今こそ、頑張り時です!私たち一人一人が未来のために奮闘すべき時です!


 

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2 コメント

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産経とYAHOOニュース (武尊43)
2014-05-15 01:05:04
ニュースにするのを避け始めました。これ以上深追いすると傷を負うのに気付いたみたいですね。逃げ足が速いなあ!
Unknown (ジジィ)
2014-05-17 23:48:03
すばらしいです。

国の言うことは信用できません。

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