ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

遠い山なみの光

2024年05月04日 | 文学

 今日は昨日とは打って変わって静かに過ごしています。
 まずは朝一番で散髪。
 夕方16時30分から精神科へ行く予定。

 その間にカズオ・イシグロの処女長編「遠い山なみの光」を一気に読みました。

 舞台は終戦後間もない長崎。
 そこで若い妊婦と彼女を囲む人々との日常が淡々と綴られます。
 その中に異色の人物が登場します。
 米国人の愛人から一緒に米国に行こうと誘われ、それに夢を抱きながら、いつまでも渡米がかなわない女です。
 主人公はそれを愚かな考えだとしています。
 しかし、その主人公自身が、その経緯は語られませんが、家族を捨てて英国人の夫と子供を抱えて英国に移住しています。 

 主人公と他の登場人物たちとの間で交わされる会話が印象的です。
 そこはかとなく漂う時代の変化に伴う諦念だったり哀愁みたいなものが物語に深みを与えています。

 カズオ・イシグロは長崎で生まれ、5歳の時に親の仕事の関係で英国に移り住みます。
 そのまま英国で過ごし、英国籍を取得。
 日本語はほとんど出来ず、英語で小説を書き始めます。
 その作品群は英文学として高く評価されます。

 個人的には「日の名残り」「わたしを離さないで」を好んでいます。

 

 

 この人がノーベル文学賞を取った時、村上春樹のノーベル賞受賞を期待し続けているハルキストの間で、微妙な空気が流れました。
 ハルキストの多くは村上春樹の作品同様、カズオ・イシグロの小説を好んで読んでいたからです。
 この人、ノーベル文学賞を取ったとはいえ、まだ老け込む年ではありません。
 これからの作品に期待します。

 


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