新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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口からア~ン(経口ワクチン 新型インフルエンザ)

2008-10-25 15:55:23 | インフルエンザ:対策/対策の進歩

各国各社、新型インフルエンザ ワクチン開発競争は熾烈です。 細胞培養法・DNAワクチン・万能ワクチン・経鼻ワクチン・・当ブログで紹介してきたネタも多々ありますが、今回は「口から服むワクチン」です。

米Vaxart社の発表。同社のND1経口ワクチンがフェレット用いた動物実験成功。
フェレットに4週間あけて2回投与、8週間後にH5N1をあたえたところ、75%に十分な効果が得られ、投与しなかった対照群は67%なくなり33%が衰弱(無事で済んだのはなし)とのデータです。

このワクチンのキーは、アデノウイルス5ベクターTLR3アジュバントを使ったところです。TLRとはtoll-like-receptorの略、「受容体(情報を受け取るアンテナ)」です。この受容体は、腸管細胞で最もよく働きます。これに目を付け、口から服んで腸管で効果発揮するアジュバンド(免疫増強剤)を開発したところがミソです。

新型インフルエンザワクチンが口からカプセルを服用するだけでよくなれば
*温度に安定(アンプルのように冷蔵庫で保存しなくてもよくなる)
*パンデミック時などの緊急配布に有利(モノを配れば良いだけ。どこかに集まり注射する必要なし)
*現行ワクチンのように注射する必要がないから、注射場所で感染拡がったりする心配なし。 この点クリアすべくドライブスルークリニック実験など米国でなされているわけですが、それすら必要なくなる)
*途上国においては、注射針の使いまわしによるHIV・肝炎など感染のリスクもなくなる

といったメリットが得られます。

我々日本人にとっても、インフルエンザワクチンが口からのめば済むようになれば痛い思いせずに済み福音ですが、これは、途上国にとってさらにありがたい話です。

私のスーダン在勤中、悩みの種は「頻繁かつ長時間の停電」でした。最悪、1日20時間停電した日も。 セネガルでもこれほどひどくないにしても、30分ぐらいの停電は結構日常的。すると冷蔵庫内の温度も変化してしまう。 まあ、大使館には非常用発電機が付いているので医務室冷蔵庫内のはいいとして、深夜着便でパリから帰ってきて、翌朝出勤するまで自宅冷蔵庫にワクチン保管するときは結構ヒヤヒヤだったりしました。

成功を祈ります

ソースは10月24日付marketwatch↓
http://www.marketwatch.com/news/story/vaxart-demonstrates-efficacy-oral-avian/story.aspx?guid=%7B7C603DEF-50CF-4C24-94DD-7A0A6B7CFBB6%7D&dist=hppr
Vaxart Demonstrates Efficacy of Oral Avian Flu Vaccine in Preclinical Studies

Vaxart社のHPは↓
http://www.vaxart.com/index.html

 

 

 

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