保健当局者がパンデミック等において、どうリスクコミュニケーションをすすめてゆくべきか。
米国のガイドライン制定。
- これまで、保健当局によるリスクコミュニケーションは必ずしも十分ではなかった。
- たとえば、インフルエンザ犠牲者発生にあたっても、デラウェア州においてはその詳細を発表したにもかかわらず、ノースカロライナ州では「ノースカロライナのどこかで死者発生」としか公表されなかった。
- 2002年グッドサマリタン病院におけるレジオネラ集団感染のときも、ロサンゼルス当局から、事実は、入院患者にすら十分に知らされなかった。当局には、自分達は社会一般より多くのことを知っており、一般大衆は悪いニュースを扱うすべを持たないとする文化があった。
- 詳細な事実を公表してゆくことは、当局は正直だと印象づけることにもなる。
- 2002年の例では、公表しないことにより、当局は隠蔽していると疑惑を招いた。
- アルカンザス州では、最初の犠牲者発生にあたり、個人情報保護法を盾に情報を出さなかった。場所も、ウイルスの型も、ワクチン接種有無も。これで世間は安心できるだろうか?すぐ近くかもしれず、ワクチンが効くのかどうかもわからず、新型かどうかもわからずで。
- 個人情報保護法が州によってそんなに変わるわけではない。場合によっては、当局が”安全策”で情報公開を絞ってしまう。これは危険なことで、で情報が出ないところで、「ウワサ」や誤った情報が出てくる。そしてそれが社会不安を起こしてくる。
- 医療ジャーナリスト協会organization of healthcare journalistsと当局(Assn. of State and Territorial Health Officials and the National Assn. of County and City Health Officials)と協働して、指針づくりをすすめてきた。
- その結果、保健当局は、真に公開しないことに明らかに正当な理由がある場合のみ情報を保留できるということになった。
- ジャーナリスト側にも、よろ幅広い背景を探ること、当局がすべての質問に答えないとき説明を求めること、個人のプライバシーを尊重することなどを求めている(Learn the broader context of an incident, seek an explanation when public health officials say they cannot answer all the questions, and respect individuals' desire for privacy)。そして、いかなる場合にも、葬式を邪魔するようなことや、語りたくないと言っている親族にコンタクトし続けることや、事実よrち噂を報じるようなことを正当化しないとしている。
- 今後も未知の疾患が出て来ることはあろうが、今回の指針により、次回は、プライバシーと、世間に知らせることが、よりバランス取れた形で実現するものと思われる。
SARSやパンデミックなど、公衆衛生危機において、プライバシー・個人情報保護法と「世間に知らせるべきこと」との葛藤というのは我が国においても非常に悩ましいものがあります。管理人が直接お話しした限りでも、心ある(だからこそなんでしょうが)記者の皆さんは悩みを語られる。
だからこそ、あらかじめマスメディアと当局が(冷静になれる時に)話し合ってガイドラインをつくっておくというのは、ぜひ日本でもと思います。
09年のパンデミックにおいて、厚労省担当者とマスメディア担当者の間にそれなりの阿吽らしきものは感じはしたものの、次回のパンデミックにおいては、そのどちらも、担当者は総入れ替えになってるはず(当然)。日本版指針が求められるところです。
ソースはLA times↓
http://www.latimes.com/news/opinion/commentary/la-oe-ornstein-health-information-20110801,0,7481347.story
Health officials, speak up
Some health officials have been slow to release information on various diseases, but now new guidelines are in place.
また、そのドラフト原文は↓でみることができます。
http://www.healthjournalism.org/secondarypage-details.php?id=965
Guidance on the release of information concerning deaths, epidemics or emerging diseases
医療ジャーナリスト協会HPから↓
http://www.healthjournalism.org/about-news-detail.php?id=124
Health officials, journalists agree on standards