すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

オバマ平和賞:小国の国際平和の作り方

2009-10-09 23:19:30 | Weblog
オバマ大統領が「核なき世界」を提唱ということでノーベル平和賞を受賞することになった。おめでとう!
ところで、ノーベル科学賞などは過去の実験や証明のように、成果に対する評価であり、平和賞も例外ではない。平和をもたらした個人さらには国連PKOのような団体の受賞も、平和構築の実績を受賞の根拠としている。一方、アウンサンスーチー女史や今回のオバマ大統領のように、まだ実績をあげていない人物への受賞がこの賞には特徴的だ。それは、ノルウェーというスカンジナビアの小国が、ノーベル賞という世界の権威を利用して、平和賞を贈ることによって、国際政治や国際社会に影響力を行使しようとしているのだと言っても過言でない。強大な軍事力もIBRDやIMFを動かすほどの経済力もない国が、一握りの賞金と国際的な名声というintangible asset(無形財産)を使って、自分たちが求める国際政治の理想を実現しようとする、実に巧みな政策展開なのだ。実はこのようなやり方をとっている小国にはスイスがある。国際赤十字というと何か、特定の国益と切り離された純粋にインターナショナルな組織のように考えられるが、そのICRC(国際赤十字委員会)幹部はスイス国籍を必要とするなど、きわめてスイスという国家の影響の強い組織なのだ。スイスは国連に加盟せずに、独自のネットワークと世界構想によって、同等のいやそれ以上の国際影響力を維持している。小国が独自性を発揮して国際社会で生きるには、これほどの努力を傾注しなければならないのだと我々に教えている。
オバマ大統領の核廃絶は逆に、大国が今後の国際社会で生き残る戦略の一環という側面がある。核に依存した戦略から、それを放棄することによって得られる安全保障を選択するのだ。翻って、日本には一体どのような生き残り戦略があるのか?いやおそらく、これからの世界が、国の生存をかけた競争社会だという認識すらないのだろう。圧倒的多数の議席を確保した与党に席をおきながら、背筋の寒くなる思いでオバマのノーベル賞受賞のニュースを見つめた。