すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

崩れつつある日本社会の長所

2008-01-24 23:19:39 | Weblog
昔のことを言ってもしょうがないが、昔はデパートの売り子さんなどがおつりを間違えることはなかった。しかし、今、そのつもりでおつりをそのままポケットに入れるとあとで砂を噛むような思いをすることがある。お金をあつかう窓口の業務の正確さにも疑問符がつく。
ときどき、「ななんだこの社会は!」と驚き嘆くことが多くなったのは、別に小生が年をとって最近の若者を憂う気持ちが強くなったからではない。昨日はNGO事務所の電話が突然不通になりあわてた。請求書や再請求もないから、どうしたのかと何度も各所に電話をかけてようやく分かったことは、次のような話だ。いままでほっておいたISDN(まるで詐欺のような回線だった)をアナログ回線に戻したのだが、その際に切り替えを請け負った業者が、銀行引き落とし継続の手続きを忘れ、一方で請求の手続きをとらなかったということらしい。工事請負業者、具体的工事をする人、工事を手配する業者、請求をする業者がすべてちがい、一体だれが責任を持つべきかわからないシステムになっている。民営化や合理化のシンボルみたいなアウトソーシングだが、全体的な効率や責任体制のないまま、単純に各業務では経費削減しても、全体ではとんでもないリスクがあることに気付かない。郵政民営化もそうだが、こうした社会の仕組みは日本全体に広がりつつあり、その一方で、日本社会がはぐくんできた社会システム、そして質の高い人的資源とそれを育てるシステムが、がらがらと音を立ててくずれつつあると思う。こんなことは、とりとめもない話だが、一方で、日本には潜在的ではあるが巨大な社会リスクが生まれようとしていると思う。

NHK会長辞任表明

2008-01-21 22:50:28 | Weblog
NHKスタッフのインサイダー情報による株取引が表面化し、その責任をとって橋本会長が任期切れの3日前に辞任表明となった。市場を健康に保つには、情報が正しくまた誰もが平等でそれにアクセスできることが前提だ。アメリカではすでに10年以上前から、夫婦間たとえば妻が証券会社で、夫が企業の上場担当という関係で当該企業の株取引をすれば、インサイダーとみなされる判例があるほど情報アクセスについては厳しい。日本では、自分たちが勤める会社のことで夫婦が情報交換をするなど当たり前なんて感覚がまだ残っている。知人や職場の仲間同士での情報交換も頻繁で、かってはそれが組織効率を生むと推奨された。こういう風土で今回のNHK問題が表面化したのだが、このような関係は民放でも常態化しているのだろう。本人が直接証券会社に電話して取引すれば、証拠も残るが、第三者に情報を流して値の上がる可能性がある株をかわせれば、実態の発見は難しい。今回の事件がこれまで大きくなったのは、年頭からの株の急落で大損害を受けた人々の怒りがその背景にあると思う。国会議員や官僚も同様だが、情報に最も早く接するジャーナリストには、より厳しいガイドライン設定が求められる。

ボロのでた環境ビジネス

2008-01-19 22:53:00 | Weblog
こんな偽装ってありか?と驚かされたが、日本を代表する製紙六社が再生紙にしめる故紙率を誤魔化していたことが判明。最初は年賀葉書だったが、封筒やコピー用紙までおよそ再生紙なるものが、実際はほとんどバージンパルプを使用した普通の紙であることが判明。製紙会社では、中国などの海外需要があるので、国内で良質の故紙を集められなかった...なんて言い訳を言っているが、問題はもっと本質的なところにある。
環境問題に対する関心の高まりを受けて、企業イメージをよくするために、わざわざ「再生紙」と印刷した紙を使うのが流行していたが、多少なりとも、環境問題を研究したものはそんなのが嘘偽りであることは最初からわかっていたはず。そもそも再生紙は、故紙処理費用が高く、普通紙よりコストがかかることは、常識。たとえば再生紙を使った名刺を作ろうとすればすぐわかる。さらに化学薬品大量使用など環境汚染につながることも知られていた。
このことはゴミ処理やリサイクルと同じで、住民に分別させて回収したゴミを同じ焼却炉でまた一緒に燃しているまるで詐欺のような某自治体のゴミ処理などは論外だが、本当にリサイクルやリユースが経済効率的にもまた社会効率的にも行われているのかチェックすべきであろう。
この問題が深刻なのは、これまで「環境にやさしい」とか、「環境のことをよく考えている」とか、「環境を配慮した」とかいう宣伝が実はかなり怪しいものであることが次第にわかってきたことである。日本での環境対策というのは、真に環境によいことをするというより、環境という装飾語を使うことによって、古臭い商売中心主義にカバーをかけているという実態であろう。品質や賞味期限の偽装ではなく、イメージの偽装というべきか。
リサイクル・リユースの優等生といわれた製紙分野で、「環境にやさしい」というラベルの虚構性が露見したが、もっといかがわしい環境対応製品・サービスが満ち溢れている日本社会、たとえ嫌われても、誰かが真実を語り続ける必要がある。

カキカレー

2008-01-15 23:22:18 | すとう信彦の料理談義
先日新宿の紀伊国屋書店に行ったが、つい懐かしく感じて中村屋のレストランに行った。何かそれは昔からセットみたいな行動パターンだ。ここのカレーは決して安くないと思う。カキのカレーなるものがあり、珍しい感じがして1700円を奮発。今日は早速、それをパクッテ、中村屋風カキカレーを作った。肉の入らないルーをつくり、それに多少多めに塩をいれた水を沸騰させ、ごく短時間湯通ししたカキをカレーのルーへ。中村屋のカレーは結構辛かったので、これで生臭さを消すのかなとおもい、レッドペパーの粉末を加えた。ただそれだけのことだが、存外旨い。ぎとぎとしたすね肉のカレーに飽きたらこんなのも簡便でいいなと思う。つき合わせに小生の畑からキャベツを取ってきて、これまたパクリだが、たいめい軒風コールスロー。それにカリフラワーのカレー風味も添えた。最近、国会情勢がしまらないのでもやもやしていたが、それもカレーの辛味で吹き飛んだ!単純な性格だな。

マイケル・ムーア監督作品「SICKO」上映

2008-01-14 00:50:46 | Weblog
1月12日にセンター北の歴史博物館でマイケル・ムーア監督の「シッコ」を上映。民主党が借り受けた35mmフィルムをようやく放映するまでにこぎつけました。アメリカの医療崩壊(より正確に言えば医療保険制度の矛盾)の現状を描いたドキュメンタリー作品で、確かにアメリカの病理を描き、ブッシュファミリーとオサマ・ビンラデンとの関係などを追及した「華氏911」に匹敵する作品として国際社会から高い評価を得た映画ですが、はたして実際どれだけの人が街頭宣伝程度で来場していただけるか、最後の瞬間まで心配でした。しかも、当日はみごとに天気予報に裏切られて、朝から冷雨...それでもななんと100名近い参加者があって、感動しました。これまでにも何度も政治と文化とか、平和と音楽とか、政治とNGOとか、政治を市民生活に近づけるためにいろいろな試みをしましたが、ほとんど反応がなかったことを考えると、やはりムーア監督や「シッコ」の評判なのか、それとも日本での医療崩壊が深刻になっているのか...ともいろいろな考えが頭の中をかけめぐりましたね。病院にいるのは本来は患者=patientですが、sickoというのは、そうした患者を欠陥製品みたいに軽蔑して呼んでいる医療関係機関のことを非難するために、あえてこうした蔑称というか差別用語を映画の題にしたのでしょう。
この映画の広告に「テロよりコワイ医療問題...」みたになサブタイトルがついていましたが、まさに911テロのように劇的ではない代わりに、ゆっくりと苦しみながら、しかも誰にも関心をはらってもらえずに、社会の廃棄物のように捨てられる患者=普通の市民の苦しみを表現していると思います。
恐ろしいのは、この映画を上映したのは、アメリカの医療崩壊の現状は、日本の医療崩壊の未来...というもくろみですが、現実にはそれを超えて、日本の医療崩壊の実態がアメリカの現実にもうすでに追いついてしまっていることです。アメリカで医療費を払えない患者をタクシーで貧民街に置き去りにするシーンがありましたが、それこそまさに最近、日本で起こった現実です。
放映のあと、医療専門家の山崎まやさんと二人でディスカッションをしましたが、多くの観客が映画のあともそのまま残り、熱心に聞き、質問していただいて、改めてこの問題の深刻さと市民の関心の高さを知ると同時に、日本の皆保険制度は必ず守らなければならないと痛感しました。