すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

アメリカの中間選挙に利用されたTPP閣僚交渉

2014-09-26 12:09:12 | Weblog

 オバマ大統領が明言する今年中のTPP合意文書形成!そのためにはまず日米合意が必要ということで、交渉進展のない事務局会合、主席交渉官会合を飛び越えて一挙に政治決着を図る...と意気込んで甘利大臣はワシントンに向かったが、そこは貿易交渉の地ではなく、11月4日の中間選挙の戦闘地域。
 この日経新聞の記事では、車部品とか、牛肉関税定率化などで合意せず...みたいな記事になっているが、アメリカはこんな時期にそんな問題で譲歩する意思はさらさらない。これまである程度の合意が形成されていたアメリカの自動車部品関税撤廃だが、今回は急にちゃぶ台返しの関税維持をUSTRが言い出し、交渉は最初から破綻。。。というが、 要するに今回の交渉はオバマ政権が「日本を厳しく指導している」という政治ショーであって、そんなところにのこのこ出て行く甘利大臣の政治センスを疑う。
 TPP交渉は完全に乗り上げており、時間がたてばたつほど問題は多面化し先鋭化してくる。そんな状況を理解せず、日米間の農業と自動車の交渉が決着すればTPP全体が成立すると誤解しつづけている日本政府の国際経済への無理解と外交音痴はおそるべきものだ。実はTPPに反対する人の中にも、日米がもう農業分野で手を結んでいるとか、秘密裏に特定水準が合意されている...なんてしたり顔で言う人がいるが、それもアメリカ議会やアメリカ政治に対する無知や無理解から生まれている。
 そうした情報の出所を探っていくと、どうやら自民党の農業関係議員だと思う。要するに「もうアメリカとは握っているから、後は悪いようにはしない、まかせておきなさい...」というようなことで農業団体や農家をひきつけているんだと思う。
 TPPの本質的な大問題は、貿易交渉権限のTPA問題とくに協定に通貨操作禁止条項を加えろ、バイアメリカン法強化の条項を加えろというアメリカ議会の圧力、そしてブルネイなどイスラム国家の取り扱いなど、日米交渉などとは比較にならないほどの巨大な障害が控えている。
 推進する側も、そして反対する側も、しっかりと現代のグローバル経済の下での貿易交渉のあり方を研究し、軽挙妄動することなく、本当の国益を求めて行動してほしいものだ。

戦艦ミズーリはなぜパールハーバーに在るのか(3)ーカミカゼが残した5cmのくぼみー

2014-09-25 11:18:59 | Weblog

 大勢詰めかけたアメリカ人観光客がほとんど関心を示さない後部甲板の片隅にその掲示はある。上の写真は、太平洋戦争の写真の中でも特に劇的な、沖縄戦の最中、ゼロ戦がミズーリに突入する瞬間の映像だ。
 この時期にはアメリカ軍は現代兵器の先駆けとなる電子兵器やシステム的な防空システムを完成させ、上空からの突入はもう無理だった。特攻機はレーダーに発見されないよう、そして対空砲火のドームに引っかからないように、鹿児島から海面すれすれを飛行して突入した。特攻機からすると、限られた視野の中で敵艦を発見することすら困難だったはずだ。
 その中で弾丸の壁を突破してアイオワ級戦艦に体当たりしたこと自体、奇跡に近い。搭載された爆弾は破裂しなかった(あるいは海中に落下していた)。鋼鉄の塊に、ジュラルミンと木でできた機体はそこに激突して5cmのくぼみを作った。それが今でも残っている。なぜ爆弾が不発あるいは海中落下したのかわからない。しかし、客観的に言えることは、空戦性能向上のために操縦席の防弾すら犠牲にして軽量化した機体に、250キロの爆弾を外装着すること自体が無理というか無意味だった。サラブレッドの競馬馬に道産子レースの橇を引かせるといったら、みんな笑うだろうが、同じことがまじめに批判をゆるさず行われ続けた。
 最近、ゼロ戦を美化した映画や小説が脚光をあびた。ゼロ戦の初期の活躍はすばらしい。しかし、たちまち戦争の冷徹な合理性の壁に消耗していった。それでも過去の栄光が忘れられない日本は本土防空戦闘機の代わりに、空戦戦闘機を作り続け、そしてそれに重い爆弾をくくりつけて片道旅行に送り出した。長期の戦争遂行という視点からは、ゼロ戦は実は欠陥機なのだ。
 世紀の大成果を挙げた特攻機の操縦者は記録されていない。勲章も授与されていない。なぜか?日本は特攻の客観的評価を行っていなかったからである。評価があれば、このパイロットは賞賛されただろうし、そもそも無成果な特攻自体が早期に否定されたろう。
 突入箇所に残されたパイロットの上半身は、ウイリアム・キャラハン艦長によって翌日正式海葬された。艦長には日本人を代表して心からお礼を言いたい。
 特攻機が作った5cmのくぼみは、私の脳にも同じ深さのくぼみを作った。

戦艦ミズーリはなぜパールハーバーに在るのか(2)

2014-09-23 08:46:11 | Weblog

 戦艦ミズーリは敵国日本を降伏させた証として、ちょうど開戦時の記念碑とのペアで、降伏調印が行われた記念碑として展覧されている。中学の社会科の教科書以来、マッカーサー将軍の前で降伏宣言に聞き入っている日本代表そしてそれを見物する各国代表や多くの水兵....の写真は何回も何回も目にしてきた。しかし、その場所は戦艦で最も広い空間すなわち、第一主砲と舳先のひろい甲板で行われたのばっかり思っていた。ところが実際の署名場所は第二砲塔の横、テニスコートというより卓球コートのような狭い場所で署名式典は行われたのだ。その場所が甲板上に残されている。ここがジャップが降伏した場所だ!
 降伏文書のレプリカ展示の下に、そのシーンの写真がある。不思議に思うのは、マッカーサー以下皆、座って署名しているのに、重光葵外務大臣と梅津美治郎参謀総長は立ってサインしている。敗戦国の代表には椅子すら与えないということだろうか?
 同時に、この文書で、歴史的な椿事も目にすることができる。降伏文書に署名するカナダ代表が署名の欄を一行間違えて、以下のほかの国含め署名者がすべて他国代表になってしまったのだ。これでは正式の国際協定として発効しない。その事実をオランダ代表から告げられた日本全権代表も、当初はこの降伏文書が正式の協定として発効しないと拒否したそうだ...
 また、このときアメリカは二枚の国旗を掲げたと伝えられる。一枚は言うまでもなく当時のアメリカ国旗だが、もう一枚はペリー提督が日本を開国させたときに旗艦に掲揚されていたものとのこと。日本を二度屈服させたというアメリカのおごりと言おうか、敗者をこのうえない屈辱感に満たさせる工夫と言おうか...
 そもそも太平洋戦争でほとんど活躍しなかった戦艦ミズーリがどうして降伏調印の場なのか?その場にふさわしい、幾多の犠牲を乗り越えて生き残った戦闘艦はいくらでもあったろう。選ばれた理由はたった一つ。それはトルーマン大統領の強い要請だが、それは要するにトルーマン大統領の選挙区がミズーリ州で、地元上院議員トルーマンの愛娘がシャンペンをなげて進水させたからだ。歴代アメリカ大統領の中で最低の評価が与えられた二流政治家のくだらない地元対策の一環として利用された時間と空間...寂寞たる思いだ。

戦艦ミズーリはなぜパールハーバーに在るのか(1)

2014-09-20 10:28:39 | Weblog

 戦艦ミズーリ(アイオワ級BB53)は太平洋戦争末期に就役し、沖縄戦他北海道や日立での艦砲射撃に参加した。その後、巨額維持費が無駄とと批判され、巨体をもてあましながら生きながらえて、第一次湾岸戦争にも現役参加し、クウェートでフセイン軍陣地に艦砲射撃や巡航ミサイルを発射するなど、効果的な攻撃でというよりアメリカ海軍の栄光のシンボルとして1992年にロングビーチで退役した。それがなぜニューヨークやボルチモアでなく、パールハーバーに繋留されているのだろうか?
 それは言うまでもなく、その舳先にあるアリゾナ・メモリアルにある。1941年12月の真珠湾攻撃時に1000余名の乗員とともに沈み、いまなお海中から重油をもれ続けている戦艦アリゾナが、アメリカの太平洋戦争の犠牲のシンボルなら、1945年9月に艦上で、憎むべきジャップを降伏させ、衆人環視の下で降伏文書に署名させた戦艦ミズーリはアメリカの勝利と栄光のシンボルであり、いまなお海中に残された乗員に「このようにジャップをやつけましたよ、安心してお眠りください」という慰霊のメッセージなのだ。
 私は別にそうしたアメリカの意図を批判しているのではない。これが軍事の政治の常識であって、多くの国がおなじようなモニュメントをもっている。アメリカは終戦後70年近くなって、まだその記憶を忘れない...どころか、リニューアルしている。それが次に出現する新たな敵に備える道なのだ。実は、アメリカ海軍は日本の港に入港するときに、硫黄島陥落や沖縄戦勝利のように、アメリカ軍がジャップを破った日を選んできて、それより早くついた時には、わざわざ沖合いに一泊してからその記念日にあわせて入港している...と昔、外務省の高官から聞いたことがある。
 別にそれを非難しても始まらない。それは所詮、アメリカの意思だ。問題なのは、「アメリカはまだ太平洋戦争を忘れず、記憶し続け、さらにいつかまた日本と敵対する可能性に常に準備している」という現実だ。日本がアメリカと衝突するなんて...とノウテンキな日本人は笑うが、アメリカは真剣なのだ。そう考えると、戦艦ミズーリをわざわざハワイまで持ってきて、あの位置に繋留しておく「呪術的」意味の一端が理解されると想う。

パールハーバーで展示されている「回天」に想う

2014-09-19 10:11:40 | Weblog
 パールハーバーは現在、展示のほとんどが民間委託されていた。有名なアリゾナメモリアル(1000余名の乗員とともに沈没した戦艦アリゾナの上に建てられている)も以前は見学無料だったと記憶するが、今では愛国心発揚にもお金を取るらしい。アメリカ人観光客の人気はJAPの船を何十隻も沈めた潜水艦だ。その傍に、人間魚雷の回天が展示してある。まあ、誰も見ない。たまに東洋人やマニアが写真を撮りに来る程度だ。
 なぜ回天がここにあるのか?それは言うまでのなく、戦利品だからだ。歴史ではなく、戦争に勝った証としての展示物だ。ここだけでなく、アメリカ各地で、それは常に美と愚の対比というかたちで展示されている。
特定目的のために全ての無駄(?)な要素を切り捨てた船体には、一種の構造美があるのを否定できない。
 しかし、ただでさえスペースの無い、潜水艦に搭載するという無理な設計から、回天の潜行は安定せず、実戦いぜんの訓練中に多大の事故と犠牲を生み出した小型潜水艇を日本は「回天」と命名した。明治維新の回天の偉業から採ったものだろう。このような空疎な命名こそ、日本の当時の軍と政府の幼児性と精神的な貧しさを示すものに他ならないと思う。
 こうした標語つくりこそ、日本を誤った方向に引きずりこむ日本社会の欠陥に他ならない。敗色濃い戦況の中で、制空権も、制海権も資源も無いなかで、生還を一切予定しない潜水艦がなぜ「回天」なのか?
この「回天」の英語名が中央のプレートに貼り付けられている。「suicide torpedo」自殺魚雷...血も涙もない無情の翻訳だが、この訳のほうがいかに現実を説明しているかは明らかだろう。
 アベノミクスや東京オリンピックの「おもてなし」そして連日連呼された「絆」も、その現実と実態からかなりかけ離れたものに思える。日本は言霊の世界と言ってしまえばそれまでだが、こうした現実離れした美しい標語や命名にこそ、日本社会の本質的なリスクが潜んでいると思えてならない。

御用新聞にもアベノミクス死亡広告

2014-09-06 10:28:00 | Weblog

円安になっても輸出は増加せず、輸出増加のドライブを成長戦略の核に予定したアベノミクスの原理が根本から否定されたのはもう何ヶ月前か?ついに最近では円安になっても株価は上がらず、GPIFによる国民最後のよりどころの年金もぶち込んでの株価操作も効かない状況となった。一方、輸入価格は残酷なまでに冷徹に円安を反映して上昇。政府は農産物の輸出が増加したと大宣伝しているが、そんなキャンペーン輸出を尻目に、生活必需品は着実に確実に上がり続けている。TPPが万一成立したら、農産物のほとんどが輸入になるだろう。TPPは是非を問うのではない、単純に日本社会の自殺行為なのだ。
アベノミクスはもう何ヶ月も前に死亡が確定したのだ。そんなことはミンナわかっている。そして今日ついに官報にそれが貼り出された。そういうことだ。