李先生は旧制高校時代、父親から日本の陸軍士官学校に行けと言われていた。
それはそこで軍事技術を学ばせ、その後、中国や満州でゲリラ活動をしていた「独立軍」に参加させようと考えていたからだった。
父親は日本と軍事的戦争をしてでも朝鮮独立を成し遂げたいと考えていたのだ。
にもかかわらず、その日本の女性が理不尽にソ連軍にレイプされることは許さなかった。
吉田清治が言っていた奴隷狩りのような慰安婦強制連行があったとは到底思えないのだ。
その李先生は、北朝鮮の工作により、1980年代から歪んだ韓国現代史の見方が広がっていることを懸念されていた。
北朝鮮は親日派を処断し、中国やソ連とも一定の距離を置いて自主の国づくりを進めたのに対し、韓国は親日派を処断せず、さらには親日派の朴正煕がクーデターを起こして政権を掌握して親日派の国になってしまったーという「反韓史観」である。
その歴史観によれば、経済的には韓国は見せかけの繁栄はしているけれども、民族主義の立場からすると、国家としての正統性は北朝鮮にあるというのだ。
民主主義国家として先進国の仲間入りも果たした韓国よりも、独裁世襲体制下で住民が密告・監視の恐怖に怯え、大多数が飢餓と貧困に苦しむ北朝鮮を評価する論理の倒錯は説明するまでもない。
だが、朴槿恵大統領が反日強硬姿勢を止めることができなくなっているのも、この反韓史観の蔓延が背景にある。
「おまえの父親・朴正煕大統領は日本の陸軍士官学校を卒業した親日派だった」と批判されることを恐れているからであり、韓国発展の大功労者である朴正煕氏でさえ「親日派」として否定する歪んだ歴史観に正面から反論できず、迎合しているのだ。
こうしてみると、日本と韓国のそれぞれの歴史を否定する歴史観によって、両国関係が悪化してきたことが分かる。
北朝鮮と中国という全体主義勢力と一致して対峙せねばならない自由主義陣営の亀裂を目論む勢力が、ほくそ笑んでいることだろう。
この稿続く。