以下は前章の続きである。
見出し以外の文中強調は私。
SKハイニックスのスパイ活動
東芝の公式発表における「政策投資銀行と米ベインキャピタルによる買収」とは裏腹に、韓国大手メモリメーカーであるSKハイニックスがこそこそと、ベインキャピタルの議決権付き転換社債の引き受けという裏取引を行なおうとしていたという衝撃のニュースが流れた。
「転換社債」とは、半分は債券の性格だが、ある一定条件に達すると株に転換できるもので、株に転換されたら株の取得と全く同じなので乗っ取りも簡単だ。
「SKハイニックスは、企業連合の一つに融資するので議決権がない」とコメントした東芝の綱川社長の二枚舌に、株主が怒りを覚えたのも当然だろう。
SKハイニックスこそが、ウエスチングハウスの他に東芝を奈落の底へと引きずり落した“犯人の一人”なのだ。
2014年に報道されたが、サンディスクの元社員杉田吉隆が2008年から2010年にかけてSKハイニックスに雇われて東芝のメモリ技術を韓国へと流出させたのである。
東芝がNAND型フラッシュメモリを開発したのは1987年。
SKハイニックスが開発に成功したのは2004年と、東芝から遅れること17年だ。
ところが、杉田吉隆が技術を流出させた後の2013年には、17年技術的に先を走っていた東芝に技術が追い付き、今年には過去最高益を出した。
こんなことがあるだろうか。
もちろん、東芝は、SKハイニックスに対して不正競争防止法違反訴訟を提起して勝訴したが、年間一千億円の利益を生み出す技術を盗まれたのに対して、認められた損害賠償額はたったの三百三十億円という、SKハイニックスにとって「盗み得」という判決だった。
そして、技術的に劣っていたはずのSKハイニックスは、2017年1~3月期に過去最高営業利益をたたき出した。
盗んだ技術で作る製品は研究開発費の原価配賦を必要としないためにコストが安くできる。
技術を守らなければ、日本企業の研究開発費が、投資分を回収できなくなってしまうのだ。
ところが、日本企業の技術を守ろうにも、日本はスパイ防止法を成立させられなかった。
実行犯の貧乏な日本人だけが逮捕されて、主犯であるSKハイニックスの役員たちは何のお咎めもなく本国で「最高益」を出し、莫大なボーナスで贅沢三昧に耽っているのである。
日本国内での訴訟が終わったとはいえ、SKハイニックスには、まだ東芝から差し止め請求などを食らうリスクはある。
だからこそ、東芝メモリの経営介入や株主特別決議の拒否権を握ろうとしているのだ。
この稿続く。