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日本車と競う「メキシコ車」 生産の新興国シフト加速/省エネ技術でCO2削減…日経新聞11月28日9面より

2011年11月28日 17時19分42秒 | 日記
米国の自動車市場で日本車を最も激しく追い上げる存在は何だろうか。多くの人は韓国の現代自動車を思い浮かべるだろう。あるいはフォルクスワーゲンなどドイツ勢も侮りがたい。

だが、日本車にとって、すぐ後ろにいるライバルは韓国車でもドイツ車でもない。生産地に着目して日本車を「メード・イン・ジャパン」車と定義すれば、米国の南に位置するメキシコこそ「日本車」と最も競い合う存在だ。

日本貿易振興機構のメキシコ事務所によると、米市場で今年1~10月に販売された新車のうち、日本から
の輸入車は全体の11・1%、メキシコからの輸入車が10・7%を占め、ほぼ互角の台数になった。

以下ドイツからの輸入が5・O%、韓国が4・4%と続く。ちなみにりーマン・ショック前の2007年には同じ定義で日本車が12・9%、メキシコ車が7・5%とかなり開きがあった。メキシコ車の急速な台頭ぶりがよく分かるだろう。

むろん消費者が「メキシコ車」と聞いてピンと来るわけではない。彼らが選ぶのはあくまで日産自動車の 「セントラ」であり、フォード・モーターの「フィエスタ」だが、それらは国境の南からやって来るのだ。

メキシコ車の伸長は今後も続くはずだ。日産やホンダが生産能力の増強を固め、マツダも工場新設に乗り出す。円高に苦しむ日本車」を逆転するのも、時間の問題とみられる。

自動車産業に詳しいみずほコーポレート銀行・産業調査部の米沢武史参事役は「リーマン・ショック以降、米消費者の財布のひもが引き締まり、小さく安いクルマが売れ筋になった。メキシコの人件費は米国の7分の1で通貨も弱い。廉価車の拠点として立地優位性が極めて高い」という。

自動車産業が離陸すれば、吸い寄せられるように、ずそ野の産業集積も加速する。それも最近はいわゆる下請け部品会社にとどまらず、資本集約的な素材産業までもがワンセットで進出する。

メキシコでは新日本製鉄が自動車用の亜鉛めっき鋼板工場を建設中。担当の樋口真哉常務は「メキシコと日本には経済連携協定(EPA)があり、非常に仕事がしやすい」という。同社は中国やインド、ブラジルでも自動車用鋼板事業を展開し、国内にじっと閉じこもる以前のイメージから面目を一新した。


「軽い産業」と「重い産業」という対比がある。前者の典型は労働集約の縫製工場などで安い人件費を求めて転々とし、今はバングラデシュやカンボジアがブームという。とうの昔に外に出た家電の組み立てなども軽い産業の部類だろう。一方、自動車や素材は「部品点数が多い」「投資が巨額」などの理由であまり身軽ではなかったが、常識は変わりつつある。

昨年は日産が小型車「マーチ」の生産をタイに移し、そこから日本に輸入を始めたことが空洞化の文脈で話題になったが、米国にとってのメキシコは日本にとってのタイ(あるいは東南アジア)かもしれない。

パジャマやDVDプレーヤーと同じく、クルマも南でつくり、北に売る時代。そのとき国内の雇用や産業集積をどう維持するのか、非常に重いテーマである。(編集委員 西條都夫)

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