文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

私の履歴書 佐久間良子 心の流転、全身全霊注ぐ…日経新聞2月22日40面より

2012年02月22日 18時52分40秒 | 日記
1983年4月、帝国劇場で初演した舞台「唐人お吉」は忘れられない作品である。幕末、開国を迫られた激動
の歴史の陰で一生を翻弄されたお吉の悲しい物語。

幕府の命令で恋人、鶴松との仲を裂かれ、米国総領事ハリスらの世話をさせられたお吉は世間の冷たい偏見に
さらされ、酒におぼれる。やがて物ごいに身をやつしながらも鶴松を思い続け、最後は入水して自らの命を絶つ。

「10代後半から50歳前後までの生涯を通しで演じるのは役者冥利に尽きる。生半可な覚悟ではとても演じられない……」。私は演技に全身全霊を注ぎ込むことにした。

演出は石井ふく子先生。お吉の心の流転を何度も話し合いながら、きめ細かく丁寧に演出してくださる。何よりも演じる役者に愛情を持って教えていただけるので、安心して役作りに取り組めた。「最も大事なのはお吉さんの心になりきることだ」。舞台に臨むにあたり、私は自分にこう言い聞かせた。

若々しい張りのある少女の時の声も、酒焼けでしゃがれた晩年の声も、。さらには左の手足がアルコール中毒で不自由になってしまった姿も、体の内側から自然に流れ出るように演じられるまで毎日、けいこを繰り返した。

大きな帝劇の舞台と客席の空間を埋めるのはかなりのエネルギーが必要になる。総領事ハリスの元に奉公に上がり、そこで無理やり辱めを受けた場面では、自らの体を清めるため、桶でくみ上げた井戸水を頭からかぶって、お吉の悲しみと怒りを表現した。

当時、舞台で水を使うことはあまりなかったと思う。だが帝劇のスタッフの皆さんに親身になって協力していただいたおかけで、観客の方々が驚くほど迫力のある場面をつくりあげることができた。どんなに身をやつし、ボロボロになってもお吉の鶴松への愛は決して消えることはない。

ラストシーンでは鶴松からもらった赤いサンゴのかんざしを右手に持ち、それを高々と掲げて一歩一歩、川の中に足を踏み入れていく。「おてんとう様もいらない。世間もいらない。お金もいらない。このかんざしさえあれば、いつでもおまえさんと一緒だものね。待ってておくれ。鶴松、お吉、鶴松……」

静まり返った客席から、やがて、ささ波のように拍手が湧き起こり、大きな嵐となって劇場全体を包み込んだ。舞台と客席がしっかりと一つになったのを感じ取った感動の瞬間たった。それは生涯忘れることができない。

公演に臨む際には、必ず一人で静岡県下田市の宝福寺にあるお吉さんの墓に参り、大好きだったお酒を供えることにしている。愛に生き、愛に死んだ悲劇の女性。墓石の前で静かに手を合わせると、「ありがとう……」というお吉さんの声が天国から聞こえるような気がするのだ。気を入れなければ決して芝居の心は観客に伝わらないー-。

公演を重ねるたびに芝居が深まっていく。もしかすると、お吉さんが私に力を貸してくれたのかもしれない。石井先生をはじめスタッフの方々の力に支えられ、私は菊田一夫演劇大賞(83年啓、文化庁芸術祭賞(94年度)というご褒美をいただくことができた。

芸術祭賞の授賞式に出席した父はとても喜んでいた。デビューして以来、私の仕事を黙ってずっと見守ってくれた父。その時の笑顔をつい昨日のことのように懐かしく思い出す。(女優)



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