文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

内田樹の大市民講座 グローバリストを信じるな…週刊アエラ11.7号から。

2011年11月02日 16時55分33秒 | 日記
もう購読すべき人は購読し、それ以外の人が今から購読する事はないでしょうから、今週号の週刊アエラ冒頭のコラムを出来るだけ多くの方に御紹介しましょう。

芥川と全く同等の頭脳を持った超弩級といっても過言ではない(笑)今、最もエネルギーに満ち溢れている学者…本人が言ったのか周りがそう言っているのかは知りませんが、メディアは「思想家」という肩書を与えている…内田樹の、魂が迸(ほとばし)る論説を読んで下さい。


グローバリストを信じるな
 
ウォール街を占拠した若者たちに連動した動きが世界各地に波及している。「強欲資本主義」と格差の拡大と若者の雇用状況に対する異議申し立てである。
 
同種の抗議運動が世界に燃え拡がっているということは、いま全世界的に「同じ社会状況」が生じているということを意味している。世界中で、強欲な資本家たちが権力と財貨と情報と文化資本を独占し、「持てる者」と「持たざる者」の二極化が進行し、中産階級がやせ細り、若者の雇用機会は日々失われている、ということである。
 
これは私たちにとってもはや「対岸の火事」ではない。世界中の国が同じ崖に向かって転がり始めているのである。EUの連帯は綻びるだろう。中国の貧富の格差は遠からず忍耐の限度を超えるだろう。アメリカは市場開放をごり押ししてくるだろう。ロシアは北方領土カードを切ってくるだろう。「移行期的混乱」に備えて手立てを講じなければならない。
 
残念ながら、日本の政治家と財界人とメディアが勧奨しているのは相変わらず「さらなるグローバル化」だけである。国際競争力のありそうな産業分野に、ある限りの資源を集中して、そこを突破点に経済を浮揚させる(競争力のない産業分野は滅びるに任せる)というアイディアをクローバリストは芸もなく繰り返す。「勝ち目のあるところにある限りの資源を投じるべきだ」と。
 
だが、20年ほど「選択と集中」をやってみてわかったのは、グローバリストたちが「ここに資源を集中せよ」と選んだ「ここ」は「彼ら自身」だったということである。彼らは要するに「オレに金と人材を集めろ。オレがどかんと稼いで、お前らを食わせてやるから」と言っていたのである。たしかに彼らの幾人かは「どかんと稼いだ」。

でも、「お前らを食わせる」ことには特段の関心を示さなかった。むしろ、「生産性を上げるためには使えない人間は切るしかない。能力主義で再編された効率的な組織以外、グローバル経済を生き残ることはできない」と言い捨てて立ち去ってしまった。スマートだと思う。

とりあえず彼らは一つだけは私たちに教訓を残した。
 
グローバリストを信じるな。
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