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提携で誤算続きのVW「レゴ型開発」に本当の怖さ…日経新聞9月26日9面より

2011年09月26日 16時58分24秒 | 日記
ドイツ語で「フォルクスワーゲン」は「国民車」の意味だ。いまや世界のナンバーワンを目指そうというドイツ車ブランドは「みんなが買える安価な車」の開発を任され、そんな名がついた。

要請したのはナチス政権、設立したのはポルシェの創業一族だった。そのポルシェへの買収騒動が終わらぬなか、フォルクスワーゲン(VW)はトラック大手のMAN、そして日本のスズキとの間でも資本関係を巡るいざこざが表面化している。

スズキに対してはこの春、年次報告書で「連結対象企業」と突如表現し、経営の主導権を握る姿勢をあらわにした。なんと傲慢で覇権主義的な会社だろう、とそこだけ聞くと日本人は考えてしまいそうだ。

だが、そんな一面だけに目を奪われると、同社の評価を見誤る。「モジユール・アーキテクチャー」という用語はご存じか。2000年代初めに独自動車業界で提唱され、VWが現在、先頭を走っているクルマづくりの刷新運動のことである。

メーターやエアコンを一体化して自動車メーカーに納入する、日本のモジュール生産とは違う。VWのモジュールとは、エンジンなど主要な部品を様々に組み合わせ、大きさや用途、地域に合う車をつくること。

さらに言えば「組み合わせの妙」だ。例えば、出力の高い車も普通の車もエンジンは小型のものでできるだけ済ませる。高出力にしたければターボチャージャーなどをつけ、小型エンジンの燃費性能はそのまま生かす。

同社の主力車はすでに多くがこうした思想で生産される。目指しているのはわずかな種類の小型エンジンでハイブリッド車並みの低燃費車からミニバン、SUVまで自由につくれる効率的な経営システムだ。

振り返れば自動車生産を飛躍的に効率化したのは1908年にフォード・モーターが始めた大量生産方式と90年代に確立されたプラットホーム方式だった。

プラットホームはエンジンやミッション、サスペンションなどで構成する車台のことだ。それを10種類前後に分類・集約し、何十種とある車の生産に規模のメリットを持たせようとするものだった。先導したのはやはりVWである。

それは00年代に業界再編のキーワードにもなった。当時の買収や提携はみな「相手とプラットホームを共通化するのが目的だった」とA・T・カーニーの川原英司パートナーは話す。

だが、時代は巡り、世界はもっと複雑化した。先進国は成熟化しつつも環境規制が厳しくなり、新興国も求められる車がばらばらだ。それをひとつずつどう解決するか。VWは自らプラットホームを捨てモジュール式へとカジを切った。

「プラットホームはパズル。モジュールはレゴブロック」とVWのピエヒ会長は言う。パズルのピースはひとつとして同じものはないが、レゴはみな汎用品で組み合わせが自由だ。

スズキはそうした全容に触れる機会に恵まれたが、提携は解消の方向だ。VWは今年、トヨタ自動車を抜き世界で2位になる。新しい「レゴ型開発」の思想は自動車産業をどう変えていくのか。(編集委員中山淳史)

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