日経新聞かなにかに広告が出ていてえらい面白そうだな、と思って買って読み始めたらもう止まらなかった。元エリート検察官その後弁護士になって、さまざまなバブル時代の大物達の顧問弁護士やら相談にのっていた人の自伝。ある一件で起訴され有罪判決を受け、現在上告中だそうだ。
この本は大きく分けると三部構成になっており、最初が貧乏しながら司法試験に受かるまで、次が検察官時代、最後が弁護士になって有罪判決を受けるまでの家庭だが、1,2の部分が異常に面白いのに、3の部分、すなわち弁護士になって暴力団とかバブルで大もうけした事業家とかの弁護をした末に逮捕されるまでの話は逆にイマイチだった。3の部分の結論は「自分は逮捕されるようなことは何もしていないのに逮捕されてしまったが、そうなったのは自分にも責任の一旦はあったような気もするしそうでもないような気もするし、でもやっぱりやりきれない」という悶々とした堂々巡りが続く感じがしてちょっと読んでいてだれる感じ。
とまあちょっと批判的に書いたが、その瑕疵を補って余りまくるほど1,2の部分は面白い。1の貧乏な中、司法試験まで受かるまでの過程は「角栄の時代か?」と思うほど(この話は戦後ね)、「日本という国はつい最近まで本当の貧しさを抱えていたんだなあ」と驚嘆した。2は「検察」という制度、そこでの出世の過程、ヒエラルキーのあり方等、僕が今まで知らなかった世界が詳しく描かれており、興味深かった。
一番面白かったのは、検察官を辞めた後弁護士に転職した所謂「ヤメ検弁護士」がいかに実社会で重宝されているか、ということ。全員が全員ではないが、確かに「検察がどう考えるか」を熟知した弁護士がいたら心強いだろう。そういう世界は「ヤメ政治家実業家」でも「ヤメ通産省サラリーマン」でも同じように、機能しそうだし、たとえ表面的に所謂「天下り」はなくなっていったとしても、政治・司法→実業界の流れは止めようがないし、その当事者はけっこうおいしい思いをしていくんだろうなあ、何となく思った。