Pride GP 無差別級トーナメント

2006年05月12日 | 格闘技
    =====PRIDE GP 無差別級トーナメント 1st Round=====

5月5日に行われたPride GP 無差別級トーナメント一回戦、凄まじい試合ばかりであった。今回は藤田×トンプソン、高坂×ハントの試合はほとんどグラウンドにならず、スタンドでの殴り合いに終始した。お互いに殴り合い、タフさで自信を持つパワーファイターである。

藤田とトンプソンでは身長で10cm以上、体重で20kg近く違う。試合は体格で上回るトンプソンが終始優勢に進む。序盤藤田はタックルからグラウンド狙いに行くが、トンプソンもレスリング経験のある猛者、見事に切ってみせる。トンプソンの圧力は藤田を上回り終始コーナーを背にしたのは藤田だ。この間合いは藤田のタックルを許さない距離であり、トンプソンのパンチや膝蹴りが藤田のスタミナを奪って行く。藤田はふらつきながらも殴り合いにつき合うしかない。しかし1ラウンドが進むにつれトンプソンは攻め疲れから次第にスピードが落ち、手数もぐーんと減って藤田のパンチが彼の顔面を捉えるようになってきた。そして1ラウンド終了2分程前のことである。グラウンドに持ち込んで上になったトンプソンは疲れていたので何とか持ちこたえようと思っていたであろう。しかし一瞬の隙に藤田が立ち上がりざまの藤田のパンチが疲れたトンプソンの顔面を捉え、そのチャンスを逃さなかった藤田のラッシュに沈んだ。トンプソンもかなりタフで根性を見せたが、藤田には及ばなかった。壮絶な逆転劇であった。藤田選手Pride復帰、そして一回戦突破おめでとう!

さて、今回コラムに書こうと思ったのは高坂選手の引退を賭けた試合に感動を覚えたからだ。通常はしのぎ合いの中勝って感動させてくれるものだ。藤田の試合なんか全くその通りである。しかし高坂は元K-1王者肩書きを持つキックボクサーであるハント相手に真っ向から勝負を挑んだ。

前半はグラウンドに持ち込み極めるチャンスがあったが、ハントの格闘センスと体格のアドバンテージにことごとく返される。結局グラウンドでもなかなか勝機を見いだせず、スタンドで勝負を余儀なくされる。ハントのパンチを浴びて、またスタミナを奪われ流血しながらもふらふらになりながらもゾンビのようにパンチを繰り出す。

きっとハントは何度もいやになったのではないだろうか?もちろんK-1であればもうレフリーが止めている場面もあっただろう。そして相手は世界でもトップクラスのグラウンド技術を持つ高坂である、打撃でかなりのアドバンテージを持ってるにしろかなりのプレッシャーがあるはず、それゆえどちらかといえばカウンター狙いである。今回はとても人間と戦っている気分ではなかったはずだ。私は既に涙を押える事が出来ない。

高坂は終始前に出続けた、明日の事など全く考えてはいない。試合前引退をかけて命がけで挑む、と宣言したことに全く偽りはなかった。しかし2ラウンド早々、憔悴しきった高坂はとうとうハントのパンチに腰から砕け落ちレフリーが試合を止める。

感動を受けた試合はいくつかある。桜庭 (Hero'sに移籍、これについては別の機会に) がホイスグレイシーにTKO勝ちした試合、そしてA.ホドリゴノゲイラがボブサップにKOされる寸前で逆転して勝った試合である。名勝負はたくさんあるが、高坂選手の最後の試合はこれらに勝るとも劣らぬ感動的散り方であった。『死ぬ時には前のめりに』、そんなメッセージを残すかのように...
高坂選手ありがとう!本当にお疲れ様でした。

ハントの総合に対する適応は一試合ごとに進化している。美濃輪を返り討ちにしたミルコも素晴らしい進化を遂げたが、未だ最強王者フョードルに勝てるポテンシャルは見せていない。今フョードルに一矢を報いる可能性を期待できるのはハントである、と思ったのは私だけではないだろう。

桜庭は去ってしまったが、Pride、今後も楽しみである。