Tokyo Walker

諸事探訪

世田谷美術館

2013年08月04日 14時30分37秒 | 旅行

 「世田谷美術館」の広告は誠に行き届いている。展示内容といい、併設のレストランといい、とにかくよく目にするし耳にする。一度行ってみようと思っていたが、今回は工業デザインの草分け的存在、デザイナー榮久庵憲司の「鳳が翔く(オオトリガユク)」が開催されていた。榮久庵憲司の作品の詳細は承知していないが、YAMAHAのバイク(VMAX、RZ250他)をデザインした人であることを今回初めて知った。勿論他にもデザインしたものはたくさんあるが、何と言っても彼を有名にしたのはYAMAHAのバイクよりもキッコーマンの醤油指しの方かも知れない。

 「人の道具として最終的に必要なもの」としての仏壇も展示されていた。それは、一見して仏壇のような、違うものような不思議なもので、生命体を遙か彼方へ移送する装置、エイリアンの宇宙船のようなモノだった。この辺に来ると、どこからともなく梵鐘に似たような音が聞こえてくる。何と片腕の、しかも腕だけのロボットがゴングを打ち鳴らしているではないか。他が、電子音で再生される中、このゴングだけが原音を響かせている。会場の薄暗さの中では、まるでこれは「お寺の雰囲気」そのものだなと、納得した。ハイテクマシーンと「お寺」の何と落差の大きいこと。これが、同じ人間の中で一体となって融合し、何の矛盾もないというのだから、人間というものは不思議なものだ。

 また、彼は生まれがお寺だったということもあり仏教の世界が身近にある。年齢のことも関係があるかも知れないが、究極の世界、行き着く世界、死の世界をもデザインする。諸行の世界を司る(道具)千手観音や曼荼羅、無限に広がるハスの池、何と言っても奇抜なのは「柩」だった。透明なアクリルで、中に臥せる人が丸見えで、しかも「柩」の床がシンプルな電飾で輝いている。その光が四輪駆動の台車(柩)の車輪の回転とよくマッチしている。そこにピッタリのSoundを加えてある。決して急がず、しかしゆっくりと確実に。まさに「厳かな静かな気持ちで、向こうの世界へ旅立つ」かたちなのだ。

レ・ジャルダンの回廊
 本館から併設のレストラン「レ・ジャルダン」へ行く渡り廊下。右手片面がコンクリートの壁、左手は全面ガラスが張られている。恐らく朝の光がとても美しいはず。そして夜ともなれば、今度はコンクリートの壁に仕組まれたスポット照明が何とも幽玄な効果を表すはずだ。美術館のお定まりの展示室、壁、天井にあって、ここだけが別の世界を作っている。一見、無骨なコンクリートに囲まれた空間でありながら何故か癒される特別なエリアだ。
(建築家内井昭蔵の設計による造形と光のコンビネーション)

 で、レ・ジャルダンに入店して3時のお茶(Coffee)とCakeをいただく。いや、何故かホッとするひと時だ。芸術品を鑑賞するのも疲れるものだね。


コメント (2)
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