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BL小説・風のゆくえには~旅立ち5おまけ

2018年01月02日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 旅立ち


【山崎視点】


「あいつらまたイチャついてる……」

 遊泳区域の一番沖でプカプカ浮かびながら、溝部がボソッと言った。視線の先には、桜井と渋谷。少し離れたところで、二人で一つの浮き輪につかまりながら、なぜか浮き輪の上で手を繋いでいる……

「手、繋ぐ必要あるか?」
「桜井、あんまり泳げないから足つかないところ怖いんだって」

 さっき桜井が言っていたセリフを伝えると、溝部は「はあ?」と呆れたように言った。

「浮き輪あるんだから大丈夫だろっ」
「まあまあ」

 くくくと、斉藤が笑った。

「ただ単に桜井が渋谷とくっついてたいだけだろ。あいつ渋谷のこと大好きだし」
「だからって手繋ぐかー?男同士でさー」

 溝部は眉を寄せて言ってから、「でも…」と言葉を継いだ。 

「でも、渋谷って顔だけはそこらの女子より可愛いから、ああやって顔しか見えないとカップルっぽくみえるよな…」
「あー…だなあ。顔だけはうちの学校で一番なことは確実だもんな渋谷」
「いえてるいえてる」
「背も小っちぇーしな」
「ちょっと二人とも聞こえるって……」

 本人が聞いたら怒りそうなセリフのオンパレードを、さすがに止めようとしたのだけれども、

「でもあいつさ………」

 溝部がふいっと、渋谷の方に目をやり、ガッカリ、というようにつぶやいた。

「脱ぐと完全に男なんだよなあ……」
「あー、だよな。すげえもんな。あの筋肉………」

 斉藤は羨ましいって感じにため息をついている。

「きれいに腹筋割れてるし」
「上腕筋とかモリモリ。固そう」
「足もさ、太股とかすげえ筋肉なんだよな」
「足速えもんなあ」

 ……………。

 溝部は野球部、斉藤はバスケ部なので、やっぱりそういうところに目がいくのだろうか。オレはそんなこと考えたこともなかった。

「あいつ高校では部活やってなかったのに、なんであんななんだ?」
「自分で鍛えてるらしいぞ。あと、よく泳ぎにもいってるって」
「それであそこまでいくかあ?」
「なあ……」

 少し離れたところにいる桜井と渋谷、なんか楽しそうに話してる。溝部の言う通り、首から上だけだと、カップルに見えなくもない。

 ホント仲良いよなあ……と感心していたら、

「あーオレ、来年は絶対彼女とくるんだー」

 いきなり溝部が大きな声で宣言した。

「そしたらさーオレも1個の浮き輪二人でつかんで、波が来る度に『きゃ~祐くんこわ~い』とか言われてしがみつかれたい」
「なんだその妄想。気持ち悪ー」
「なんだとっ」

 斉藤が速攻でツッコミをいれ、溝部が速攻で言い返す。

「どこが気持ち悪いんだよっ」
「気持ち悪いって。その妄想、絶対女子の前でするなよ? ますますモテなくなるから」
「んだとー!!」
「まあまあ」

 また喧嘩をはじめそうな二人の仲裁に入ったけれども、溝部の怒りは収まらない。

「お前、彼女いるからってえらそーなんだよっ。毎度3ヶ月しかもたないくせにっ」
「んなことはない。もうちょっと続いたことあるって」
「もうちょっとって4ヶ月だろっ」
「5ヶ月だよっ」
「どんぐりの背比べ!五十歩百歩!」
「もー……二人とも……」

 小学生並の口喧嘩をしている二人……。

 延々と続いている不毛な言い争いに、付き合ってられないなあ……と思いながら、桜井と渋谷の方に目をやると、二人が浮き輪から離れて、向かい合わせになって両手を繋いでいるのが見えた。……と、

「あ!」

 二人そろって、海中に潜り込んだので思わず声を上げてしまった。

「沈んだ」
「え?」
「は?」

 オレの言葉に、溝部と斉藤も喧嘩をやめて後ろを振り返る。

「あれ? 渋谷と桜井は?」
「なんか今、二人、向いあって手繋いだまま、沈んでった」
「は?」

 たぶん桜井の頭と思われるものが海面に少しだけ出ているけど……

「泳ぎの練習?」
「どっちが長く潜ってられるか競争?」

 三人でそんなことを言いながらじっと見ていたら、バサッと先に桜井が顔を出して、遅れて渋谷が浮かびあがってきた。

「あ、上がってきた」
「なんだ。やっぱり競争か」
「だな」

 もう一回、と桜井がねだる仕草をしているところからして、競争をしていたとみられる。そんな競争、渋谷が勝つに決まっているのに、桜井偉いな……。なんて思っていたら、溝部と斉藤が同時にこちらに向き直った。

「オレらもやろうぜっ」
「おー勝負勝負っ」

 さっきまでの喧嘩はどこへやら、だ。2人仲良く盛り上がっている。と、

「山崎もやるぞっ」
「え? あ、わわっ」

 せーの! と言われて、慌てて一緒に海中に潜った。

(………うわっ)

 ボコボコボコっと水の音がする。海の中は思ったよりも透明で周りがみえる。溝部の必死な顔。斉藤の笑いをこらえたような顔。そして、少し離れたところにいる桜井と渋谷の姿も見えたんだけど……

(?)

 桜井達の姿はオレの方からしかみえないので、溝部と斉藤は見ていない。

(まさか………なあ)

 キラキラした海の中………

 あの二人………キスしてるように見えたんだけど………

(………………ないない)

 見間違い。見間違い。

 受験勉強のしすぎで目がおかしくなっているのかもしれない。

(たまには受験忘れて楽しまないとだな……)

 そんなことを思った夏休みの海の一日だった。


------------

お読みくださりありがとうございました!
山崎君、見間違いじゃないよ♥

と、いうことで………
あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
正月早々真面目な話もなあ……と思って、「おまけ」に逃げさせていただきましたっ。

今現在、43歳の慶さんと浩介さんは、今日は山下公園氷川丸のお餅つきに行く予定です。
そう!昨年、溝部&鈴木さん&陽太君と一緒に行ったお餅つき。(←「現実的な話をします8」
浩介君、「今年は慶と二人きりで行きたい!」というので、今年は二人きりで^^
ラブラブ横浜デート~山下公園お散歩~中華街食べ歩き~って感じらしい。

次回更新は金曜日の予定です。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!!
おかげさまで今年もはじめることができました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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