ミス・ポター

公開はまだなのだが、試写で鑑賞。人生そのものが映画のようなビアトリクス・ポターの半生を描く。

世界でいちばん有名なうさぎ、ピーター・ラビット。彼が生まれたのは２０世紀初頭のイギリス。作者のビアトリクスは、いかにもイギリス慇懃上流社会・・・・というような家の生まれ。すべきことは家柄高き、よき殿方と結婚すること。家を守り、パーティーにいそいそと出かけ、華にならなければならない。

しかし、彼女はそんな生活に耐えられず、３０過ぎた今も独身。自分の筆から生み出された動物たちに囲まれ、創作に歓びを感じていた。でも、それはよき家に嫁ぐことが最良のことと信じて疑わない母には、到底理解されない。

自分が生み出した青いジャケットを着たうさぎ、ピーター・ラビットの物語を抱いて、出版会社に行ったミス・ポターは、自分の本の出版の了解を取り付ける。

ミス・ポターの担当になったのは出版にはド素人のノーマン。出版会社の社長の末の弟なのだが、いつまでも部屋住みのような身分から脱却して、仕事をしたいと思っていた。得体のしれない絵描きと、理想に燃えるド素人の編集者。きっと失敗に終わるだろうと思われたこのコラボは世界一有名なうさぎを生み出すことになる。

思わず息をのんでしまう美しく、豊かなイギリスの豊かな田舎の風景。ホンワカしたタッチから、ロマンスのにおいをさせて、甘い雰囲気の映画になると思いきや、結構きつい展開が待っている。

さらに２０世紀初頭の古風な空気と、新しいものがまざりあった様子。いかにもイギリスの慇懃な上流社会のかたくなな様子や、活気に満ちた街の様子など、画面からにじみ出ていた。ここもうまいつくりだ。

偶然の出会いが何かを生み出す。人と人との出会いは、意外なものを作り出す。それを偶然とよぶには簡単だが、そこには人為ではない、何かの見えない力が作用しているのではないだろうかと思わせる彼女の人生だった。

彼女には、成功も悲劇も進歩も停滞もさまざまなものが待ち受けていた。それは何かをしようとしたから。怖がらず、勇気を持って、前向きに前進したからこそ生まれたものだった。悲劇に面したときは思わず応援している自分がいたが、愛に涙に友情に、再生と力強い一歩。さまざまなものを含むとっても素敵な映画だった。是非、みて欲しい。

エミリー・ワトソン。いつもながら存在感のある女優さんだが。大抵、男優との絡みが多くて、小柄な人だと思っていたのだが、なんだかでかいわ。レニーと比べるとそうなのか。ちょっと意外な発見。

◎◎◎◎

『ミス・ポター』

監督　クリス・ヌーナン
出演　レニー・ゼルウィガー　ユアン・マクレガー　エミリー・ワトソン　バーバラ・フリン　ビル・パターソン　マテロック・ギブス　アントン・レッサー　デヴィッド・バンバ