「海炭市叙景」で名を知った原作者。何度も芥川賞の候補に名が上がりながら、結局不遇なままで、自ら命を絶った作家、佐藤泰志さんという方。人間の負の部分をこれでもかっとえぐり出すのだが、そこにもあるわずかな光、、、、というには、あまりに弱すぎないか。でも、その弱すぎる光の中でもがく人たちは、決して哀れではない。踏みにじられようが、とんでもない目に遭わされようが、ぽきっと折れようが、美しい。強くなんかなくていい。地を這うように生きて何が悪い。人生、なんぼのもんじゃい・・・と感じたアタシは、高みで見ているからだろうか。。。とにかく、胸がぐじゃぐじゃになった。かき乱された。こんな気持ちになったのは、久しぶりだった。
仕事もせず、ぶらぶらしていた道夫はパチンコ屋で拓児と出会う。若干、多動気味。でも憎めず妙に人懐っこい。成り行きで家に連れて行かれた道夫は、こんなところに人が住めるのか!というような汚い小屋みたいな家で、姉の千夏に会う。寝たきりの父親、その世話をいやいやしている母、一目見て、千夏がすべてを背負っていることがわかる。人並みの生活をしてはならない・・とでも言われているかのよう。
徐々に、その家族のことがわかってくる。拓児は仮釈放中で、保護司のような役割をしている町の有力者に、時々使われては、小遣い程度の金をもらっている。これからここで生きていく上では、絶対に言うことを聞かなければならない相手。妻も子供も当然いながら、千夏を言いなりにさせている。拓児の面倒を見てもらっている身としては、従うしかない。
働くとこなどない。工場で働いても、家族を養うのは無理。夜の仕事までしなければ、到底食ってはいけない。母は金をせびり、寝たきりの父に残されている人間らしい部分は性欲だけ。。。。。何の希望も願いも救いもない。ただ生き、働き、金を稼ぐだけ。そんな彼女を愛おしく思う道夫。
道夫は炭鉱の事故で、部下を事故で亡くし、憔悴しきっていた。もう、山には帰りたくない。でも、彼にできるのは山の仕事だけ。ずたずただった道夫の胸に暖かい火をともし、彼にもう一度歩みなおさせようとしたのは千夏だった。どちらも傷を背負い、幸せには程遠いところにいた二人は、お互いを補い合い、愛し合い、前に進めるかに思えた。でも、現実と周りの人間としがらみがそうはさせなかった。
小さな人間二人のわずかな幸せすら、手に入れてはいけないとでもいうのか。。。
ということで、役者が皆見事。なぜにいい映画に出ないの?と、忸怩たる思いになりそうな綾野君が、ここぞとばかりにいい!「ウシジマくん」に続いて、いい。薄幸を地で行ける。そこに池脇千鶴の妙な生々しさがやけに似合う。最近、こういう役どころがはまりまくってる。
多分、「ごちそうさん」の前に撮ってたと思われる菅田君のやんちゃぶりと、これまた薄幸ぶりが様になってた。こちらも「ウシジマくん」と、妙に被る。で、それらを凌駕する存在感を見せたのが、高橋和也!いつのまにか中年のなくてはならない役者になってた。プラスさらっと演じた正平ちゃんが素敵!
この小説自体は、1989年に書かれたということらしいが、バブルがはじけ、日本がまっさかさまに下りはじめたころ。舞台となってる函館あたりは、バブルの恩恵もなかったろうし、10年一日、何も変わらない毎日だったはず。小説が書かれて25年。何も変わらず、さもしい世の中になってる現実に一層わびしさが増した。
「東京難民」、「闇金ウシジマくん」、そしてこれと続けて見たら、人間やめたくなるかも。と言いつつ、これはいい。力のある作品だった。
◎◎◎◎
「そこのみにて光輝く」
監督 呉美保
出演 綾野剛 池脇千鶴 菅田将暉 高橋和也 火野正平
仕事もせず、ぶらぶらしていた道夫はパチンコ屋で拓児と出会う。若干、多動気味。でも憎めず妙に人懐っこい。成り行きで家に連れて行かれた道夫は、こんなところに人が住めるのか!というような汚い小屋みたいな家で、姉の千夏に会う。寝たきりの父親、その世話をいやいやしている母、一目見て、千夏がすべてを背負っていることがわかる。人並みの生活をしてはならない・・とでも言われているかのよう。
徐々に、その家族のことがわかってくる。拓児は仮釈放中で、保護司のような役割をしている町の有力者に、時々使われては、小遣い程度の金をもらっている。これからここで生きていく上では、絶対に言うことを聞かなければならない相手。妻も子供も当然いながら、千夏を言いなりにさせている。拓児の面倒を見てもらっている身としては、従うしかない。
働くとこなどない。工場で働いても、家族を養うのは無理。夜の仕事までしなければ、到底食ってはいけない。母は金をせびり、寝たきりの父に残されている人間らしい部分は性欲だけ。。。。。何の希望も願いも救いもない。ただ生き、働き、金を稼ぐだけ。そんな彼女を愛おしく思う道夫。
道夫は炭鉱の事故で、部下を事故で亡くし、憔悴しきっていた。もう、山には帰りたくない。でも、彼にできるのは山の仕事だけ。ずたずただった道夫の胸に暖かい火をともし、彼にもう一度歩みなおさせようとしたのは千夏だった。どちらも傷を背負い、幸せには程遠いところにいた二人は、お互いを補い合い、愛し合い、前に進めるかに思えた。でも、現実と周りの人間としがらみがそうはさせなかった。
小さな人間二人のわずかな幸せすら、手に入れてはいけないとでもいうのか。。。
ということで、役者が皆見事。なぜにいい映画に出ないの?と、忸怩たる思いになりそうな綾野君が、ここぞとばかりにいい!「ウシジマくん」に続いて、いい。薄幸を地で行ける。そこに池脇千鶴の妙な生々しさがやけに似合う。最近、こういう役どころがはまりまくってる。
多分、「ごちそうさん」の前に撮ってたと思われる菅田君のやんちゃぶりと、これまた薄幸ぶりが様になってた。こちらも「ウシジマくん」と、妙に被る。で、それらを凌駕する存在感を見せたのが、高橋和也!いつのまにか中年のなくてはならない役者になってた。プラスさらっと演じた正平ちゃんが素敵!
この小説自体は、1989年に書かれたということらしいが、バブルがはじけ、日本がまっさかさまに下りはじめたころ。舞台となってる函館あたりは、バブルの恩恵もなかったろうし、10年一日、何も変わらない毎日だったはず。小説が書かれて25年。何も変わらず、さもしい世の中になってる現実に一層わびしさが増した。
「東京難民」、「闇金ウシジマくん」、そしてこれと続けて見たら、人間やめたくなるかも。と言いつつ、これはいい。力のある作品だった。
◎◎◎◎
「そこのみにて光輝く」
監督 呉美保
出演 綾野剛 池脇千鶴 菅田将暉 高橋和也 火野正平
呉美保監督は凄いですね。
ところでバブル崩壊は1991年からなので、1989年出版であればバブル景気が盛り上がっていた真っ最中だと思います。
割と近々の年齢でああいうすっかり大人になった役を演じてる人がいない気がします。
原作と、舞台の空気感と、役者がぴったりにはまってたように思います。
はい、そうですね。もう、89年くらいから、怒涛の子育てと仕事とめちゃめちゃで、私的喪失の20年です。
その辺の蓄積も相まって、いい感じの大人です。
もっとくそ役やってほしいっす。