迷宮映画館

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人間万事塞翁が馬 その7

2022年02月01日 | 日記
 そんなころ、今度はJが、「目がおかしい」と訴え始めた。障子の格子がグネグネしてる。テレビが斜めになって波打っている~。典型的な加齢黄斑変性っぽい。真ん中に黒っぽいものが見えて、とにかくおかしい。あちゃー-。耳がよく聞こえないので、いろいろ説明してもなかなか理解してもらえるのが難しい。頭はしっかりしているが、相手の言ってることがよく聞こえないのは面倒だ。眼科に行き、でっかい病院を紹介され、網膜に直接注射をして、中の委縮した部分を改善するという。ひゃー-、これは怖い。本人もかなりがっくり来ている。歩けない、呼吸もぜーぜー、耳もよく聞こえない、そして今度は目。あれだけ呼吸がつらかったら煙草をやめるのが当然と思うところ、これだけはやめられないようだ。まったく理解できない。Bからさんざん「煙草吸うなアあ」と言われ続け、目の前ではもちろん吸えない。トイレの中で吸ったり、外でこそこそ。いまや、ぎゃんぎゃんいう人がいなくなり、堂々と吸ってる。そして咳き込んでいる。死んでも吸いたいらしい。家の中にいる老人三人中、二人が病気だよ。

 Jの通院もあり、実家の父の通院も月に一回は必ず行かねばならない。あたしも一応病人なんですけどね。ここは病人だろうと動かないとならない。貧血も良くなってきて、体が動くのが幸いだ。ここに〇〇があるのはわかっているけど、痛くもかゆくもない。血液検査の結果を受け取るたび、ちょっと赤いのが足りないくらいで、どこにも異常がない。こんなもんなのか。できる限り普通の状態で、なるべく動く。無理はもちろんしないが、風邪ひかないようにして、体力維持に努める。ひたすらそれを心がけて日々の生活を送った。

 年明けて病院に行くと、手術の日程ははたまた一週間延びたといわれる。えー、またですか。病院はかなり混んでいる模様。はっきりした日程は決まらないけど、この週のどこかです!って、まったく。。確定してないけど、そのための準備はしないとならない。限度額の申請をし、PCRの検査に、飲んでいる薬をやめるものも決める。いつ入院か決まってませんけど、用意しておいてくださいね~。ずいぶんほにゃら~とした感じで、待つ身となった。ここまで来たら自分のことしかかまってられない。年寄りさんたち、自分で何とかしてくれ。ぎりぎりまでやるけど。

 いきなり病院から電話がくる。入院はこの日、手術はこの日、PCRの検査をこの日にやります。とうとうやってきた。検査のために病院へ。鉄剤飲んでる真っ赤な舌で唾液をぺえ~と出す。ま、大丈夫でしょう、という感じ。来週の予定だった歯科の健診を早めにしてもらって準備万端整え、翌日の入院を待つばかりとなった。お産以来、入院もしたことがなければ、手術ももちろん無縁。体にだけは自信があった私が、とうとう年貢の納め時か。

 入院はしたものの、当日までは取り立てて何もない。血圧や体温を測り、変化がないか聞かれる。入院当日に執刀医から説明があるということで、夫とともにどのような術式か、傷跡はこうなる、かかる時間、数えきれないリスク、気持ち悪くなるような膨大な説明を聞いて、山のような書類に目を通し、一個ずつ署名をする。付添人として何度も署名をしてきたが、自分のは初めてだ。医者からはとにかく動いて歩けと言われる。「病棟、何十周もしていいですよ」と言われ、せっせと歩く。そんな患者さんが大勢いるようで、みんな点滴をペットにしながら、ぐるぐると歩いている。二日ほどゆっくりと過ごした後、いよいよ手術前日となった。

 手術前日。この日から絶食。点滴ちゃんが親友。強力な下剤を朝から飲んでトイレから離れられなくなる。それでも歩けと言われるので、すきを狙ってせっせと歩く。ゴロゴロ転がしながら。看護学生の実習が入るので、担当してもいいですか?の確認があって、いいですよ、と。翌日からかわいい実習生がちょこちょこやってくる。

 びろうな話で恐縮。トイレにせっせと行って腸の中をきれいにする。いくらでも出るわ。これがいわゆる宿便ってやつなのかな。もちろん寝られず、夜中もトイレにせっせと通わないとならない。ろくたま寝られず朝を迎える。安定剤をもらってもさっぱり効かない。朝にとどめの座薬でとことんきれいにする。もちろん毎朝の回診があって、今朝も先生の顔を見る。「んじゃ、あとでね」みたいなノリです。

 さて、そろそろ手術室へ移動の時間。いったんこの部屋とおさらばするので、荷物を片付けて身一つになる。手術帽を手にして、とことこと自分の足で手術室まで歩いていく。途中夫に会って、財布を預ける。「んじゃねえ」。あとは野となれ山となれ~です。エレベーターに乗って、手術室のある3階までとことこ歩いていく。同じように手術を待っている人が3人ほど。帽子をかぶって、名前の確認をして一人ずつ入っていく。へー-、手術室ってこんな風になってるんだ、といちいち感心する。いよいよあたしの番です。名前行って、手術室の前までここも、とことこ歩いていく。ここに乗るのねえ~と自分でよいしょっと。え、このベッドすんげーーあったかくて気持ちいんですけど。あったかいお湯で包み込まれたみたいにほんわかしてる。ほにゃらああ~とした気分になる。看護師さんがせっせと点滴を変えたり、心電図つけたり、なんやかんやと動いているパタパタした中で、「はい、麻酔入りますよ・・・・。」と。次に目覚めたときには手術は終わっていた。

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