ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

『国分一太郎童謡集』  ー酒ー

2020-10-26 10:35:34 | Weblog
    ブログ「酔流亭日乗」より

 昔、村の子は、おつかいも仕事の一つだった。

「酔流亭日乗」という方のブログに、「国分一太郎の童謡集を戴く」という記事があった。本の表紙と国分一太郎の写真入りの、「粋」なブログで、心に残った。
 お酒が大好きだと書かれて、お酒の童謡もとりあげていた。

86 日ぐれの酒買い

 父さの酒買い 行く道は
 夕やけ小やけで 日ぐれです
 酒びん すかして 赤い空
 すかして 見い見い 行くのです。

 酒買い帰りは 坂道で
 きんいろ ひかる 酒びんの
 お酒が だいじで 赤い空
 うしろも 見ないで 帰ります。

 父さの酒買い 家につきぁ
 日ぐれの小川で 馬洗い
 きんいろ ひかる びんを見て
 父さは にっこり わらいます。
             国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』

『国分一太郎童謡集』より ―遊び―

2020-10-25 21:50:50 | Weblog
   『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

昔、村の子は遊びを創造した。

213 荷馬車のり ←どこまで乗るか

 荷馬車が 来た来た
 どーれに のろか

 この馬 あれ馬 耳たて馬だ
 馬方 こわい 顔しているよ
 これには のるな。

 この馬 いい馬 やさしい目だま
 馬方 やっぱり やさしい顔だ
 これなら のろよ。

 遠く つづいた たんぼの道よ
 どこまで のろか
 たんぽぽ 咲かなくなるまで のろよ。

 まだまだ 咲いてる
 どこまで のろか
 そらまた 咲いてる
 どこかで おりよ。

 馬方 気づかぬ
 まだまだ のろよ。

 たんぽぽ もひとつ
 見えたら おりよ。
 もひとつ 見えたら
 ほんとに おりよ。
              国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』
              「綴方読本三」昭9・5

『国分一太郎童謡集』より ―蝗ー

2020-10-24 08:39:50 | Weblog
     『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、むちゅうになってイナゴとりをした。

「汽車道なんご」
 「なんご」は「蝗」と書く。「いなご」のことである。国分はこの童謡集に「55いなごとりのこと」「56おばさりなんご」、そして、「69汽車道いなご」と「いなご」を題材にして三つの童謡を書いている。

 「いなごとり」では、「朝つゆあるうち とれとれ いなご」といい、「おばさりなんご」では、一どに二ひきとれるから、「せめれば たまる」といなごとりの応援をしている。当時、「いなごとり」は、学校でも奨励し、時には「いなごとり競争」のようなことさえさせていた。学校でも家庭でも、いなごは現金収入になっていたのである。子どもたちが夢中になって、いなごをおいかけて、「汽車道」、いまで言えば線路、その土手まで蝗をおいかけたら、命をうばわれることもある。そんなとき、「汽車道 蝗は にげかたじょうず」と語りかけているのである。「蝗とり 行くなら 汽車道へ 行くな」と注意もしているのである。

 それを、なるほどそうか、と思わせる表現で、リズムをともなって子どもたちに童謡で伝えている。命を守る、教師国分のやさしさと責任感が感じられる。(本書181頁より)

 いなごとりのこと

 朝つゆ あるうち
 とれとれ いなご

 日がてりや はねて
 つかまらぬ
    
 羽が ぬれてる
 朝げのいなご
 もんぺが ぬれても
 かまはない。
 とばない うちに
 さあさとれ。


おばさりなんご

 子供を おぶつた
 おばさりなんご

 とびかた のろまな
 おばさり なんご

 おばさり なんごは
 せめれば たまる

 一どに 二ひきで
 せめれば たまる

 
汽車道いなご

 汽車道 蝗は(なんご)
 にげかた じょうず

 汽車が くるたび
 とびかた 練習

 羽は のびたし
 とびかた じょうず

 あしが じょうぶで
 はねかた じょうず

 からだが やせてる
 そのかわり

 蝗とり 行くなら
 汽車道へ 行くな。
        国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』



『国分一太郎童謡集』より -小さな友だちー

2020-10-19 11:38:41 | Weblog
『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、暮らしの中に小さな生きものがいた。こおろぎもとんぼも友だちだった。

85 こおろぎ ←こほろぎ

 朝刈り野原の こおろぎが(のっぱ)
 草と刈られて 馬の上
 せなかで 知らずに鳴いてたが

 馬屋で いちにち 日がくれて
 馬といっしょの 小屋のなか

 「野原で ないよだ ないよだ」と
 いまごろ鳴いて
 いるような。
              国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』
              「北方教育12号」8・8

 82 とんぼとおちば

 とんぼが そつと
 とまつたら
 こうぞの はつぱが
 ちりました
 とんぼを のせて
 ひらひらと
 小やぶの中へ
 ちりました

 こやぶで とんぼが
 おどろいて
 お空をながめて
 おりました。

 たかいお空で
 友だちは
 スイスイ 
 とんでおりました。



『国分一太郎童謡集』 ―働くー

2020-10-17 12:00:47 | Weblog
      『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、働く家族の中で育った。

60 いねつけ

 いねつけ こんもり
 こん車
 僕が のつてる
 いねの上

 よいこら あねちやが
 つなひいて
 うしろで おつかが
 おしてゐる

 いねつけ こんもり
 こん車
 がんばつて 父ちやが
 ひいてゐる

 ばんげの あひさつ
 する人に
 車の上から
 僕がする。
             「『教育』と『文学』の研究」8号

98 わらうち

 わらうち ひとりは
 ガッケン トンよ
 ひとりうちなら
 おとうさん

 わらうち ふたりは
 ガッケン トンよ
 ガッケン トンよ
 ふたりうちなら
 にいさんも

 わらうち ふえたら
 ガッケン トンよ
 ガッケン トンよ
 ガッケン トンよ
 三人うちなら
 ぼくまでも
             国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』


『国分一太郎童謡集』 ―先生ー

2020-10-17 09:05:56 | Weblog
『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は、先生のあたたかいまなざしの中で育った。

226 夕がた

 子んもりしてたら
 先生が通って
 ごはんは まだかと
 みんなにきいた。

 まだだといったら
 そうかといって
 先生の自転車
 あっちに行った。

 先生のかげが
 ここまでのびて
 先生を みんなで
 もいちどよんだ。

 先生がふりむき
 帽子をふって
 子もりのぼくたち
 「さいなら」といった
           『国分一太郎文集(10)』

「夕がた」
 村の夕方の一場面。子守をしている子供達の所へ、教師がとおる。勤務の帰りか、子どもたちの様子を見周りにいったのかはわからない。先生のすがたを見た時に、子どもたちは「あっ、先生だ」と声を上げたに違いない。すると先生は、ごはんが待ち遠しいであろう子どもの気持ちを推し量って、「ごはんは、まだか」と声をかける。「まだだ」といったら、「そうか」と、「早くごはんになるといいね」という表情をあらわして、先生は去っていく。
 夕方である。傾いている日差しが、先生と自転車のかげを、子どもたちの足元につれていく。こどもたちが、もういちど呼ぶ。先生は、ふりむいて、帽子をふる。すると、夕暮れの中に、子どもたちの「さいなら」がこだまする。
 赤い夕日、黒い影、手を振っている子どもたちと、自転車に乗った先生、その情景と気持ちを共 有することで心がかよう。「夕方」という「とき」をたくみにとらえている。
                                (本書 185頁より)



YBCテレビ制作「想画と綴り方」再々放送決定!

2020-10-15 17:42:08 | Weblog
『国分一太郎童謡集』の発行とコラボするようにYBC・山形放送制作の「想画と綴り方」が、NHKBSで再々放送することが決定しました。
          2020年11月12日(木)16:40~17:30

『童謡集』の発行とどうよう、「想画と綴り方」の放送も、もぜひ、たくさんの人にお知らせください。
「童謡」が書かれた時代と、村の子どもたちの生活も見えてくると思います。



『国分一太郎童謡集』より ー土間にねろー

2020-10-14 22:04:18 | Weblog
    『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

 昔、村の子は土間にねかされた?

2 蚕 ←かひこ

 お蚕様 ふえて(こさま)
 ざしきが せまい

 お蚕様 いるうち
 お蚕様 だいじ

 ざしきが せまけりゃ
 土間にねろ

 みんな しんぼだ
 土間にねろ

 ころぎと いっしょに
 土間にねろ

 お蚕様 あがたら
 ゆるゆる 寝んべ
                国分一太郎児童文学集6『塩ざけのうた』

『国分一太郎童謡集』より  —子守―

2020-10-11 08:41:45 | Weblog
   『国分一太郎童謡集』(北の風出版)より

  昔、村の子にとって「子守」は暮らしの中にあった。




224 子守する子 ←こもり

 子守 する子は すぐわかる
 「きをつけ」かければ すぐわかる
 せなかが まるくて すぐわかる

 それでも ぼくは 子守役
 弟こも おばれば よろこぶし「おぶれば」) 
(おず)
 たんぼで 母さは はたらくし

 せなかが まるいと いわれても
 通信簿には かかれても
 やっぱり ぼくは 子守役
               『国分一太郎文集(10)』


227 馬見*
 
 誰に うばると
 背をむけりや

 いつも きまつて
 僕にくる

 子馬を 見にいく
 背にうばる

 となりの 子馬と
 おなかよし

 馬見に
 いくから
 僕にくる
 何やら いひいひ
 みてゐます。