ツルピカ田中定幸先生

教育・作文教育・綴り方教育について。
神奈川県作文の会
綴方理論研究会
国分一太郎「教育」と「文学」研究会

豊島作文の会 12月例会案内

2018-11-28 21:19:32 | Weblog

〈いささかの前置き〉

 豊島作文の会のご案内ですが、先日開かれた、第12回国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会の報告を工藤さんがしています。

 どうぞ、その部分も、ていねいに読んでいただけたらと思います。   


 第531回 豊島作文の会 12月例会案内

◆日 時 2018年12月2日(日) 午後2時~午後5時

◆場 所 豊島区立駒込地域文化創造館 第6会議室 03-3576-2637  (地図参照)

《提案》 

  『’18 児童文詩集 東京の子』(第44集)、詩の部を読み合う

《 詩》*レポート担当の分担は下記の通りです。

 1年11篇(伊藤さん) 2年14篇(鈴木さん)  3・4年12篇(寺木さん)  

 5・6年13篇(片桐さん)

*「共同作品」(日色さん)と「2年11篇」(曽我さん)の分が、前回、時間の関係でできませんでしたので、先にこの二つを読み合ってから、詩の提案に入っていく予定です。

『東京の子』、お忘れなく!

 

◎第12回 国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会報告

 *第530回 豊島作文の会は、この学習会に合流。

 

《提 案》    

1.「児童詩の指導」実践試案 教科書教材を生かした4年生の児童詩の指導

                (鈴木 由紀さん、東京・豊島作文の会)

 

2.2年生の作文指導 生活の中から題材をえらんで、したことのじゅんに思い出して書こう

                (梶谷 陽子さん、横須賀・逗子作文の会)

 

3.6年生の作文指導 随筆を書こう~くらしの感想文~

                    (下山 智之さん、岡山作文の会)

 講演「子どもと親に届け続けてきた学級通信・一まい文集

           (木俣 敏さん、画家・日本作文の会元常任委員)

 ◆当日の参加人数、34人。

 ◆山形から、山形放送の取材陣2名が来訪。1日ずっとVTR撮り、録音が行われた。

◆鈴木由紀さんの詩の指導の報告。非常勤教員という立場で、週1回、3週をかけて行った  実践の紹介。「詩は、ずばりと書く。説明はいらない。」というのが4年生の子どもたちには、スッと入ったようである。子どもたちが書いた作品に、何よりもはっきりとした手ごたえあり!誰もが実践可能な方法として提示されているので、活用を広めていきたい。ないものねだりになるが、特に、第2時の授業(「題と書き出しをどうするか考えさせる指導」、「無駄な言葉を省く推敲の仕方の指導」などがどのように進められていったのか)がVTRで見ることができたらすごくいいなあと感じた(音声だけでもいい)。

鈴木実践はまだまだ続くので、VTR撮影は、今後の課題としたい。

 

◆梶谷さん、大変ていねいな指導。共通体験したものを書く指導から、続けて個別体験を書くことに挑戦させていく。子どもたちが、梶谷さんの指導に従って一生けんめいに書き綴っているのがよく分かった。書かれた作品を読みながら、子どもってこんなにも教えられたことをしっかりと吸収していくものなのだなあと感心する。

 今回の実践報告、学級担任である強みがしっかり発揮されたものということも確かだが、このようなきちんとした取り組みを支えている梶谷さんの職場(学校)もすばらしいし、うらやましいと思う。東京では、今こういう実践ができなくなってきているのではないだろうか。

 「前がみをきったこと」を書いた児童の気持ちがいくつもの箇所から切々と伝わってくるのだが、「じゅんじょよく 書こう」では、書ききれなかったのはなぜなのか。典子さんが次のような意見を出していた。〈 「初めに」「次に」「それから」「さいごに」などの順序を表す言葉は、ジャム作りとかジュース作りなどの題材などでは有効だが、「生活の中から題材を選んで」子どもが書いていく場合には、かえって思い出す作業のじゃまになる。一番書きたかったことは何かはっきりさせ、そのことの始まり(きっかけ)から書かせていくなどするといいと思う。〉 

 職場と、横須賀・逗子作文の会で、さらなる活躍を期待!

◆下山さんの報告。これまでやってきた生活綴方の実践を活用できるいいチャンスになるのかもしれない。ということで、「随筆」=「くらしの感想文」という位置づけで、身近な暮らしの中の出来事の中から題材を見つけさせ、日ごろから思っていたこと、感じていたことを綴らせていくという実践の報告。テーマに関係するエピソード(出来事、場面)を2~3場面取り上げさせるようにしたとのこと。その効果か、子どもたちの作品によどみがない印象を受けた。子どもたちにとって、書きやすさがあったように思う。半面、一番書きたかったことは何だったのか(テーマ)が、ややあいまい(つっこみが足りない)になっている印象を受けた。さらなる追究を期待!

 下山さんの今回の指導の仕方は、田中さんの提唱する「いつも型・Ⅱ」の指導に似ているようで、どこか違うようにも思えるのだが。

 

◆木俣さんの講演。これまで発行してきた学級通信をもとに、どのようなところに心を遣いながら文集を発行してきたのか、どんなところに気をつけて文集を発行していったらいいのかを詳しく話していただいた。

 一枚文集の題字が子どもの書いたものであったり、子どもの絵や文字がそのまま載っていたりなど、「/木俣」とあるのは、そういうことなんだなあとまず納得。

「チューリップ勉強」、「すてきな れんらくちょう」、いちばん心にのこっていたのは「絵表現」。「読む」(音読する)とはどういうことかの話、教育の演出、「大きな数」の学習の話など、一枚一枚の文集のどれにも、子どもたちの持つすばらしさが紹介されている。子どものつぶやき、ちょっとした所作など、しっかりと子どもに目を向けている。「よき観察者」「魂の技師」の言葉が浮かんでくる。

 文集の中にいくつも授業風景が出てくるが、子どもたちをしっかりと引きつけ、活動させていくのがすごい。私がいちばん気に入ったのは、一年生の「こくごの時間の約束」(P7)。〈 「よみたいひと」と言われたら、読んでみたいと思った人は、みんな立つ。そして、順番に読んでいく 〉のだという。普通なら、「よみたいひと」と言ったら「はい」「はい」「はい」「はい」になってしまうが、このやり方だと、同じ個所を何人もの子が読んでいくことになる。その人数分の読み(音声)を他の子どもたちは聞くことになる。その効果は、……∞。どの学年でもとはいかないかもしれないが、この方法、すばらしい。

 このような楽しい授業風景がいくつも紹介されてくるのだから、読者である子ども・保護者たちも、文集の発行をどんなにか楽しみにしていたことだろうと思う。私たちも楽しく、話を聞かせていただいた。

 

◆「来年2019年夏、全国大会が東京で!」ということで、東京大会実行委員会・事務局長の五十嵐 愛さんから、挨拶と現在までの取り組み状況の紹介があった。第一日目の全体会の講演者は、作家の浅田次郎さんに決まったとのこと。二日目、三日目についても、現在、実行委員会の中で準備が少しずつ進行中とのこと。

「大会スタッフ」「実行委員」「パンフレット・チラシを飾るイラスト」募集中のアピールがありました。

申し込み・問い合わせ先

 五十嵐 愛(めぐみ)(東京大会実行委員会 事務局長:新渡戸文化小学校

:電話03-3381-0124)

◆取材に来ていたTV局の山形放送のスタッフからも挨拶をいただいた。

〈 昭和初期、山形県の長瀞小学校で「想画」と「生活綴方」という、二つの優れた教育実践が行われていたこと、そしてその当時の貴重な「想画」、「文集」が多数保管されていることが分かり、1年ほど前から取材に取り組み始め、現在も、取材と編集が続けられている。

 長瀞の「想画」と「生活綴方」の教育実践と残された遺産(想画・文集)のことを全国の人たちにもぜひ知ってもらいたいということで、準備が進んでいる。 〉

 予定では、来年2019年2月9日(土)の午前10時30分からTV朝日で1時間の番組として放送されるとのこと。楽しみ。乞う、ご期待!

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

                                 (文責:工藤)

地図はP4に!(略)

「豊島区立駒込地域文化創造館」への行き方

*山手線「駒込駅」北口 下車 徒歩3分

 


「横須賀・逗子」作文の会 11月例会のご案内

2018-11-08 10:39:06 | Weblog

□「横須賀・逗子」作文の会

11月例会のお知らせ

 桜やぼけの花がちらほら咲いたり、潮風ですっかりやられてしまった百日紅も、新芽を出したりと、秋にしてはかわった光景が見られますね。でも、11月になって、朝晩は、気温が低くなって秋の深まりを感じます。いかがお過ごしですか。

 11月の例会の案内と、第12回国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会のご案内をさせていただきます。すでにお知らせしましたように、11月18日(日)に、「とげぬき地蔵」で有名な巣鴨の「地域創造館」で開きます。たまには、三浦半島から飛び出して、研究会に参加するのもいいものですよ。

「横須賀・逗子」作文の会からは、梶谷陽子さんに、「じゅんじょよく書く」ためには、どのような文章観と手だてが必要なのか、提案をお願いしました。そのほかの2本の提案も、教科書の作文単元のねらいをふまえつつ、どの子にもたしかで豊かな表現力をみにつけさせるための、試案と実践を報告してもらいます。

 講演は、夏の学習会でも好評だった、木俣敏さんに再度、お願いしています。また、そのあと懇親会も企画しています。(懇親会に参加される方は、ご連絡下さい。詳しくは、ブログ「ツルピカ田中定幸先生」を御覧ください。)どうぞ、友達をさそってお出かけください。

 

 さて、9 月号の案内から、経費節約、迅速な連絡ということで、例会案内をEメールあるいは封書でお送りしています。お手数ですが、しばらくは、この案内が届いたら「届きました」と、まだメールを登録していないかたは、下記へ、Eメールで連絡下さい。sadayuki@mrh.biglobe.ne.jp 。また、案内の発送の仕方等についてのご意見もおよせください。

〈提案〉「運動会の作文を書こう」4年     佐藤 美沙樹さん

10月下旬の運動会では、4年生として意欲的に参加する姿をたくさん見ることができました。子ども自身は自分の成長をどう感じているのか?

作文集などのすぐれた作品をみんなで読み、作文の書き方を学ぶとともに、自分も書きたいという意欲喚起を行い書きました。ご指導お願いします。

 

 □ 2018年11月14日(水)18:30~20:50

 □司会者   山本 直子さん(次回提案予定)

 □場 所   横須賀市総合福祉会館 5階 第3会議室

 □会 費   1回300円(年会費 3,000円) 

 □連絡先   田中 定幸  自宅 逗子市新宿3―2―45 

               ℡・FAX 046-873-4339   

□次回例会  12月5日(水) 18:30~20:50 総合福祉会館 5階第3会議室

「こどもの詩」を送ってください!

「作文の会で、子どもたちの詩集を作ろう」という話が出ています。今年度、横須賀では「学校文集」が、「こどもの詩」であったので、詩の指導にとりくまれたのではないかと思います。是非、5点でも10点でも選んで、事務局へお送りください。また、この詩は、子どもたちにぜひ読ませたいという作品も、作品が書かれた時、指導者名をそえてお送りください。(用紙はA4版 縦書きで)


第530回 豊島作文の会11月例会のご案内

2018-11-07 19:13:01 | Weblog

 豊島作文の会から例会の案内が届きました。ご覧ください。


 第12回 国分一太郎「教育」と「文学」研究会・学習会のご案内

 ◆日 時 2018年11月18日(日) 午前9時~4時20分

   場 所 豊島区立 巣鴨地域文化創造館 (第一会議室)

  (東京都豊島区巣鴨4-15-11 TEL03-3576-2637 *地図参照 )

 *第530回 豊島作文の会 は、上記研究会に合流します。8時50分から、会場を押さえてあります。準備等ありますので、可能な方は、8時45分くらいにお集まりください。

《当日の流れ》

 ❏ 9:00~ 9:15  開会行事    

 ❏ 9:15~10:35  「児童詩の指導」実践試案 教科書教材を生かした4年生の児童詩の指導                  鈴木 由紀さん(東京・豊島作文の会)

 

 ❏10:45~12:05    2年生の作文指導 生活の中から題材をえらんで、したことのじゅんに思い出して書こう            梶谷 陽子さん(横須賀・逗子作文の会)

    昼食 

 

 ❏13:00~14:20    6年生の作文指導  随筆を書こう ~くらしの感想文~

               下山 智之さん(岡山作文の会)  

 

 ❏14:30~16:00    〈講演〉子どもと親に届け続けてきた学級通信・一まい文集

                          木俣 敏さん(画家・日本作文の会元常任委員)

 ❏16:00~16:20 閉会行事

 

 ◎10月例会報告:『‘18年版児童文詩集「東京の子」(第44集)の散文を読み合う』

参加》工藤(記録)、日色、榎本典子、榎本 豊、田中、桐山、片桐(司会)、鈴木(敬称略)

  ◇1年担当 榎本典子さん、3.4年担当 工藤、5年担当 榎本 豊さん、6年担当 桐山さで、報告があった。

話し合われたこと

★「選評」はどうあるべきかが問題となった。〈 「選評」の内容、表現が気になる。子どもに語りかけることを意識するからか、表現が回りくどくなっていないか。直すべきところは直すべきところとして、きちんと指摘していくべきではないのか。 〉ということである。

 昨年もこれは問題になった。「事実」(書かれている中身)に基づかないで褒めているなどが問題になっていた。選評者自身も、選評をどう書いたらいいのか悩んでいることだろうとは思うのだが。

 ちなみに、今年度の選評全部を調べていくと、 

まず、「共同研究」の選評者、小柳光雄さんと古川翼さんは「常体」で選評を書いている。

ところが、以下の〈作文の部〉を見ていくと、次のことに気づく。

◎人間のくらしや事実を深くみつめて(1)家族とのかかわりのなかで (2)友達とのかかわりのなかで

◎子どもの意欲的な生活をひきだして(3)思い切り学んだなかで (4)自然や社会に目を向けて

 上の(1)~(4)のうち、(2)の選評のみ「常体」(榎本 豊さんが書いたもの)。あとはすべて「敬体」で書かれているのだ。

〈詩の部〉の1・2年生、3・4年生、5・6年生の選評もすべて「敬体」である。

「敬体」が悪いというのではない。ただ言うべき中身を簡潔に言い表していく時には、「常体」は効果を発揮する。「敬体」は冗長になりやすい。これだけ、「敬体」での選評が多いのはなぜなのか。「子どもに語りかける」ため、だけだはないような気がする。

★「教科書」と「授業」に関係した問題。◇「生活の中で、感じたり、考えたりしたことを書く」(したこと、見たことをていねいに思い出して書いていく)といった書き方の指導、記述の仕方の指導が、今の教科書には入っていない。観察記録文、報告文、紹介文、手紙文、意見文など、さまざまな「書く」学習が取り上げられているが、それぞれの形式に沿って書く書き方を教えるもので、他の人に上手に伝える、順序よく説明することが重視されている。パターン化された書き方は身につくが、これだけでは、自ら題材を見つけて、出来事をひとまとまりの文章として記述していく能力は身についていかない。◇散文だけではない。9月例会の鈴木さんの提案の中で紹介された「詩」を扱った箇所の教科書のコピー。あの教科書の中身は全く使えるものではなかった。教科書がこういった状況の中で、先生たちはどのように指導を続けていけるだろうか。

★子どもたちの作品を読んでの感想、意見等。◇忙しいその他、学校の中で様々な困難を抱えて先生たちが仕事をしている状況があることは分かるが、書いた作品に推考の跡がないものが多すぎる。「推考」させることをもっと大事にするべきだ。◇「推考指導」以前に、書く指導、記述指導がこれまで以上になくなってきているのではないかと感じている。

◇こんな目当てで作文を書いてみようといった導入の授業は行われているのだろうか。作品を読んでいて、なぜ書かせるのかという視点が抜けているように感じる。◇「書き出し」の書き方の学習、「ていねいに思い出して書く」とはどういうことかを理解させる学習、この二つは、何時間か時間を取って、子どもたちにやってあげるといいと思う。

★高学年の作品について特に話題となったこと。◇高学年の作品の中で、ていねいに書いてはいるのだが、何を書きたいのかはっきりしないまま長く書いている、そんな作品がいくつもあることが話題になった。5・6年生あたりは、主題(テーマ)意識を持たせる指導が大切になってくる。無駄なことは省けるようにならなければならない。そういう授業をやってあげるべきだろうという意見が出された。

◇今回の桐山さんのレポートは、題(副題)が、“『東京の子』45集 6年生の散文を読む―作品を読む教師の視点―”となっており、桐山さんからは、今回、6年生の作文に関して〈 子どもに注文をするのではなくて、教師はどう見ていったらいいかという観点でまとめてみました 〉という説明があった。子どもの文章の中身に対する明快で、簡潔な分析(説明)と辛口の評。教師に求められているものは何かなどの指摘等、とても参考になる書き方なので、桐山さんの書きぶりを以下に紹介しておく。◇桐山さんの〈 教師の視点で作品を読む 〉ということに関する話し合いは、時間の関係で十分に論議できないまま終了。12月2日(日)の例会(会場:駒込)で《詩》の検討があるので、継続して考察を深めていきたいと思う。

                                 (文責:工藤)

『東京の子』 45集・6年生の散文を読む一作品を読む教師の視点―(いくつか抜粋)

『お父さんとの会話』 P28

「ぼくは最近、気になっている事をお父さんに聞いてみました。」というさりげない書き出しで、将来なにになろうかという漠然とした思いを医師である父親に語りかけています。そして、父親と真面目な話ができたことを「お父さんと、また、将来について話したいと思います。」と結んでいます。

 ここにこそ焦点を当てて、教師はこの作品を読むべきではないでしょうか。

 そして、学校でも、家庭でも、6年生の子どもたちと将来について話し合う世界が広がるといいなあと思いました。

 

『初めてねぶたを見たこと』 P29

「夏休み中に、母の実家に行った時、地区の夏祭りに行きました。」という書き出しに続いて、「母の実家は、宮城県の災害公営住宅地区にあり、復興支援のために青森からねぶたが来ていたので」と説明をしています。このことは「いつ」「どこで」知ったのかわかりませんが、作者は知っていたのです。そうした目で祭りを見たら、地元の人と避難してきた人の交流がどう行われていたのか (行われていなかったのか)を書くことが出来たかもしれません。社会に目を向けるきっかけでもあったのに残念です。それをぬきにして、「ねぶたの人たちのおかげで、みんな笑顔になって、みんな元気をもらっていた」という結びは空疎に響きます。

 

『人のことを助けたい』 P30

「私の夢は医者になることです。」とはじめに言いきっています。そして認知症になった祖母の様子(私が3年生位の時、異変一物忘れ。私が4. 5年生の時、相手が誰であるか分らない。私が6年生になってから、家でぼんやり過ごすことが増える)を観察し、テレビ番組で脳に刺激を与えると進行が遅くなると聞いて、「病気について知り、病気にかかった祖母やその他の人、けがをして苦しんでいる人を助けることができる医者になりたいです。」と結んでいますが、 観念的です。作者は祖母の介護にどうかかわっているのでしょうか。聞きたいところです。

 

『がんばった学芸会』 P58

「私は、いつも声が小さいです。」という書き出しは、気の弱そうな作者の切実な思いでしよう。そこから話を展開して、学芸会で劇をするといわれた。「どうしようかな」と続きますが、これは、配役はなにを希望しようかということでしょう。錠前屋の役になって、家でも学校でも大きな声を出すために練習をする。そして本番、父母から「声が聞こえたよ」といわれて安心をした。「これからも、発表や授業中の音読などをがんばりたいです。」という作者の決意表明で終わります。学級で読み合って作者の成長を励ますといいと思います。またそれぞれにとって学芸会はなんだったのかを話し合うきっかけになる作文です。

 

『練習は裏切らない』 P59

 これは「もう嫌だ!」から始まります。自分の望みではないピアノの練習。「仕方なく練習している。」「上達させる気がない訳ではない。」「練習しておけばよかった」「数少ない特技の中でピアノを弾けることは一番の特技だ。」卒業式にピアノの伴奏をしたい。応募したが落ちる。先生の「練習は裏切らない」という言葉に感じて、中学での合唱コンクールに、伴奏者を目指して「オーディションに備えたい。」と決意していますが、どうなるでしょう。ピアノを弾くこと (音楽そのもの)が好きでなければだめです。それに適性もあります。

 

『努力の結果』 P62

 漢字が苦手な子の作文です。しかし、この作文を見る限り、漢字が十分書けています。「ぼくは勉強が苦手だ」「どうせできない。やってもむだだ。」という考えに追い込んだのはなんでしょう。点数を競うからではないでしょうか。「テストが始まった。漢字のテストだった」という毎日ではないでしようか。「みんなをこれからも追いかけて、いつかは追いつきたいと思っている」という覚悟を読むと悲しくなります。教師は漢字が好きになる授業をすべきではないでしょうか。

 

 今回は、「はじめ」と「おわり」に注目して読みましたが、どの作品も、題名や書き出しに対応してまとめが書かれています。そのまとめは、

  決意でおわるもの 4作品

  願望でおわるもの 2作品

  感想でおわるもの 3作品 です。

 特に、決意でおわるまとめは「子どもの意欲的な生活をひきだして」に分類された作品に多いです。「思いっきり学んだ」のなら満足感につながるのではないでしょうか。やたら「がんばるぞ」とまとめさせるのはいかがなものでしょう。 「がんばる」とまとめている作品が、そろって短文なのも気になります。                (桐山)