心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

ひたすら歩く~西国三十三カ所巡礼

2017-09-08 20:12:05 | 西国巡礼

  今週のカレッジのテーマは「おとぎ話の音楽~ラヴェルのピアノ連弾のための『マ・メール・ロワ』」でした。がちょうおばさんのお話、といったところでしょうか。お二人のピアニストの連弾やギュスターヴ・ドレの挿絵を交えて、4時間にわたって先生の講義をお聴きしました。
  楽しかったカレッジも、今月で1学年が終わり、10月から始まる新学期には班編成もがらりと変わります。授業のあと、同じ班の仲間たちと呑み会をしました。お別れ会?それとも慰労会?。名目はともあれ、お酒も進み、楽しいひとときを過ごしました。様々な仕事人生、家庭人生を終えた大阪のおばちゃん、おじちゃんたちと学んだこの1年。たくさんの出会いと気づきをいただきました。

 ところで、話は変わりますが、四国八十八カ所「歩き遍路」の出発が1週間後に迫ってきました。何かを思い詰めてのことではありません。ただただ、四国の畦道、原風景を歩きたくて.....。今回は、第一番札所の霊山寺から第十一番札所の藤井寺までの約38キロを、2泊3日の日程で歩いてきます。
 「歩き遍路」ということで、二巡目の今回から菅笠、金剛杖も事前に注文してホテルで受け取ることにしました。30Lのリュックも新調しました。テーピングや外傷治療セットも用意しました。きょうネットでJR高速バス(大阪駅⇔徳島駅)の切符の手配も終わり、いよいよ出発の日を待つばかりです。
 とは言え、夏の間はウォーキングへの参加を控えていましたので、2日間で38キロという距離は少し心配です。そんな折、古本フェアで手にした白洲正子著「西国巡礼」を眺めていて、急きょ、予行演習のために西国三十三カ所を巡ってみることにしました。行き先は、京都市内の第十五番札所の観音寺(今熊野観音寺)から第十九番札所の行願寺(革堂)までの5カ寺。およそ12キロの道のりを4時間かけて歩きました。
 まずは、京都駅からひと駅目の東福寺駅を出発して、第十五番札所・観音寺(今熊野観音寺)に向かいました。8月初旬に座禅と写経を体験した勝林寺、東福寺の横を通って、月輪山の麓に佇む泉涌寺をめざします。せっかくだからと泉涌寺を拝観しました。天長年間に弘法大師がこの地に庵を結んだことに由来するお寺のようですが、大門をくぐると、その先に大きな仏殿と舎利殿がみえます。仏殿に安置される三世仏にご対面したあと、境内を散策しました。
 第十五番札所・新那智山 観音寺はそのお隣にあります。鳥居橋を渡って境内に入ると大きな本堂が見えてきます。略縁起によれば、平安時代の825年頃、嵯峨天皇の勅願により弘法大師が開創したお寺で、ご本尊は「大師が熊野権現から授かった一寸八分の観音像を胎内仏として自ら彫刻した十二面観世音菩薩」だそうです。
 西国三十三カ所巡礼用の「納札」を求め、持参した線香と蝋燭を供えて本堂をお参りしました。納経所で御朱印をいただいたあと、大師堂をお参りして失礼をしました。
 京都一周トレイルコース標識に沿って次に向かったのは、第十六番札所・音羽山 清水寺です。ご本尊は十一面千手千眼観世音菩薩で、延鎮上人が778年に創建したお寺です。観音寺からはおよそ3.5キロほどの距離ですが、どうやら道を間違ったようで、40分もかかってしまいました(笑)。
 こちらはさすがに京都を代表する観光地です。仁王門前には午前中から多くの外国人観光客で溢れ、有名な「音羽の滝」には長い長い行列ができていました。あいにく「舞台」が工事中だったので、本堂でお参りし御朱印をいただいて失礼をしました。
 観光客を避けながら清水坂を下って東大路通りに出ると、今度は第十七番札所・補陀洛山 六波羅蜜寺に向かいます。ご本尊は十一面観世音菩薩、空也上人が951年に創建したお寺です。京の街中にあって、念仏をすすめ、病人や貧者を助け、橋を架けたり井戸を掘ったりしたことから「市の聖」と呼ばれているのだそうです。念仏を唱える口から六体の阿弥陀が現れる伝承を表した「空也上人立像」が安置されていることで有名なお寺です。
 松原橋を歩いて鴨川を渡ったところで、いったん昼休憩です。
 そのあと新京極通りを北上し、途中で六角通りを西に歩いていくと、ビルに囲まれるように佇む第十八番札所・紫雲山 頂法寺(六角堂)が現れます。こちらのご本尊は如意輪観世音菩薩。聖徳太子が587年に創建したという古いお寺です。太子が沐浴をされた池のほとりに小野妹子が始祖の池坊とよばれる住坊があって、そこの僧侶が御宝前に供えた花が、生け花の始まりなのだそうです。境内の隣には池坊会館が建っていました。
 この日最後のお寺は、第十九番札所・霊鹿山 行願寺(革願)です。御所に向かって北上し、裁判所のところで東に入ると、細い道の先の寺町通りと交差するところに行願寺が見えてきます。六角堂からは約1.5キロの道のりでした。ご本尊は千手観世音菩薩、行円上人が1004年に創建したお寺です。古めかしい立派な本堂が印象的でした。
 西国三十三カ所巡礼は、近畿2府4県と岐阜県にまたがる三十三の観音霊場を巡るものです。その始祖は大和国長谷寺を開いた徳道上人、再興の祖が花山法皇と言われています。この6月に第十番札所・明星山 三室戸寺に参拝したときに御朱印帳を戴いていましたので、今回の5カ寺を含めると6カ寺を巡ったことになります。ただ、京都を除いてお寺が広域に点在していますので、年限は設けず、気の向くままに1カ寺ないし数カ寺単位で根気よく歩いてみようと思っています。

 時々、家内から「うちは浄土宗なのに、なんで身体を酷使してまで真言宗のお寺巡りをするの?」という素朴な質問を受けます。私にも分かりません。ただ、千数百年にわたって庶民の信仰の対象であり続けた古めかしいお寺の、本堂や大師堂の薄暗い奥に安置されている仏像に対面したときの不思議な感覚。その一瞬であっても、長い仕事人生の過程で纏った鎧を、一枚また一枚と脱ぎ捨てていく清々しさ。最後に残るものが「私」なんでしょうか.......。答えはいずれ、歩いているうちにぼんやりと見えてくるんだろうなと思っています。 

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