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クレイジー・リッチ! 【感想】

2018-10-06 08:00:00 | 映画


眼福と心福の映画。「オールキャスト、アジア人」というラベルをとっぱらっても傑作。
笑いながら泣かせる、ハリウッドの王道ラブコメ映画だが、知られざるアジア人事情に着目したストーリーが新鮮。「バナナ」である中国系アメリカ人と、中国系アジア人の壁、そして、名門と一般人の壁に立ち向かう1組のカップルの奮闘劇は、純度の高いラブロマンスでもあった。浮かれ騒ぐシンデレラ・ストーリーとは違う。主人公は自立した人であり、目の前にある富には目もくれず、まっすぐに突き進む。最初から最後まで互いを想い合う恋愛感情がブレないのがいい。主人公の2人だけでなく、それぞれの役割に徹する個性豊かなキャラクターたちも秀逸。ラストシーンの伏線回収がニクくて思わず涙した。大アタリな映画。

「スーパーリッチ」を越えた「クレイジーリッチ」。その資産規模は王族並みという規格外の大金持ちがいる。彼氏の実家が「クレイジーリッチ」と知らずして付き合っていた女子が、その実家のシンガポールに赴き、様々な騒動にもまれるという話。

アメリカでのヒットが話題になっていた本作。客層の4割がアジア人という情報を聞いて「どうせ、滅多に劇場に足を運ばないアジア系の人たちが、こぞって観にいっただけだろう」と完全にナメていた。深く反省。久々に素晴らしい出来栄えのラブコメ映画。この映画、アジア人じゃないと成立しないだけで、おそらく人種に関係なく誰が見ても面白いと思う。

ニューヨークに住む中国からの移民2世の女子と、故郷のシンガポールから離れニューヨークで仕事をしている男子のカップル。女子は若くして大学で教べんをとっている。自らの努力と情熱で勝ち取った大学教授という輝かしいステータスだ。外見はまあまあ、小柄でスタイルも良いとはいえない。モデルのような長身ハンサムガイの彼氏は、彼女の内面にも惚れ込んでいるのがわかる。そんな彼氏が親友の結婚式のため、故郷のシンガポールに帰る折、彼女を一緒に連れて行く。目的はもう1つ、彼女を家族に紹介するためだ。

彼氏も1人で自活している身であり、お金には無頓着。行きの飛行機がファーストクラスだったことで、実家が金持ちであることが彼女にバレる。身分を隠していたというより、明かす必要が今までなかったのだろう。「実家が金持ちというだけ、資産は僕のものじゃない」とあっさり。2人にとって「クレイジーリッチ」であることは重要じゃない。

ところが、彼らの周りがそうはさせない。彼氏は富豪一家のド真ん中の御曹司。彼氏を狙う女子たちがわんさかいて、2人を待ち構える。「バーチェラー」な争奪戦を予想するが、2人は幸せになりたいだけで、愛の力でどうにでもなる障害。最大の関門は、彼氏の実家。大陸から移り住み、シンガポールのジャングルを開拓し、財を成した華僑の一族だ。自らの力で夢を掴むことを美学とするアメリカ人に対して、自ら築いた財産を一族に残すことを美学とする華僑。同じ肌の色のアジア人だが、生まれ育った環境によって価値観がまるで違う。

立ちはだかるのは彼氏の母親であり、一族の実質的なトップ。一般人&アメリカ人である彼女を受け入れようとしない。注視するのは、その母親の存在が本作における悪者ではないということ。一族に嫁いだ経験から、多くのしがらみを背負い、彼女自身も多くの辛酸をなめてきた。一族の血脈を守ることの重大さを知っていて、息子の将来の幸せを思えば、彼女との関係を絶つことが最良の選択と信じている。母親演じるミシェル・ヨーのエレガントな凄みと説得力。「自由」と「家柄」、肯定すべき2つの価値観が共存する。主人公の女子はそれでも彼氏との将来のために戦う。

一族の多くが、その資産で人生を満喫する一方、主人公の彼氏と同様、地に足をつけて生活する従兄弟の女子が登場する。主人公らと平行して描かれる、その彼女のドラマがとても興味深い。セレブ女子として自身の役割を演じながら、家ではその気配をできるだけ消し去り、一般人である夫に尽くす。夫に余計な気を遣わせない思いやりからだ。この彼女と夫の夫婦関係が、主人公らと対照的に位置づけられる。「持てる」者の不幸があまりにも切ない。

シンガポールの活況(屋台メシ!)、東洋の伝統と近代性が融合する文化、ゴージャスでまばゆい衣装と美術の数々と、目に飛び込むものすべてが楽しい。世界のどこかに確かに存在するであろう、非日常的な世界に酔いしれながら、2人のラブロマンスに魅せられる。主役の2人があまりにも素敵でずっと見とれてしまった。恋愛映画のアジア人俳優にこれほど魅了されたのは初めてかもしれない。ほか、主人公2人の良き理解者である親友など、脇役の存在も効いている。

相容れない価値観の壁を突破する、主人公女子の捨て身の決断。すべては愛のためだ。結末は、わかっていても感動させられる。ハッピーエンド以外、考えられないジャンルの難題を軽々とクリア。お見事です。

【80点】

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